12通目 ベラからアンフィーサへ
『木叢の館』より
親愛なるお姉さまにして、いとも高貴なるドラゴン王の妃
アンフィーサ・ドラコスリーベ様へ
拝復 私の夫フィロストレリアの弟、シーバスレリアが『鷲の大崖』を訪問しました。リネッテはつつがなく暮らしているとのこと。
麻のエプロンを着て、彼ら一族と一緒に自分の住む部屋を造っているところだったそうです。
ゴブリン族の建築技術は、意外なことにドワーフ族の直伝だとか(それにしてもドワーフ族は本当にどこへ姿を消してしまったのでしょう。それなりに親交のあったエルフ達の間でも謎のままです)
それはともかく、おかげで思いのほか住まいは堅牢とのことで、私も安心したところです。ドラゴン族が乗っても壊れないバルコニーを造るとのこと。お姉さま達が『鷲の大崖』を訪問できる日も近そうです。
出された食事も決して粗末ではなく、ボトム王もリネッテを大事にしてくれています。この手紙もボトム王から押し戴いた砂金の粒を妖精便の子達にチップとしてはずんでいます。私達姉妹の文通などに良く使うよう、ボトム王が贈ってくださったものです。
良く扱えば幸運を、虐げれば不運をもたらすというゴブリン族ならではの贈り物。そう、まさに値千金というもの。
鉱業や製粉技術をゴブリン族に根付かせた王。もはや彼らは『蛮族』ではなく、私達のリネッテは『立派な一国の主』に嫁いだのです。
更には、シュトラスレートル城からリネッテが持ち出した人間用の『道具』の数々、そしてエルフ族の知識の詰まった『緑の本』、更にはドラゴン族が彼らに与えた『威光』は、ゴブリン族に大きな影響を与えることでしょう。
ゆえにゴブリン達は皆、彼女を尊敬し、尊重し、私たちの可愛い妹は光り輝ける、そして、歴史にも名を残す姫君になる、そう思うのです。
惜しむらくは私達が、可愛い妹の婚儀をまだ見ていないこと。あの輝けるドレスをお姉さまとリネッテの分も、夫に頼もうかしら。
夜光蝶の鱗粉を集めて染め上げるまでには、少しばかり時間がかかってしまうけれど。
いつか、お姉さまとリネッテ、そして私たちの素敵な夫達と一緒に、美しい平原でお茶などをしてみたい、というささやかな夢と共に、今日のところはペンを置こうと思います。
お義兄さまにも何卒よろしくお伝えくださいな。 かしこ
あなたの忠実なる妹
ベラ・エルフェンノルン




