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17通目 リネッテからアンフィーサへ

『鷲の大崖』より

親愛なるアンフィーサお姉さまへ


 前略 冒険者組合からとびっきりの防寒具が、そしてエルフ族の森から暖かな毛布などが届きました。人間の子供用の防寒具は陛下にはぴったりですが、いつもの、あの独特の威厳が半減してしまっている気がします(ゴブリン族に真っ赤な毛糸の靴下がこんなにも似合うなんて!)


 これらをまとめて持ってきてくれたドラゴンの女性、エコールが火を吐きそうな勢いで笑って言いました。


「もしかしてあんたがゴブリン族の王様かい? どっかの間の抜けた坊やかと思ったよ!」


「ふむ、我に向かってなかなかの言いようであるが、そなたが我らを山の上まで運んでくれるというエコール殿であるか。ならば『いと高貴なるドラゴン族の女性とはとても思えぬその物言い』に文句をつけるのは、どうやら賢くはない行為であるな」


「わかってるじゃん、王様!」


 可愛い真っ赤な毛糸の靴下を履いた陛下が、胸を張って仰るのがなんだかおかしくておかしくて。隣で笑いをこらえながら、マリィ達があたし達の謁見用の服を荷物に詰め込んでくれています。


「とにかくあの山は寒いからね。この樽にまずその毛布を敷き詰めておいたほうがいいよ」


 教えてくれたエコールにあたしはお礼を言って、何やら手を止めてベラお姉さまから届いていた本を熱心に読んでいたルネを呼びます。


「一緒にやりましょ、ルネ。毛布を敷き詰めても、あたし達が入れる場所は十分にあるわ」


 ルネが顔を上げて、赤い本に銀の花を挟み直して言いました。


「その前に、陛下にお話しておきたいことが」


「我にか」


「ベラ姫様からの……伝言のような何か、と申しましょうか。ちょっと、宜しいですか」


 二人が顔を寄せ合って、赤い本を片手に何か喋っている間に、あたしとマリィ、そしてエコールで、樽の中に毛布や荷物を敷き詰めました。


 ベラお姉さまったら、一体何を伝えたかったのかしら。気になるけれど、準備も大事です。


 とにかく、これからそちらへ発ちます、ということをお伝えしたくって。


 妖精便の子にはたっぷり砂金を払ったので、この手紙もあっという間に届くはず。


 ベラお姉さまからの知恵も携えて、あたしと陛下とルネとマリィで、これから出立です。


 だからお姉さま、どうか悲しまないで。誰かを好きになることで悲しい思いをするのは、幸せではないことだと思います。


 あたしには、まだ良くわかっていないことかもしれないのだけど。


 あたし達は確かに全員、まごうことなき政略結婚だけれど、それでも、幸せでないと、幸せにならないと、ダメなんじゃないかしら。


 それも、全員で、一緒にです。


 アンフィーサお姉さまが悲しい思いをしている今、あたしはすぐに飛んでいきます。文字通り、空だって飛びます。ちっとも怖くなんかありません。


 ただし、ドラゴンのエコールがどのくらい速くて、かつ安全運転なのかは未知数なのだけど! 草々


あなたの勇敢なる妹

リネッテ・ブリンク

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