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俺の平凡な日常  作者: 773
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初投稿です。ぼちぼち更新していくので適当によろしくお願いします。

 春、それは誰もが訳もなく浮足立つ季節。

 俺、和泉(いずみ)(てつ)はそんな地に足がついていない有象無象を横目に見ながら重い足取りでこれから通う盤上高校の校門をくぐる。


「も~そんなにムスッとしてないでスマイルだよっ!スマイル!」


 横から姦しくそんなことをいうのは同じく新入生で幼馴染の小幡式(おばたしき)

 亜麻色のきれいなロングウェーブ、身長は俺の胸元くらいしかないお子様だが胸部だけは凶悪なモノをお持ちのトランジスタグラマーというやつだ。

 春風にそのロングウェーブをなびかせて俺の胸元でお姉さんぶって注意をしているのを見るとなんだかほほえましい気持ちになる。


「んなこと言ったってダルいもんはダルいんだよ・・・」


 少しばかりほっこりしたところで気持ちが上向くことはなくそれからもぶつくさ言いながら2人で入学式が行われるという講堂に向かって歩く。

「てっちゃんはお顔はいいんだよ?でもそのお目目ですべてが台無しというかなんというか・・・ね?」

 ね?ではない。人の顔を捕まえてなんだというのだ。このイケメンフェイスを理解しかねるとはこいつもまだまだだな。


「どれどれ?そんなに言うなら式の目を見て輝きの参考にさせてもらおうかな」


 ちょうどいいところにあるその顔を両手で挟み至近距離で見つめる。びっくりして見開かれたその瞳は翡翠色のアーモンドアイ・・・というかまつ毛長いなこいつ。毛穴も見当たらない。本当に人間か?もしかして人形なのではないだろうか・・・?

 そんなことを式の顔を見ながら真剣に考えていると次第にその顔が赤くなっていく。それに頬に添えている手も熱い。


「わ、私の顔はいいんだよっ!それよりも早く講堂行こう?入学式が始まっちゃうよ」


 慌てながら俺の手を振り切り先に進む式。その顔はまるでゆでだこのようだ。

 ヘイヘイと生返事をしながらそれについていくとすでに講堂ではほとんどの新入生が到着しており、どうやら俺たちが最後らしく係の先生に早く着席するようにせっつかれた。

 式と別れて席に着いた俺は近くの生徒となんとなしに言葉を交わしながら早く終わらないかなと時計を眺める

 それから特筆するでもない平凡な式が執り行われ、やる気のない俺は馬耳東風といった具合に聞き流すのであった。


 それから新入生のクラス分けが行われ、俺は1-Cになった。

 この学校は新入生約100人が3クラスに分けられる。噂(式経由)で聞いたのだが、入試の結果をもとに成績順で分けられているらしい。なんというか進学校らしいな。

 その噂の出どころさんはというと1-A。関係ないけれど何となく鼻が高いね。今度頭でも撫でてやろう。

 飛んでいた意識を教室に戻すと新任だという20代前半くらいの女教師が教卓の前で熱弁をふるっている真っ最中であった。真っ赤なジャージを着ているのを見て、あぁ、完全に形から入るタイプの人間だなこいつはと俺はひとりごちる。髪の長さは少し足りていないが2つ結びに眼鏡も完備とは恐れ入る。

 そんな熱血教師のHRも終わり、さあ帰ってひと眠りするかと足取りも軽く教室を出る俺の前に影

「おい鉄。そんなに急いでどこに行くんだ?もしかして私に一刻も早く会いたかったのか?そうかそうか私も待ちきれずに来てしまったよ。さあ共に行こう。どこまでも」


 トチ狂ったことを抜かすこいつは俺の姉である和泉和歌(いずみわか)。文武両道、品行方正といった上げればきりがないほどの優等生で流れるようなその腰まであるストレートの長髪は烏の濡れ羽色。長身で出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるメリハリボディーをお持ちだ。それに加えて2年生ながらに生徒会長をしているという。聞いた話では非公式のファンクラブまであるとかないとか。そんな非の打ち所がないような完璧な姉だが、ただ1つ神様が設計を間違えたと言わざるを得ない点は先の言動にある。


「突然現れて変なことをいうのはやめてくれないか姉さん。もう高校生なんだから過干渉はほどほどにしてくれないか?周りの目もあるし普通に恥ずかしいよ」

「何を言う鉄。私たち姉弟の語らいに恥ずべきところなど何もない。どれ、お前の新しいクラスメイト達にも挨拶をしておかねばな」


 そう。このブラコンなのである。わが姉の和泉和歌はいつでもどこでもその弟ラブっぷりを隠すことなく周りにひけらかすので俺は大変迷惑しているというわけであった。


「さあ姉さん。扉の前で陣取っちゃ他の生徒が出られないよ。とっとと帰ろう。そして飯を食って寝よう」

「む?そうか?昨日徹夜でお前のアピールポイントを100個まとめてきたのだが、そこまで言うなら仕方がない。しかし私は生徒会の仕事があってまだ帰れないのだ。大丈夫か?1人で帰れるか?お姉ちゃんと手をつなごう」

「そうかそうか、それは残念だな。じゃあ先に帰ってるからごゆっくり」


 恋人つなぎをしてくる姉を振り切り足早に脱出する。この人の中で俺はまだハイハイしている幼児なのではないかと思う。

 上履きから靴に履き替え、学校を後にする。さあ帰って寝よう。


「鉄っちゃーん!待ってーー!」


 後ろから小さい何かが全速力で駆けてくる。一部分もものすごい揺れている。おー痛くないのかな?


「もう!いっつもすぐ帰っちゃうんだから!今日は一緒に帰るから待っててって言ったよね!?」

「あー忘れてたわ。すまん式」


 それを聞いて式が口を開きかけたのを見て俺は面倒になりそうだと思い、先に言葉を発する。


「時に式さんや。Aクラスおめでとう。成績優秀な幼馴染をもって俺も鼻が高いよ。それにあれだ。かわいさも最近あれだ、いい感じだな」


 完璧すぎる俺のフォローが功を奏したのか相好を崩す式。


「えっへん!受験勉強頑張ったからね~というか一緒に勉強してたのに鉄ちゃんCクラスってどういうこと!?私一緒のクラスで勉強できるの楽しみにしてたんだからね!それにあれってなによ。褒めるんならきちんと褒めてほしいな・・・」


 しまった、この話題はやぶ蛇だったようだ。どれ、ちょうどいいところにある頭でも撫でておこう。


「もー都合が悪くなるといっつもそれなんだから・・・えへへ」


 ちょろいな、助かる。

 気を取り直したらしい式が俺の横に並び、歩きながら言う。


「今日の晩御飯は何が食べたい?入学祝だし鉄ちゃんが好きなもの何でも作ってあげるよ?」

「じゃあピーマンの肉詰めで」

「りょーかい!材料ウチにあったはずだから、帰って着替えたら持っていくね」

「え?それって小幡家の夕飯の材料じゃないのか?勝手に使っておばさんに怒られないかな?」

「だいじょぶだいじょぶ!夕飯の材料とは別になってるから心配しないでね」


 用意がいいんだな~この幼馴染は。俺が食べたいものをリクエストすると大概家から持ってくるからな。

 これが以心伝心ってやつなのかね。

 そして、それからこれからの学校生活の心構えを滔々と語る式の言葉を適当に相槌を打ちながら聞き流していると家に到着した。

 我が家である和泉家のお隣さんが小幡家である。徒歩5秒の激近、それぞれのお宅の2階は俺たちの部屋なのだが、そこはもうドアtoドアというのだからびっくりだ。徒歩0秒である。


「じゃあまた後でね。ドア開けられる?手つなぐ?」


 手をつなぐのは最近の流行か何かなのだろうか?姉さんもそうだったし、もしかしたら最新のトレンドなのかもしれない。にぎにぎと俺の手を握ってきた式の手を優しくほどきながら俺は思考する。


「開けられるよ。じゃあまたな」


 まあ、これからも平凡な日常が続いていくんだろうなと思い苦笑しながら俺は玄関を開けた。

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