第14話 王女は国を見据える
勇者ルティアはブライティ王国の第一王女であり、王国最強のS級冒険者。
…そして俺の眷属でもある。
「ミ、ミーナです。ゆ、勇者さんもアルさんの眷属なんですね」
ミーナは驚いた様子で、服で隠れている胸の刻印に手を当てる。
「ギンガだ。よろしくな!その眷属ってのはよく分かんねえけど」
そう言えば、ギンガには眷属の事は言っていなかったな。
「よろしく!ボクの事はルティアで良いよ!そっか、ミーナは眷属だけどギンガは違うんだね?眷属はね、にーさまとラブラブになった証なんだよ!」
「はあ!?ら、ラブラブぅ!?」
ルティアの厄介な説明で、ギンガの髪はバチバチと鳴る電流で逆立ち、その顔は赤く染まる。
「…俺と主従契約を結び、力を貸して貰っている。眷属とは俺にとって家族のようなものだ。」
「な、なるほどな!家族って事なのか!!…ん?でも王女様でもあるんだろ?そういう契約結んで大丈夫なのか?」
俺の説明と家族と言う言葉で少し落ち着きを取り戻したギンガだが、その疑問はごもっともだ。
人間の王族が、魔族に対し従者としての契約を結ぶ事は本来あり得ない。
国民に知れたら大きな騒ぎになる大問題だろう。
「大丈夫大丈夫!どうせバレないし。とっても気を付けてこっそり会いに来てるんだから」
「そう言う問題じゃ…おい何でも屋、どうなってんだ?」
「そうだな。これは俺にも非がある話だ。だがあいつが眷属になりたいと言ったのを断ってはいたんだ…」
ルティアが俺の眷属になってしまっている以上、これは限りなく弱い弁明である。
「そうそう、にーさまったら強情だったんだから。勇者や王女が敵対する魔族とそんな事…とか、成人もしていない者を眷属にする気はない。とかさ」
そうだ、俺も一応弁えてはいたのだ。
「だから魔王を倒して、成人するまで待って、それでタイミングを見計らって寝込みを襲って眷属にしてもらったんだ!」
「あれは血の渇きが起こっている時にお前が来てしまったから…!まあ言い訳は出来んが…」
あの時は長期の依頼の後で、血を長らく吸っていない状態だった。そうした状態で起こる血を欲する渇きは、本能の抑制が効きにくい。
しかしそれも言い訳にはならず、さらにギンガの視線が刺さる。
「あの、ルティアちゃんはどうやってアルさんと知り合ったの?」
ミーナの言葉で話題が少し逸れそうだ。助かったぞミーナ。
「あれは4年くらい前で、ボクがまだ魔王討伐の旅に出てた時の事なんだ」
「無礼にもアル様の居城に侵入してきた時の事ですね」
「エリィは黙ってて!お城には誰も住んでないって噂だったし、ボクは魔族に関する蔵書がたくさんあるって聞いて、戦う相手の事が知りたいなって思ってお城にお邪魔したんだ。実際にはにーさまとエリィが居たんだけどさ」
あれは王都で何でも屋を始める前、まだ北の魔王領に隠遁していた頃の事だったな。
「そして愚かなる侵入者をアル様が懲らしめたのです」
「もうエリィ!でも負けちゃったのは本当。にーさまったらすっごく強いの!しかも優しくて、戦った後にお話したらお城にある蔵書を好きに読んで良いって言ってくれてさ。読み終わるまで何日も居させてくれて、大好きになっちゃったんだ!」
「アルさんって本当に優しいですよね!」
「だよね!ボクは下の弟達しかいないから、兄がいたらこんな感じだったのかなって」
ミーナまで俺を優しいと言い始め、俺は少しむず痒くなってきた。
本題に移るためにも、この話はここまでにしておきたい。
「ごほん!話が逸れたな。それでルティア、大体の話は店の前で聞いていたのだろう。証拠の公表の件、任せて良いんだな?」
「うん、任せて!それにボクも元から怪しいなって思ってて、仲間の2人にも情報を集めて貰ってたから、今回のにーさま達の記録映像と合わせたらばっちりだよ!」
勇者パーティの騎士と賢者の2人か。
あの者達なら抜かりない働きをしているはずだ。
「それは頼もしいな。ではどう動く?」
「んー、それはね。今回は勇者としてじゃなくて、王女として対処した方が良いかなって」
「なるほど、国として動くと言う訳か」
ルティアには、当然だが王女としての顔がある。
そして彼女が王女として動くと言うのは、国際問題としてこの件を公表すると言う事だ。
「うん!それでね─」
「ちょっと待ってくれ!」
ギンガが声を上げる。
「これはアタイの親父の悪事なんだ。しかもアタイだってその悪人の娘なんだ。そんなやつが持ち掛けた話に王女様が乗ってしまって、頼んじまって本当に良いのか?」
「よいのですよ、ギンガ。私が引き受けたいと思ったのです。」
ルティアの口調が変わる。
ギンガの思いつめた問いに、ルティアは王女として、国を導く者として応える。
「あなたの御父上を思う気持ち。そして、生まれ故郷で無くとも王国を思って下さる気持ち。言わずともどちらも充分に伝わってきています。そんなギンガの気持ちを私は大切にしたいのです。」
「すまねえ…ありがとう…ございます…!」
天性の勘とその王族としての資質によって、人の気持ちを汲み取る事に長けているルティアの発言。
それを受けて、ギンガはルティアに深く頭を下げた。
「それにギンガもにーさまの事、□□なんでしょ?だったら遠慮しないでよ」
「は、はあ!?アタイは別に、良い仕事仲間になれたら最高だなとかそれくらいで!まだ知り合って間もねえし…その…」
そんなギンガにルティアは耳元で何かを囁いたようだ。
何を言われたか分からないが、バチバチと髪を逆立て慌てるギンガ。
「あははっ!やっと元気が戻ったね!…気持ちを汲みたいと言う事もありますが、これは王国と科学都市の行く末を見据えての判断なのです。」
「確かに、この問題を放置しておけば両者の関係に亀裂が生じる事態に発展する可能性は十二分にあるな。」
今はまだ、ハイヒューマンにしても魔鉱剤にしても王国で被害は確認されていない。
しかしいつまでもそうとは限らない。サイバネストの中核、アスミ重工の行いがこれから先暴走し、両者の関係に取り返しのつかない傷を負わせる事も考えられるのだ。
「その通りです。ですから、私アブソルティア・ルイン・ブライティの名において、何でも屋<ブラム>一同に命じます。」
ルティアの、王女としての凛とした言葉が告げる。
王族として直々にか、これは思ったよりも大きな仕事となりそうだ。
「国家間の関係を脅かす可能性を排除するため、アスミ重工代表の明日見伝助を…いえ、悪魔アスモデウスを討伐して下さい」
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