14通目 ゴブリン王ボトムからドラゴン王アルベリッヒへ
『鷲の大崖』より
我が兄にして類い稀なく高貴な、アルベリッヒ王へ
前略 我が妃リネッテ姫が貴兄の秀峰なる『常冬の宮殿』へどうしても行きたい、とのこと。貴兄の妻にして妃、つまり上の姉君を心配している模様。
我がゴブリン族でも、姉妹というものは、概して『ものすごく』仲が良いか、あるいはその真逆かのどちらかであり、リネッテ姫の姉妹はどうやら前者であるらしい。後者でなかったことを我らは天に拝して感謝せねばならないわけであるが。
フィロストレリア兄上の弟、「外エルフ」のシーバスレリアに相談したところ、かつて『ドラゴン便』なるものを創設しようとし、一族郎党に大反対されて、貴兄の山を飛び出したドラゴン、エコールなる女性と知り合いであるとのこと。
その女史ならドラゴン族の山を越えることができるとのことで、助力を仰ぐ次第である。
というわけで、近いうちに貴兄の城に、妃と共に参上仕りたく候。
人間族の風習には、結婚した者達が共に旅をする『新婚旅行』なるものがあるという。良き妻に恵まれた良き夫たる者、妻の願いは叶えてやるのが道理である故、急な知らせではあるが何卒ご容赦を。
急ぎにつき用件のみで失礼をば。 草々
貴兄の従順なる弟
ボトム・ゴブリンロード
追伸 我はリネッテ姫にまだ指一本触れておらぬ、とシーバスレリアに打ち明けた時に、この我が『兄弟』はこう言ったのである。
「それは、真面目な男が恋をしたら、最初に脱ぎ去るべきものは『誇り』だからだよ」




