悪役令嬢にならなかった理由は、次々と山のように送られて来る手紙でした
これはこの国の第1王子であるボクの日記である。今日はいつもより長く書こうと思う。2・3ページほど余裕があるから、忘れないうちに昔聞いたことがあることは要約などせずに全て書き記していこうと思う。
その前に一人だけ紹介したい人物がいるのだ。
ぼくの友人に変なやつがいるのだが、個人情報なのでここは友人Aとでもさせていただこう。友人Aはボクの側近であり、彼には将来的に宰相を任せることになるだろう。彼との関係は友人のようなものだ。僕が将来道を違えてこの国を傾ける事態になったらきっと彼はボクを止めてくれると信じられるくらいには良いヤツなんだ。
さてその友人Aなにが変かというと、1年ほど前になるだろうか。やつはこんなことをボクに言って来たんだ。
「へえ。ここがモヤシフエール公国か。なあアル。なんでこの国の王変わっていないの?」
「前々から無礼なやつだったが。よしもうそろそろお前のことを処刑しても許されるのではないか。」
ちがうって。いや違くないけど。そうおれはなこの国の一つの未来を知っていたんだと彼は急に熱っぽく語り始めた。
「王妃の名前ってワントワネットだよな?」
おれが知っていた未来だと王妃さまがこの国の国母にはなり得なかったんだ。それどころか彼女は・・・。いやどこか分岐点があってこれからしわ寄せがくるという可能性も。
「詳しく聞かせろ。冗談では済まされないからな。我が母上と父上はこれからも盤石にこの国を治めてもらわねばならない。」
ああどうだとも。おれとしてもそう願っている。ただ、国王になにがあったのかいつか話を聞いてくれないだろうかとお願いされた。
問題を先を送りにするのは性に合わないボクはさっそく夜仕事が終わった父上の寝室に週末里帰りしたときに聞きに行ったのが今晩だったんだ。
「ねえ。父さま。お母さまとはどのように出会ったの?いつか母さまに聞いたときは父さまと結婚した理由はあの人はあの人だったからとただ微笑むだけで教えてくれなかった。逆に父さまに教えてもらうように言われてて・・・。」
「ああ。その話しか。確かに彼女からは話しにくいだろうな。原因は私にあると言っても良いだろうから。アルベルト。もう簡単な文字は書けるようになったかい。お前は聡明な子だからいつか王位を譲っても安心して任せられるのだが。」
「はい父さま。」
「良い子だ。これは私との約束だ。大切なひとには手紙でも言葉でも良いから気持ちをしっかりと伝えるんだ。」
思えば彼女と初めて会った日から私は彼女に興味があったように思う。あれは王族主催のデピュタント後のパーティーだった。彼女はその時からこう・・・なんというか女王の脂質というか存在感があったんだ。まだ5歳であったのにだ。周囲は彼女の可愛いらしさとその存在感に目が釘付けだったし、当時の私もその一員だった。
彼女が婚約者に選ばれたときは胸が高まってそれから数年は嬉しさのあまり天にも昇る気持ちだったものだ。
「んん?おい息子よなにをそんなに熱心に書いているんだい?」
気にせず続けてというと父さまは遠慮なくソファに深く座り足を組んで頬杖をついて少しばかり物思いにふける様子をみせしだいに当時を懐かしむように話し始めた。
そこから大幅に時間をはしょる:)
気づけば彼女と私は長年をともに過ごして絆を深めあっていた。彼女が私と結婚をし王室の一員として迎えられることを疑うものはいなかったし、私自身微塵も疑ってなかった。だが彼女の実家の公爵家がなんともきな臭い事件で殉職されてな。一族からも見捨てられて彼女には後ろ盾がなくなってしまったのだ。そうなると他の貴族が私たちの婚約を白紙に戻すように動き始めた。
我が父上も母上も所詮結婚は政略的にという思考の持ち主だから、私の考えだけではどうにも出来なかった。まるでこの国のみんなと私の将来の枷が彼女との結婚を阻んでいるようだった。
王妃が私の1個年上だっていうのは知っているね?彼女は私より1年先に学園を卒業し、隣国へと1年留学をすることになった。彼女はこれもまた運命かもしれませんわと別れ際に優しい目をしていたが内心涙を流していたと再会したときに語ってくれたよ。
その日の港へ向かう馬車の彼女に恋焦がれて、学友の新たな婚約候補筆頭のピンク髪の彼女と向き合う毎日がただ憂鬱だった。エレイン。今ではスコーシャ侯爵家へと嫁いでいる彼女は誰もが認める才媛で平民とは思われていたもののアンダンテ王国の第3王女という身分が明かされたときの彼女は誰もがこの国の国母へとなることを期待していたし、彼女も私へ当時は思いを寄せてくれていたのだ。
彼女との婚約はもはや白紙同然になった私がせめてと思ったのが彼女へ手紙を書くことだった。ただこう言っては恥ずかしいのだが、彼女への未練がだだもれできっと当時の私はめんどくさかっただろうに、彼女は無下にしなかったんだ。
ただ彼女が平易な日々を過ごしているか。彼女の体調を気遣うような当たり障りのないような内容が続いていた日もあったし、ときには溢れだす思いが抑えきれずただのラブレターだったときもあった。1年がたつ頃には彼女からの返信がないままもう私はこの国を爆破しようといよいよ追い詰められていたとき、だ。
彼女から1通の返信が届いた。
「よくもまあ未練たらたらに1年も手紙を送ってくれましたわね。本当によくも飽きないものかといつも楽しませておりました。毎週あなたからの手紙が届くのが楽しみでそれだけが心の支えで。ただこの手紙の山には正直ひきますわ。ええと他にも言いたいことは多々ありますが、まあ良いでしょう。あなたのその想いに応えるために各国正確には3か国との強固なるパイプを作ることに成功致しましてよ。」
そのときの手紙がこれだと見せてもらう。確かにお母さまの字である。あのお母さまがデレているのはきっとその人生で数回だと思うのですがその貴重な一回がここにつまっている。
そんな感じで万全の体制で彼女は堂々と民衆の支持もえてどの貴族も口出しできな確固たる外政力を手に入れこの地へと戻ってきた。
みんなの手のひら返しはもう見事としかいいようがなかったが、そんなことはどうでも良かった。私は彼女とこの国をともに支えて生きていけるのがたまらなく嬉しかったよ。
「というわけだが、参考になっただろうか。」
「はい・・・。正直実の親の惚気話はなかなかに聞きたくなかったというか。これからこのことを別件で相談しなければならないというか。」
日記帳をパタンと閉じた。
「ふむ・・・。良く分からないが王妃と私のことはなにも心配いらないよ。もう夜も遅いから安心してお眠り。」
「おやすみなさい。お父さま。」
「ああ。おやすみ。部屋まで送るから。さあ行こうか。」
もうみんなが寝静まった時間。真っ暗な廊下がどこまでも続いていたが、父さまの手は温かく不思議と暗闇が怖くなかった。
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