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生まれつき

「レーファお姉さんが言ってたこと結局よくわからなかったね」

「君のお母さんが感じたものって何なんだろうね?」

レーファお姉さんの話を聞いたあと私たちはマッハで商店街に戻された。

さて、ここからどうしようかと考えていたところポケットから通知があった。

美風お兄ちゃんからだった。

「マギクル伝え忘れていたことがあった病院に戻ってきてくれ?美風お兄ちゃんったら何忘れたのかな?」

「あそこに戻るのは気が進まないけど行ってみようか」

私は病院に向かって走り出す。

レンガのブロック塀を超えてショートカットをしすぐに病院へと着いた。

「あっ!美風お兄ちゃん!」

「ごめんマギクル…こんなところで話すことじゃないなついてきて」

美風お兄ちゃんはまたあの部屋に私を連れて入り込んだ。

「それで、今度は何なの?」

「マギクル、君が何者なのかだ」

「何者って?…私はクルガー家でお母さんから生まれた人間よ、まさか人間じゃなかったなんて言わないでしょうね?」

「そうだとは言わないけどそうでないとも言い切れない……マギクル、君はワイデルさんから聞いて僕のところに来たんだよね?」

私はゆっくりと頷く。

「その時なんて言ってた?」 

「私をオペで取り出したのは美風お兄ちゃんだって言ってたよ」

「………なあ、君は本当にそれを信じるのか?」

私は美風お兄ちゃんを凝視する。

何を言ってるんだこの人は?

「なあ、君は父の姿を見たことはあるか?」

「そういえば…私お父さんの姿見たことない…」

「え?それ本当なの?」

「うん」

「え?マギクル何に話しかけているんだい?」

「あっなんでもないの」

私は急いで、美風お兄ちゃんに袖からはみ出たフィアを引っ込める。

「君の父はいないんだよ、少なくとも僕は見たことがないね」

「そんなの見たことないだけじゃない!」

「子供の出産に付き添わない非常識な父はいないと思うけど?」

美風お兄ちゃんは香水をポケットから取り出し日に掲げながら、目を細める。

「つまり美風お兄ちゃんは何が言いたいの!?」

「真実を教えるよ、落ち着いてね?僕は君をオペで取り出してなんかいない」

「何を言ってるの!でも実際オペは行われているはずよ!」

「確かにオペはやったさ、ただ全く違うオペさ…子宮がんのオペだ。聞いてくれるかい?君が僕たちの前に現れた時の話さ」




「これより、ワイデル・クルガーさんの子宮がん切除を行います…メス」

手術は順調に進んだ。

しかし、手術の途中でワイデルさんが目覚めたんだ。

「美風…腹に私の子供が」

「子供?」

そう言われたとき僕は診察の時の記憶が過った。

「夢の中で私の子供がね」

そうか、ワイデルさんは自分の癌が子供だと思ったんだ。

「ちょっとこの人なんなの?麻酔効いてるはずなんだけど!?」

「麻酔が特別効かないみたいなんだ!麻酔医君は別の仕事に移って大丈夫だよ。ワイデルさん自身の意識を飛ばすことはできますか?」

「うん…子供をよろしく」

ワイデルさんの意識が飛び手術を続行した。しかし、子供はどこにもいなかったあるのは切除済みのがん細胞のみ。

「美風院長?」

「いや、なんでもない閉じよう」

縫合も終わり僕は手術室を出た。

しかし、ワイデルさんは自身の体に子供がいると言った。

夢の中での出来事で想像妊娠でもしたのだろうか?

「美風院長、至急部屋にお戻りください。不思議な子供があなたに用があるそうです」

「小児科関係か?まあいい、行ってくるよ」

部屋に戻るとなんとも不思議な光景が広がっていた。

白髪の子供が僕の椅子に座ってこちらをじっと見ていたのだから。

「えっと君は?」

「あなたがここのインチョウセンセイ?えーーとね、名前まだ無い!」

子供がそういうと、内線電話の音が部屋に鳴り響く。

受話器を取ると手術室から不思議そうな声が聞こえてきた。

「あの美風院長、ワイデルさんの切除した癌が無くなっているんですけど…」

「?癌は確かプレートに置いておいたはずだが」

「美風!私の子供は!?ちょっと縫合跡開いちゃうでしょ!まだ安静にして!」

電話はそのまま切れてしまった。

「今のだあれ?」

「さっき僕が手術した患者さんだよ」

「その人どこにいる?」

「え?まだ手術室だけど」

「はーい」

少女は椅子から降りて、部屋から出て行ってしまった。

「ちょっと君!待って!」

少女は止まらず、そのまま廊下を走り抜けて行った。

「なんで手術室への道知ってるんだ?そんなことより追いかけないと!」

廊下を走り抜け手術室のドアを開けると先ほどの子供と、ワイデルさんが楽しそうに話していた。

「あら、ありがとう美風子供を取り上げてくれて」

「え?それワイデルさんの?」

「ええそうよ、名前は何にしようかしら」





「これが君が現れた経緯だよ」

「私そんな記憶無いんだけど?」

「それでも本当なんだ、君の本当の親はワイデルさんでは無いのかもしれない」

そんな、私がお母さんの子じゃない?

「でも、これで人間である可能性は増えたんじゃ無いかな?」

「フィア…黙ってて」

袖から出てきたフィアは暇なのか私の周りをぐるぐると回り始めた。

「その赤い煙、クルガー粒子だね。それはクルガー家しか使えないものだ、君がワイデルさんの家族ということは確定している…問題は誰が君を産んだのかだ」

「私のお母さんは他にいる?」

「ラミア・クルガーは完璧な子供を作るためリハーサル品であるワイデルを生み出した」

頭の中でレーファお姉さんの言葉が過ぎる。

「リハーサル品以外にもお母さんの模造品はいるはず!それを調べれば!!」

もしかしたら、私を産んだ人が人間かもしれない!

「ちょっと、マギクル!どこに行くの?」

後ろから、美風お兄ちゃんの声が聞こえたが、今の私に構う余裕なんてなかった。


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