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俺の平凡な日常  作者: 773
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「来週の週明けにチケットを使いたいですわ」


 ある週の金曜日、芙蓉はそう言った。


「ついに使う気になったか。いいぞ」

「ですが最近色々なものを食べて耐性ができたとはいえ、いきなり特別な物を食べてぽんぽんがびっくりしてしまうかもしれませんわ」


 わかるわかるぽんぽんペインになったらつらみが深くてぴえん超えてぱおんだからな。

 ぱおんってなんだよ。


「ですので予行演習がてらに週末に街に出てキッチンカ―などで慣らしておこうと思いますの」

「いいんじゃないか?それが練習になるかはさておき、楽しそうだしな」

「それでもしよろしければ鉄様にそれにご同行をお願いしたいのですわ」


 話変わってきたな。


「よく考えてみたら食べ物を食べるだけだろ?練習いらないな。週明けの楽しみにして週末はお腹を休めておかないか?」

「いえ、わたくしは何事も準備が大事だと思っておりますの。それに買い食いというものを1度してみたいと思っていたんですわ」


 そうかー思っちゃったか。熱弁をふるう芙蓉に正攻法を諦めて搦め手で行くことにする。


「でもその買い食いも複数人で行ったら食べるペースが違うからな。足並みが揃わなくって単独のほうがよかったってならないかな?それに俺が行っても邪魔だろうしな」

「邪魔だなんてそんなこと思っておりませんわ。鉄様はわたくしの大事なお友達でいますから単純に出かけたいというのもありましたの。もしかしてご迷惑でしたか?それならわたくし諦めるのですが」


 ううう、こう真正面から来られると弱いんだよな。

 実際にこいつが美味しそうに飯を食ってるのを見て楽しんでいる部分もあるっちゃあるからな。


「わかった一緒に行こう。どこで集合しようか?」

「ではあとで集合場所をお送りいたしますので連絡先の交換をいたしましょう」


 携帯を取り出して連絡先の交換をする。式に続いて2人目の連絡先だ、携帯君も驚いているだろうな。




 その日の夜。用事を済ませた俺は寝るだけという段になり、ベッドに横になっていた。

 うとうととしているとベッドサイドに置いてある携帯が鳴りビクッとする。

 そういえば連絡するって言われていたな。

 来た文面を読むと慣れていないのだろう、とても簡素なものだった。


『明日、10時、駅前』


 了解という旨の返事と適当なスタンプを送るとすぐに返信が返ってきた。


『楽しみ』


 お嬢様はどうやら電子機器に明るくないようだ。




 翌朝、目覚めた俺はいつものように式が用意してくれているブランチを貪っていた。


「てっちゃん寝ぐせひどいよー、直してあげるからこっち向いてね」

「んあーさんきゅ。あ、そうだ今日俺出掛けてくるから」


 いつの間にか用意された櫛と霧吹きを手にそうなんだと式は首肯する。


「じゃあ私も余所行きに着替えてくるね。どこに行くの?お出かけなんて久しぶりだから楽しみだね!」

「え?連れて行かないが?」


 ぴしりと石像の様に固まる式。


「だ、だっててっちゃん1人で出かけるなんて何かあったら私耐えられないよ。それに外は危ないし私が守護らなきゃいけないし・・・」

「いや子供じゃないんだから1人で平気だし。なんなら1人じゃないし」

「ダレ?」


 式の纏う空気が変わった気がした。さっきまでのほんわかした春の陽気のようなオーラからいきなり寒風吹きすさぶ冬のようなオーラになる。


「最近知り合った友達だよ。買い食いをしたことが無いから付き合ってほしいんだと」

「トモダチ?オス?メス?」

「女の子だけれども駄目だぞ?人の事をオスメスとか言っちゃ」


 ハイライトが消えた虚ろな瞳で俺を見つめる式。


「駄目だよてっちゃん。猶更行かせられなくなっちゃった。お外は危険が危ないんだよ?ステイホームだよ?」


 もうそれはとっくに解除されているだろ。それに危険が危ないって意味が重複してるし。

 こうなったら面倒だな。適当にごまかしてとっとと出るか。


「遅くても夜までには帰ってくるからさ、夕飯を作って待ってて欲しいんだ。買い食いで色々食べてくるだろうから、なにか腹に優しいものを作っておいてくれると嬉しいな」

「でもでもだってだって」


 席を立ち、テーブルを回って式のほうまで行くとおもむろに抱きしめる。


「いつもありがとうな?式がいるから俺はこうして色々自由にできてるんだ。こんなぐうたらな俺に付き合ってくれて本当に感謝してるんだぞ?」

「くんくんはすはす」


 俺の胸でもがもが言っている式。ここで畳みかけるとしよう。

 片手で背中を優しくトントンと叩き、もう片方の手で頭を撫でつつ耳元で囁く。


「俺の帰ってくる場所はここだから。留守を頼めるか?」

「はい♡」


 勝った。抱擁を解くと俺は式の気が変わらないうちにとっとと準備を済ませて家を出るのだった。

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