第8話 銀狼は絆を叫ぶ-2
ブライティ王国の安全を騎士団と二分し、危険な領域にも恐れず飛び込み開拓する冒険者達の要、冒険者ギルド。
活気あふれる大通りの一角に、そのギルドハウスはある。
周囲の建物より一回り大きな2階建てではあるが威圧感は無い。
むしろ誰もが入りやすい雰囲気を感じるのは、冒険者たちの気質によるものだろうか?
「いらっしゃい。そろそろ来る頃だと思ってたわ」
玄関を抜け受付まで行くと、エルフ族でギルドのベテランであるメリッサが対応してくれた。
「待たせたな。ギルドの調子はどうだ?」
「まずまずね。でも新しく入った子達も順調に育っていて、良い流れなんじゃないかしら」
「そうか。さっき起きた騒ぎで駆け出しの2人組を見たが、見所があったぞ」
「駆け出しの2人組…きっとマークとフィオね。ギルドで噂の貴方が褒めてくれたと知ったら喜ぶでしょうね」
メリッサはそう言って、自分の子供が褒められたかのように顔を綻ばせた。
何でも屋<ブラム>は、ギルドに所属していないが王国内でのギルドの依頼も外注している。
こなして来た依頼が難易度の高い物が多かったため、冒険者達の間で<ブラム>は一定の評価を受けていると言った所だろう。
「……エリィは元気かしら?」
エルフであるメリッサは、ダークエルフであるエリィと因縁がある。
「ああ。心配しなくても大丈夫だ」
「そう、良かった…あ、聞いたわよ。ミーナちゃんと魔鉱具の出張修理を始めたんですって?」
湿っぽい空気になるのを避けてか、メリッサはこちらに話題を振ってきた。
「一応何でも屋だからな。ミーナが時間を取れる時に、依頼を受けて一緒に来てもらっている」
「ミーナちゃんもここに依頼をしに来た時は深刻な感じだったけど、こうして丸く収まって良かったわね」
「そうだな。俺にとっても得難い一件だった」
そう、ミーナを<ブラム>へ導いてくれたのはメリッサだ。
当然だが、俺がヴァンパイアである事を彼女は知っている。
「もうすぐガルドも執務が一段落すると思うわ。声を掛けてくるから待ってて」
メリッサは受付を他の職員に交代し、ガルドのいる2階の執務室に向かって行った。
手持ち無沙汰になった俺はギルド内を見渡す。
広い吹き抜けの1階には受付の他に酒場が併設されており、依頼を終えた冒険者達の交流の場になっている。
だが現在は人がまばらである。
活動時間帯と言う事もあるが、そもそも現在のギルドは所属冒険者が減ってしまっているのだ。
原因は魔王との決戦において、多くの冒険者がその命を捧げて散っていったためである。
「待たせたわね、執務室でガルドが待ってるわ」
俺が命に思いを馳せている間に、メリッサが戻ってきた。
「ああ、行ってくる」
◇◇◇◇◇
「失礼する」
執務室の扉を叩き中へと入ると、部屋に相応しい大きなデスク越しに巨漢が話しかけてきた。
「よお、アル。良く来たな!」
「要件はなんだ?」
「いきなり本題か。つれないな」
この気安く話しかけてきた男こそ、冒険者ギルドの長。ガルドだ。
俺と変わらないくらいの大柄な体躯を持ち、人間の中で最上位の実力を誇る髭面の中年だ。
…王国に5人しかいないS級冒険者の1人でもある。
「そのためにわざわざ昼間から出向いているのだ。早くしろ」
「分かったよ。それじゃあ始めに、銀狼団って知ってるか?」
「聞いた事はある。ギルドに所属せずに、2年ほど前から自警団をやっている者達だろう」
「そうだ。中々骨のあるやつらでな。最近はギルドの仕事をいくつか請け負ってもらっている」
「<ブラム>のようにか」
「外注と言う意味ではそうだが、流石に王国内での依頼に留めている。都市が絡む複雑な依頼は、<ブラム>にしか任せられないからな」
それでもガルドに目をかけられていると言う事は、信頼のおける集団であるという事だ。
「しかし、その銀狼団がどうしたんだ?」
「実は今回お前達に受けてもらいたい依頼の主が、その銀狼団の頭領なんだ」
なるほど、銀狼団の頭領自らか。
恐らくサイバネストが関わる依頼だろう。
「銀狼団だけで処理出来ない問題、と言う事だな?」
「その通りだ。元々この件は銀狼団結成当時から相談を受けていたんだが…」
…結成当時からだと?
その言葉に、大きな何かが渦巻くような奇妙な感覚を覚えた。
俺が困惑していると、執務室の扉がノックされた。
「ちょうど依頼人が来たようだな。おう、入って良いぞ!」
ガルドの言葉を合図に扉が開かれる。
そこに現れたのは、やや小柄な体型で頭に獣の耳の生えた女性であった。
「アタイは銀狼団頭領、明日見ギンガだ!よろしくな、何でも屋!」
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