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24通目 リネッテからアンフィーサへ

中央平原のロバの馬車より

アンフィーサお姉さまへ


 拝啓 いかがお過ごしですかって聞くのもきっと野暮なことね。アルベリッヒお義兄さまに毎日めいっぱい愛されて、とっても幸せなお姉さまの顔しか浮かんできません。


 あたしたちは冒険者組合の証の入った焼き板に、『この村荒らすべからず』って彫った看板をロバの馬車に詰めて、中央平原のゴブリン族の村々を回っています。


 看板にはイラクサで出来たロープが巻き付けてあって、みだりに看板を引き抜こうとすると手に小さな棘がいくつも刺さる仕組みです。


 陛下とあたしが村を訪れる度に大騒ぎになります。腕を組んで村に入るのと、『でっかい姫さま』と呼ばれるのと、看板をゴブリン族の大きな槌(あたしにとってはとても使いやすい大きさなのだけど)地面に打ちつけて村の入口に立てるだけで、とても喜ばれるのです。


 そして夜はいつも宴会になるの。陛下の元に『でっかい姫様』が嫁いできた話、あっという間に平原中に広がっていたみたいで、皆、色々と心配していたみたい。


「とんでもない乱暴な姫さんだったらどうするべかってなあ」


「でも、『崖』に住む親戚から『姫様はとってもいいヒトだ』って手紙が届いたでよぉ」


「ささ、姫さんに王様、こっちが取れたての果実でございますよ。たっぷりお召し上がりくださいましね」


「ゴブリン族はもう誰からもいじめられねえ! 姫さんのおかげだでなあ!」


 誰かに喜ばれることってこんなにも嬉しいのね。シュトラスレートル城にいたらわからなかったことかも知れないわ。


 イラクサの扱いには気をつけないといけないのだけれど。


 『木叢の館』からシーバスレリアがやってきて(様、を付けたら「僕は君の旦那様の弟みたいなものなんだし、気にせず呼び捨ててくれたまえよ。僕ら「外エルフ」は敬語で呼ばれるのが苦手でね」と言われてしまいました)、ベラ姉さまとフィロストレリアお義兄さまの元に「遊びに来ないか」とのお誘いがありました。


 あの山での冒険話を強くご所望とのこと。


 手土産に、平原でしか採れない甘い果実『エルシノアの実』をたっぷりと籠に詰め込みました。彼もあたし達と一緒に村を回っています。


 川沿いの村では三人で釣りをしたり、花冠を編んだり(これは陛下と雪山で約束したものです)村の皆と石を拾って水切り(川面に向かって平らな石を滑らせるように投げて、何回水面を跳ねるか競うものです)をしたり。


 投石にかけてはゴブリン族の皆に、人間のあたしもエルフ族のシーバスレリアもちっとも敵いませんでした。


 陛下なんて、石を十フィーバス以上もある向こう岸まで難なく飛ばしてしまい、全員で大喝采。


 旅ってこんなにも楽しいのね。


 夜はルネとマリィが待っている馬車の中に藁と寝袋を敷いて寝ています。ルネもすっかり旅慣れてしまって。


 少し文字が傾いているのを許してください。野外でも文字を書くための『矢立』を陛下から借りて、今こうして膝の上で書いています。


 ゴブリン族の筆記具は少し短めで、書くのに工夫がいるのです。


 また館についたらお手紙を出します。アルベリッヒお義兄さまにも、何卒よろしくお伝えください。 敬具


あなたの忠実な(けれど水切りはちっともできなかった不器用な)妹

リネッテ・ブリンク

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