20通目 エコールからシーバスレリアへ
『常冬の宮殿』より
シーバスレリアへ
拝啓(この言葉を初めて使ったよ。手紙ってのは小難しいもんだね)あんたが今どこにいるのかは知らないけれど、こないだ馴染みになった妖精便の子にまた代筆を頼んで、こうして手紙を書いてるってわけ。
今は真夜中で、誰もが寝静まっている頃合。妖精便に深夜料金があったなんて、今日の今日まで知らなかったよ。
私は明日の朝一番でこのドラゴン族の宮殿の山の頂上まで、あの愉快で気前の良いゴブリン族の王様ボトムとそのお妃様のリネッテを運ぶ係を、何て言うんだっけね、そう、『仰せつかりました』。
あんたの義理の姉さんが持ってきた本に、食ったら姿を変えることが出来る『満月草』とかいうのが載ってて、それを早速取りに行こうって話になったわけ。
山の厳しさは多分この私が一番知っているから、しっかりあいつらの面倒を見てやらないとね。私は私なりに、あいつらを気に入ってるんだよ。
それと、もしも姿を変えることが出来たら、何になるかをちょっとだけ私も考えたけど、私はドラゴンのままでいいね。
でも、ちょっとだけ、こんな真夜中にあんたに手紙を書きたい気分にもなった(あんたとは付き合いも長いしね。それ以外の何でもないよ)、そんな世にも面白い出来事が、今宵の晩餐会ではいっぱい起きてね。
会って話した方が何倍も早いし、多分あんたの義理の姉さんも色々知りたがるだろうからさ、この仕事が終わったら南のエルフ族の森へ行く予定。
明日は大仕事だからもう寝るけど、なんかこう、なんだろうね、私には、愛なんてちっともわかんないんだけど、それが誰にとっても本当はとても大事なのは、ちょっとわかった気がしたよ。
仕事、頑張んなきゃね。応援してて。
応援、そう、今はそれがとても欲しい気分だったのかも知れない。じゃあ、また。 敬具(締めの言葉はこれでいいんだっけ?)
あんたの長年の友人
エコール
《代筆にて失礼しました 妖精便担当者より》




