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第19話 王国は宣言する

 アスミ重工本社の屋上。未だ落ち切らぬ茜色の日の光が、2人の男を照らしていた。


「覚悟しろ?クフッ…フッハハハ!!不貞寝していたガキ如きが何を言うか!むしろ覚悟するのはお前の方なんだよ!」


 アスモデウスがそう言いながら指を鳴らすと、急に俺の体が重くなっていくのを感じた。


「これは!?」

「体が重いか?ここに魔力阻害の刻印で結界を張らせてもらった。お前に合わせて改良した特別仕様だ!たっぷり味わえ!」


 なるほど…ミーナを眷属にした時の倉庫で経験したあの刻印を、さらに強化した物か。 これでは眷属の力も魔法も使えない。そしてこれは…霧になる事も封じられている。だがなぜやつは平気なのだ?ここまでの負荷、魔族の肉体そのものにも影響するはず…いや…そうか


「気が付いたようだな。今のワタシは明日見あすみ伝助でんすけの中にいる!つまりは人間の肉体と言う訳だ。ハイヒューマン計画が順調であればこんな脆弱な肉体ともお別れしていたはずなのだが、どういう訳か我が娘達が反抗的なせいで予定通りに進まなくてね」


 俺の力を封じた事で、良い気になって話をするアスモデウス。この展開はあの倉庫の下衆な所長と同じだ。

 人は調子に乗ると、こうまで似る物かと少し笑いが出そうになる。


「ふっ…まだ笑える余裕はあるな」


 そう独り()ちながら、右足に力を込める。


「でぇぇぇあ!」


 一足でやつの眼前まで踏み込み、その顔面を目掛けて拳を打ち込む。

 

──ガインッ

 しかしその攻撃が届かなかった事を、金属の鈍い音が伝えていた。見れば床から出現した無数の機械の触手が、軟体生物のように蠢きやつの周囲を守っていた。



「残念だったな。人間には科学の力と言うものがあるのでね。お前のハッキングとやらもこの結界の中では役に立つまい!本当にコントロールが戻っているかは冷や冷やしたが、これでワタシが勝ったも同然だな!」

「くっ!」


 一度体勢を立て直そうとする俺に、機械の触手は隙を与えず容赦なく襲い掛かってくる。今は耐えられはするが、このままでは状況は悪くなる一方だ。


「よく耐えているが、いつまでそうやっていられるかな?さてここで特製魔鉱銃のおでましだ!お前はこいつに耐えられるかな?」


 万事休す。ここまでのアスモデウスの用意周到さを考えると、あの銃弾はきっと俺に届くだろう。

 やつはゆっくりと魔鉱銃を構え、俺へと狙いを定めその引き金を──


「アル様!」


──ガキン

「なっ!?」


 金属音が突如鳴り響き、銃が床に落ちる。その事態に驚愕の表情を見せるアスモデウス。転がった銃には見覚えのある矢が刺さっていた。


「間に合ったようで何よりです」


 触手の猛攻に耐えつつ、その安堵の声に振り向くと、そこにはエリィがいた。


「エリィ…よくぞ来てくれた…!だが結界の影響は平気か?」

「お気遣いありがとうございます。少々きついですが、弓矢は使えますのでお力にはなれます」


 エリィはそう言いつつ矢を構え、アスモデウスを牽制する。


「ダークエルフの小娘が!ワタシの邪魔をするなぁぁぁ!!」


 激高したアスモデウスが機械の触手をエリィへと向ける。だがそこには、もう一つの銀の輝きが舞い降りていた。


「アタイを忘れて貰っちゃ困るぜ!!」


 触手は、その銀狼に阻まれた。


「遅かったな、ギンガ!」

「へっ、そんな状況で良く言うぜ!…親父!親子喧嘩しに帰って来たぜ!」


 俺の言葉に軽く笑いながら、ギンガは自らの父に対して宣戦布告する。


「ギンガ…この…親不孝者がぁ…!」

「自分で娘をこんなにしといてそれはねぇだろ!じゃあ、行くぜぇえ!」


 ギンガは雄叫びにも似た声を上げ、全ての触手に電撃を浴びせていく。機械で出来たそれらは、次々と煙を上げて力なくその機能を停止した。


『アルさん!ルティアさんの会見が、王国とサイバネストの両方に向けて発信されました!マスクのモニターに映像を映しますね!』


 地上のミーナからの通信。マスクの端に、ルティアが今まさに国民へと語りかける様子が映し出された。


『王国の皆様、ならびに科学都市サイバネスト皆様。わたくしはブライティ王国第一王女、アブソルティア・ルイン・ブライティ。国王グランツ・レイ・ブライティの名代として、この夕刻に広域魔法を使用し語りかける事を先にお詫び致します。』

「勇者?なぜ今こんな放送を?」


 アスモデウスは落ち着きが無い様子で右耳に付けた通信端末を手で押さえ、流れてくるルティアの声を聞いているようだ。


『先ほど、王国内のオートドールが一斉に暴走してしまう事件が起こりました。幸い既に鎮圧されたと聞き及んでおり、被害に合われた方々の無事を祈ると共に、救助と支援活動のため騎士団を派遣致しました。そしてここからが皆様にお伝えせねばならない事になります。100年前に討伐された悪魔アスモデウスが復活しました。その悪魔がサイバネストの指導者の1人に憑りつき、今回のオートドールの暴走、先日禁止された魔鉱剤、さらにまだ公表されていない非人道的な実験の糸を引いていたのです』


 ルティアが悪魔復活を公表したのと同時に、俺達がユキネを救出した際の映像が流される。これによりアスモデウスの悪事が白日の下にさらされたのだ。


『勇者として魔王討伐の旅に出ていた途中で、(わたくし)はサイバネストの科学力に幾度となく助けられました。その協力があってこそ、無事魔王を討伐する事が出来たのです。そしてこれからも、この協力関係を強固に築いていきたいと願っています。しかしこの悪魔は、王国と科学都市の友好的な関係に害を成そうとする存在です。決して許してはなりません。しからばブライティ王国は、悪魔アスモデウスを討伐する事をここに宣言致します!』

「く、くぅぅ!」


 やられた、と言うようなアスモデウスの表情。まさか映像まで残っているとは思わなかったのだろう。


『では、(わたくし)の出番はこれにて終わりです。…後はボク、勇者ルティアが討伐してくるから、王国のみんなは待っててね!サイバネストの皆さん!許可は取ってるから今からお邪魔します!』


 なんとも自由な宣言をし、ルティアは王女から勇者の姿へと変わる。そして次の瞬間、体が光り映像から消えた。指定した場所に瞬時に飛ぶ事が出来る転移魔法を使ったのだ。

 その転移先は


「みんなー!お待たせ―!!!」

「ごふっ!!!」


 俺の…鳩尾みぞおちだ…!

お読み頂きありがとうございます!

目指せ毎日更新!

よろしくお願い致します。

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