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プロローグ 吸血鬼は昼間も忙しい

魔王も剣と魔法と科学で倒されましたが、俺は元気です。

 ブライティ王国の王都ブライトに広がる大草原に、巨大な科学都市サイバネストが突如現れてから全てが変わった。

 それまで膠着状態だった魔王との戦いも、この世界の技術体系も、そして最後のヴァンパイア・アルの日常も。


「か、勘弁してくだせえ!!」


 盗賊団の仲間を次々と倒され、最後の一人が魔鉱銃を放り投げてこちらに降参のポーズを取る。

 だがそれで勘弁したらこいつらはまた悪事を働くだろう。


「ほう、ならお前達はそうやって命乞いをした人々の事を見逃してやったのか?」

「それは…」

「ならば相応の罰を受けるがいい!」

「ひぃぃぃ!!!」


 俺は自身の巨躯を大きく動かし、出来るだけ恐怖を植え付けるような演技をしながら盗賊の顔を鷲掴みにし、生命力を死なない程度に吸い取った。

【エナジードレイン】

 ヴァンパイアやサキュバス等の、生命力エナジーを司る魔族が扱うスキルだ。

 俺はこいつらの血など絶対に吸わない。


「お疲れ様です。アル様」

「ああ、そちらもご苦労だった」


 俺の言葉に少し笑顔を見せながら、周囲を警戒していたエリィが寄ってきた。

 銀色の長髪で褐色のダークエルフであるエリィは、狩りの技術と魔法に秀でた頼れる俺の助手である。


「魔鉱銃とは厄介なものですね。このような連中にも大きな武力をもたらしてしまうなんて」

「確かにな…誰にでも魔物と戦う力を与えてくれる便利な武器ではあるが、それだけに悪用されやすい」


 歯がゆい事だがサイバネストからの技術は、より高度な生活や安全を作り出すと同時にそれを脅かす犯罪も作り出してしまっていた。

 今回の盗賊団も、魔鉱銃を手に入れてから近隣の村に大規模な襲撃をするようになったようで、騎士団や冒険者ギルドに防衛依頼が入っていた。

 しかし「根本的な解決」も必要と言う事で、自由に動けて実績のある俺達にもギルドからの依頼が回ってきた形だ。


「俺達は下請けじゃないんだがな」

「報酬()多いのですからよいのでは?」

「わかってるさ、エリィにはかなわんな」


 軽口を叩いたらすまし顔で返されてしまったが、やはり俺が何をしたいかエリィは良く理解してくれている。

 …さて、いくらギルドから信頼があるとは言えこちらは魔族だ。

 普段は魔法で正体を誤魔化してはいるが、盗賊の連中から戦闘の様子を王都の衛兵にでも話されると仕事上都合が悪い。

 

「よし、こいつらに制約の刻印を刻んだ。これで俺達の事は話せない」

「ではこの後は盗賊団をギルドに引き渡す手筈でよろしいですか?」

「ああ、頼んだぞ」


 エリィは俺の言葉にもう一度笑顔を見せる。

 そして風の魔法を使い、盗賊団を一斉にトラックと呼ばれるサイバネスト製の鉄の馬車に積み、その運転席に座った。

 後は彼女がギルドまで届けて、連中は王都に連行されて魔鉱銃の入手経路を取り調べられる事になる。

 今回植え付けた恐怖と刻印の力で、すぐ素直に自供して投獄されるだろう。

 

「行ってまいります。お客様がいらしても、怖がらせないようにしてくださいませ」 

「う…分かった。約束だからな」


 強面で大柄な男が威圧的だと客が怖がると言う事で、いつものように俺に釘を刺してからエリィは出発した。

 魔鉱燃料の匂いを吐き出しながら遠ざかっていくトラック。

 それを見送りながら、空の青さにあくびが出る。

 昼は俺には少しきつい…

 他に同族ヴァンパイアがいるとするなら、灰になって消滅してる所だろう。さっさと帰ろう。

 俺はバイクと呼ばれる二輪の鉄の馬に跨り、店への帰路に就いた。

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