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27通目 シーバスレリアからエコールへ

頼もしき友エコールへ


 前略 友へ。ドワーフ族の織機についての本のついでに、人間族の手紙の書き方の本を図書館で探していたら、決定的瞬間をほんの少し逃しました。


 我が義姉上ベラ姫、つまり君でいうところのリネッテ姫の姉上がご懐妊とのこと。僕はどうやら『次期王位継承者の叔父』になるようです。


 このやんごとなき微妙な地位よ! 放浪生活がますますはかどるに違いない、と今から確信しているところです。


 昔のように、君の背中に乗って適当に旅をするのもいいな、などと考えたけれど、冷静に考えると今こそ『ドラゴン便』の機が熟しているというもの。


 何せ三姉妹の間で贈りあうものが、これからどんどん増えるだろうからね!


 種族問わず女性という者は、健やかなる母体のために、そして、こういった時に生まれてくる子どものために、あれやこれやを贈りあう習わしになっているのが常なのだとか。


 あのボトム王とリネッテ姫が早々に、寝室の布団の上で膝を付き合わして、今後入り用なものを仲良く洗い出しては紙に認めている姿にはなんともいえないおかしみがあったけれど、ボトム王は相変わらずリネッテ姫に『指一本触れてはいない』ご様子。


 同じ寝室で眠っているというのに、何という強靱な精神の持ち主なんだろうね。


 僕に彼への尊敬の念がなかったら、まったく、どうなっていたことやら。


 そう、エコール、僕はもしかすると、僕自身が思っている以上に、あの愛らしく闊達な末姫のことが好きなのかも知れない。


 でも、困ったことに、僕はきっと同じくらい、ボトム王のことも尊敬しているというわけさ。二人には幸せになってもらいたい。けれど僕はリネッテ姫を愛していて、ボトム王を尊敬している。


 きっと君は大笑いするだろう。僕だってそうさ。おかしいってわかっているんだよ。でも、どんなに世界中を放浪したって、この胸に少し詰まっている硬い木の実のような何かは消えないし、『消えて欲しくもない』。


 君はこんな僕を、情けない男だねえ、と笑うかい?


 それにしても本当に、手紙というのは不思議なものだね。胸に秘めておこうと思ったことまで、こうして、思わず書き綴ってしまう。


 そしてこの『木叢の館』に帰ってくると、どうしようもない、どこにも行き場がない気持ちを長年の友に思わず書き綴ってしまう。


 そして書きながら『手紙を書くより旅に出て本人に会った方が早いんじゃないか』なんて考えるわけさ。


 無性に君の豪快な笑い声が恋しくなってきたので、『鷲の大崖』に二人を送り届けたら、『常冬の宮殿』まで行ってみようと思う。


 アンフィーサ義姉上の御用聞きも兼ねてね。


 妹の方が早くご懐妊、というのは人間の姉妹ではまあまあよくあることらしいけど、あのアルベリッヒ王を心から愛してやまない義姉上はどう思っているのだろうね。


 ドラゴンと人間の間に御子が生まれる奇蹟的な日も、あの二人ならいつかはくると思うけれども。


 それでは、近いうちに。 草々。


月夜で独り寝、というのが寂しいものだとはじめて知ったばかりの

シーバスレリア

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