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般若の面  作者: ツルギ
第一章 仮面の下
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第一面 般若の面を付けた女の子

 _この街には、とある言い伝えがある。


「般若の面を付けた人間は呪われる_人を食い物と見て、襲い始める。」


 大昔に作られたものだが、それがずっと定着し続けただけで本当にそんな事が起こったという事例はなかった。


 今までその謎を解き明かすため、大勢の歴史研究家がこの地を訪れたのだが、みな「何も変わったことなどない」と口を揃えて言ったのだ。


 _この物語の舞台は、「般若の面」という言い伝えがあるとは到底思えぬ都会の街の高校。


 鞄を後ろに持ちながらギャルみたいな口調で友達と話している都会っ子が一人。


 名前は朝凪結あさなぎゆい。耳にピアスを付けている黒髪、ロングヘアの女子高校生。

  『クラス一の正義感ある美しき女』と謳われつつも、喧嘩が強い女でもある為、友達以外誰も近付く事が出来ない。


  『そんなに厳しい女じゃないんだけど、私。』


  あ、そうですか…こりゃ失礼。

 結は気だるそうにしながら靴箱に靴を入れる。


  『ってか今日なんか暑くね〜?』


  友達が不満そうに小言を呟く。


  『それな〜!ま、夏だから仕方ないけどさぁ〜それにしては暑いよね〜』


  結は友達の言葉に共感し、同じく小言を呟く。


  『温暖化の影響なのかな?』


  『ぽいね〜』


  前にいた生徒はビビりながら後退り。逆鱗に触れると怪我しかねないからだ。


  『今温暖化防ごうとしてるの大分遅くない?そうこうしてるうちに地球が溶けて皆死んじゃうよ。』


  『ま、何とかなるんじゃない?政府とか国際のお偉いさんは有能だって聞くし。』


  話してる事がだんだん世界規模の話になっていく…この2人怖っ…


 -教室-


  2人は喋りながら教室へ着く。


  『あ、名倉っち!おはよ〜!』


  『おはよ〜なんか今日早いね!』


  『まぁね♪

 ってそこは、「いつも早いね〜」って言うとこでしょ〜!笑』


  他のクラスメイトとは違い、結達と仲良く話しているこの男は名倉謙なぐらけん。結の昔っからの幼馴染で友達関係が強い人の内の一人だ。


  『よくあそこまで気楽に喋れるなぁ…』


  『まぁ幼馴染だから、仕方ないよ…』


  モブがボソッと羨ましがる。モブはモブ程度の活躍しか出来ないというのがアニメの決まりだから、こうなるのは仕方ない。


  『ならせめて語り手であるあんたが俺達をモブからメイン級のキャラに昇格してくれ!!』


 そんな事言われても自分はあくまで傍観者で、作者ではない...今こうして一つのキャラとして成立してしまっているから、作者に抗うこともできない、変えてもらうこともできない...


「...そうか、なんかごめん...」


 そうこう言っている内にチャイムが鳴り、朝読書の時間になった。


  『ねぇねぇ、何その本…』


  『これ?この街の言い伝えを調べた事を書き記した本だよ。』


  『何処で買ったのそんな本…!!』


  『いや、買ったんじゃなくて…先祖代々から受け継がれてきた"般若の面"の話なんだって。お父さんが学校の朝読で読めって言われて。』


  結と謙が本のことでボソボソと喋っている。


  『こらっ!!2人して何喋ってんの!!』


  怒号を上げて担任の先生が怒ってきた。まぁ…自業自得だ。


  『…すみません、ちょっとスタバの新作の事について話してて…』


  『スタバの新作?』


  『シー。』


  本当の事をはぐらかした謙は先生と喋ったわけを本当の事を隠しながら説明した。


  『ふーん、スタバねぇ…





 新作でしょ?






 美味しかった…?』


  『美味しかったです!』


  『やっぱり〜!あの甘酸っぱい感じいいよねぇ〜!』


  急に学生っぽい口調でスタバの新作の感想を謙と語り出す担任の先生。その姿を見て生徒驚愕&ドン引き。


  『何喋ってるんですか先生…』


  隣のクラスの担任が動揺しながら自分のクラスの担任を見た。


  『はっ…!?あ、えーと…そのぉ…これはぁ、ですね…?』


  『まぁまだ今日一回目ですから。他言無用ということで、誰にも話さないようにしておきます。

 ですが、二回目や三回目は…ないですよ?』


  『はいッ!すいませんでしたっっ!!』


  担任はそう言うと、表情を変えて…


  『では、朝のSTお願いしま〜す!』


  と言った。さっきまでの怯えや怒りは何処へ行った…と思ったが、謙のおかげで何とか怒られるのを凌げたと『ホッ』とした。


  『ありがとう…』


  『いいってことよ。』


  小声で礼を言い、お互いスッキリしたところで…一時間目は社会。江戸時代の事についての授業だそうだ。


  『キーンコーンカーンコーン』


  社会担当の先生が教室の扉を開けた時にチャイムが鳴った。


  『遅かったじゃ〜ん!』


  よく居るいつもうるさい女子高生が遅刻した事にからかい始めた。


  『先生と話しててねぇ…遅れてしまいました。ごめんなさい!』


  そう言って頭を下げたが、鬘が取れた。


  『あぁっ!鬘が〜!』


  そしたら教室全体大爆笑。

 あまりにも快い気持ちいい鬘の取れ方の為、どの授業よりもでっかい声を出して笑った。


  『いやぁ申し訳ない…鬘もう一回付け直そうかな。ま、いっか。ポケットにしまっとこ。ということで、授業始めていきますよ〜!』


  そう言うと、クラスは一瞬にして沈黙を成した。


  『んな大袈裟な!…少しぐらいは喋っていいぞ、ってか喋ってもらわんと寂しいだろ俺がっ!!』


  すると一部の生徒がクスッと笑い、少しずつ会話が飛び交ってきた。


  『よ〜し、その方がやりやすい!んじゃあ始めるぞ〜!』


  江戸時代は徳川家康が築いた時代。中心は現在の東京。と、先生のペースで授業を進めていく。


  この先生の授業は分かり易く、そして面白い。授業の中で一回か二回ほどギャグを言うのだが、そのギャグのキレがよく、滑ったことは一度もない!

 クラスの生徒としては親しみ易い先生なのだ。


  すると先生は急に表情を変え、般若の面の事について話し出した。


  『江戸時代初期の頃、この街にとある書物が売られ、広まった。


 "般若の面"


 世にも恐ろしきその存在は付けたものに憑依するというもので、一夜にして周囲に居た人間を喰らい、人々が恐れる存在の一つとなった。


  まぁ、あくまで言い伝えな為か…そんな根拠は無い為然程有名にはならなかったのだが、この街では知らぬ存ぜぬでは済まされない程語り継がれてきたものだ。


  何故そんな話を今したのか…それは、』


  『それは…?』


  『嫌な予感がするからだ。』


  その言葉には、『これから起こる』というメッセージが込められていた。謙はそれを感じ取った。他のクラスメイトは


  _ぽかーん


  としており、理解出来ていない様子だった。


  『キーンコーンカーンコーン』


  一時間目の終わりのチャイムが鳴った。


  先生はふと我に返ったように少し戸惑っていたが、授業が終わっていた事に気付き、職員室へ戻っていった。


  『これで、いいはず。』


  そして一通り授業が終わり、放課後。

 結は友達と一緒に帰った。


  『急なんだけどさ、本当なのかな…般若の面の話。』


  友達が怖気付きながら言う。


  『心配する事ないんじゃない?どうせそんなのは随分古い時代に出来た昔の人のイタズラ書きだって、私のお父さん言ってたし。』


  『そうかなぁ…』


  結は気楽に言い聞かせたが、急に歩くスピードを早くした。


  『…?なんで早足で歩いてるの?』


  そう友達が聞くと、


  『付けられてる気がする…一緒に行くよ。』


  真面目な顔で友達に手を差し伸べ、困惑気味の友達は恐る恐るその手を取り、前に引っ張られるように走っていく。


  『タッタッタッタッ』


  後ろから草履のような足音が。


  『コツコツコツコツ』


  するとまた別の方向から違う足音が…

 足音は結達が足を一歩前に出す度にどんどんどんどん増えていく…


  革靴にヒール、長靴、素足、さらに人の声までする…!!


  『逃げるな、逃げるな…』


  『私を助けろ…』 『僕を助けろ…』 『わしを助けろ…』


  『ク ワ セ ロ』 『ク ワ セ ロ』『ク ワ セ ロ』『ク ワ セ ロ』『ク ワ セ ロ』『ク ワ セ ロ』『ク ワ セ ロ』

『ク ワ セ ロ』 『ク ワ セ ロ』


  『怖い怖い怖いッ…!!!!!』


  不気味に重なり合った老若男女の罵詈雑言と、様々な足音が不協和音のように結達を襲う…


  『…いい加減にしろ!!!!』


  結が怒号を上げてバッと後ろを振り返ると、般若の面を付けた傷だらけの少女が立っていた。


  『さっきの人の声、足音を使って襲ったのはお前だな…?』


  『…』


  怖がっているのか、般若の面をつけた少女は何も言わない。


  『良くも私の友達を怖がらせたな…?相手が気弱そうな幼い少女だろうと、私は容赦しない…!!!!怒りの拳を…くらいなぁぁっ!!!!!!!!』


  罰を、下される…そう思った少女に、過去の出来事がフラッシュバックする…


  『お前■、■■ない■だ…!!』


  『…!!いやぁぁぁぁっ!!!!!!!!』


  そして結の怒りが籠ったその拳は…!!






  _ぽん。


 





  『?』


  『なんてね!気弱な子を本気で殴るなんてことは私はしないよ。』


  軽いぽん程度の拳だった。


  『…あ、あ…』


  『だ、大丈夫!?』


  怖かったのか、少女は気を失って倒れた。


  『やり過ぎだよ…私のこと守りたかったからって怒っちゃって…』


  『…ごめん。』


 般若の面を付けた人間は本当に居た。だが、あの様子からは人を食らうとは結は到底思えなかった。果たして次回はどうなる…?

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