表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/23

第15話 何でも屋は推測する

 アスモデウス。

 その忌まわしき名を耳にし、全身の血が沸騰するような錯覚を覚える。

 耐えろ、まずは話を聞け。たとえそれが母上の仇の名であったとしても。


「あの悪魔は確か、100年ほど前に討伐されたと聞き及んでおりますが」


 エリィが俺の様子を察し、代わりに事実を確認する。

 会話に入るためにも今は落ち着く必要がある俺にとって、その気遣いがありがたかった。


「ええ、王国の記録からもそのはずでした。わたくしの仲間、賢者ウィルがあの悪魔の討伐に参加していたので間違いありません。ですが魔王討伐後にウィルがサイバネストに初めて訪れた際に、再びその邪悪な気配を感じ取ったそうなのです」


 ルティアから名の挙がった賢者ウィル。500歳を優に超える歴戦のエルフであり、勇者パーティの知恵袋。それだけ生きていてもなお女性に目が無い男だ。

 だが、やつほどの賢者はこの王国に2人といない。その賢者が言うのであれば間違いはないだろう。


「そうですか、あの方が言われるのでしたら間違いないのでしょう」


 エリィが間違いであって欲しかったと言いたげな表情で言った。幼少期にウィルと面識がある彼女は、この事実に対し俺以上に信憑性を感じ取っているのだろう。


「なあ、アタイの親父が悪魔ってどういう事なんだ?もしかしてアタイも…」


 ギンガは青ざめ、信じられないと言った表情でルティアに問う。


「いいえ、ギンガもあなたの御父上も人間です。ウィルの話では、御父上の魂から悪魔の存在を感じると言っていました」

「じゃあ親父は悪魔に乗っ取られたってのか?」


 ギンガは何か思い当たる節があるようだ。


「その可能性はあります。ギンガ、何か心当たりがあるのですか?」

「ああ、アタイとユキネがまだ小さかった時に、アタイ達の母が事故で亡くなってから親父はまるで別人になった。冷徹で、文字通り悪魔みたいに変わった。アタイはその後グレて、ユキネにばっかり辛い思いをさせちまったな」

 

 寂しげに言葉を紡いでいくギンガ。辛い記憶を思い出してしまっているのだろう。

  

「では、転生前に既に変わってしまわれたと言う事ですか?わたくし達はてっきりこちらに転生した際に、彷徨う悪魔の魂が乗り移ったのではと思っていたのですが…」


 ルティアが言ったようにこちらに来てから事が起こったと考えるのが普通だろう。だが、転生と言う普通では無い事象が関わっているのだ。ここは情報を整理し見方を変えるべきだろう。

 俺は未だ落ち着かぬ心に鞭を打ち言葉を発する。


「ミーナ、ギンガ。お前たちの元の世界では他の世界に転生すると言う現象は当たり前に起こる事なのだろうか」


 ギンガも辛い過去を話したのだ。俺がこのまま黙って見ている訳にはいかない。


「当たり前では無かったですね。そう言う概念は創作上の物語とかでは有名だったと思いますけど、実際に転生するなんて想像もつかなかったです」

「そうだな。そもそも他の世界にいくなんて、自分で経験するまでありえねえって思ってたくらいだ」


 なるほど、それならば次の問いだ。


「2人とも転生した日に何が起きたか覚えているか?」

「あたしはその日はいつも通り仕事してました。すごく大きな音がしたから外を見たら白い光があっという間に広がっていって、気が付いたらもうこっちの世界に来てました。最初は大混乱でしたけど、サイバネストは転生したってスクードが発表してから、あたしも周りの皆も不思議とすぐにそれを受け入れちゃってたんです」


 スクードは防衛軍だが、アスミ重工が関わっていると言っていたな。


「アタイは親父から話があるって言われて、ユキネと一緒にサイバネストにあるアスミ重工本社に来てたんだ。そんで親父を待ってたら急に辺りが光り出して、気が付いたら実験施設の中だった。ミーナがさっき言った音と光の出どころは、多分本社かもしれねえ」


 2人の状況から、俺の中の仮説が現実味を帯びてくる。次の問いで確信を得られると良いが。


「ミーナ。お前のいた研究施設は、転生前に何の研究をしていたか教えてくれ」

「新しいエネルギーの開発に取り組んでいました。あたしはまだ新入社員であまり詳しく無かったですが、こっちに来てからその研究と設備がそのまま魔鉱の研究の役に…立って…あれ?」

 

 ミーナは何かに気が付いたようだ。

 そう、いくら優れた科学力を、技術を持っていたにしてもここまですぐに別の世界に順応し、たった数年でここまでの発展を遂げた事実。これはこの転生を予想していなかったと言うには不自然なのだ。


「ギンガ。無理に思い出さなくても良いが、実験施設は何か新しい設備が運び込まれたりはしていたか?」

「いや、設備を交換した感じは無かったな。ずっとそこに置いてあったみてぇだったし、アタイが実験台にされて逃げ出すまでの間は新しくもならなかった」


 やはりか。少なくとも実験設備はこちらの世界に来ることを前提として作られていたと言う事だ。


「ありがとう。これで情報が整った。」


 まだ仮説の域は出ない。だが、100年前にやつが討たれてからその痕跡を追った俺には想像できる。やつの魂は、ミーナ達の世界に転生していた可能性がある。そしてこのサイバネストの転生は─


「科学都市サイバネストの転生は、やつが…アスモデウスが仕組んだ可能性がある」


 アスモデウスは科学都市全ての命をもてあそんだのだ。

 もうその名を忌避している場合では無い。

お読み頂きありがとうございます!

目指せ毎日更新!

どうぞよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ