姫カットが文化の盗用だ? やかましいわ!
(* ̄∇ ̄)ノ 奇才ノマが極論を述べる。
ドラマ『SHOGUN 将軍』が欧米では社会現象となる程の大人気に。ハリウッド製作のドラマなのに日本の時代劇。真田広之氏が主演とプロデューサーを務めた、セリフの七割も日本語で英語字幕という本格時代劇。
今になって時代劇が欧米で人気となるとは思わなかった。
是非ともエミー賞などいろいろな賞をとって欲しい。このドラマ『SHOGUN 将軍』が、日本の時代劇が最後に打ち上げる大花火になるのかもしれないのだから。
どうやらコロナのパンデミックからの巣籠もり需要で日本のアニメやマンガの人気が高まり、そこから妙に日本文化に興味を持つ西洋人が増えた様子。
ポーランドの名門大学では日本学科が経済学科などの他の科目を抑えて一番人気になったとか。
で、人気が出て多くの人が見るようになると、おかしなことを言い出す人もまた出てくるらしい。
「姫カットは日本の文化が生み出した歴史ある髪型で、日本人以外の民族が姫カットをするのは文化の盗用ではないのか?」
まてまてまてまて、ちょっと待て。
ひとつずつ明確にしていこうか。
■姫カット
姫カットとは、前髪を分厚くまっすぐに切りそろえ、サイドの鬢、もみあげにあたる髪も顔の範囲で概ね水平に切りそろえた髪型。
『姫カット』の由来としては、平安貴族の姫に似た髪形、という認識がもとであると思われる。
「頭は尼削ぎなるちごの、目に髪の覆へるをかきはやらで、うち傾きて物など見たるも、うつくし』
(枕草子145段)
1970年代には、シェール、麻丘めぐみ、早乙女愛などが姫カットを取り入れブームになるなど。
海外の美容業界の一部でも 『HIme Cut』などの表記で知られている。アニメに出てくる髪型としても知られていて、『anime hair』と呼ばれることも。
ドラマ『SHOGUN 将軍』は1600年代の日本を舞台にしたドラマ。なので出てくる女性は姫カット。
『SHOGUN 将軍』が人気になることで、ドラマの影響を受けて姫カットをする人が増えたとか。
それを見て、日本人以外の民族が姫カットをするのは文化の盗用ではないか? と言い出す人が現れたらしい。
■文化の盗用
文化盗用(cultural appropriation)とは、ある特定の文化圏の宗教や文化の要素を他の文化圏の人が流用する行為のこと。
一般的には社会的に強い立場にある人々が社会的に弱い立場にある人々、少数民族などの文化に対して行った場合に論争になりやすい。
対象となる文化的要素は、ファッション、ヘアスタイル、シンボル、言語、音楽など様々。
appropriationという単語には『私物化』といった意味があり、相手の許可を得ず相手のものを勝手に使うようなニュアンスを含んでいる。文化の盗用とは、文化の私物化とも言い変えられる行為のことになる。
しかし文化の盗用とは、現在では明確な定義が無いまま言葉の持つイメージで使われている。
なにが文化の盗用になるのかが分かりにくいが、事例を参照してみる。
■Kimono
2019年7月、アメリカの女優キム・カーダシアン氏が補正下着ブランドを作った。
このブランド名が『Kimono Solutionwear』
これが日本の伝統的な衣装である『着物』と同じ名前であることから文化の盗用になると波紋が広がる。商標登録の出願もしていたことが批判されることになる。
キム・カーダシアン氏は批判を受け止め、補正下着ブランド『Kimono Solutionwear』という名前は取り下げた。
海外の補正下着の名称がKimonoにされるとちょっと困るか。Kimono=パンツとブラジャーという認識が世界に広まると、着物とは下着のことという、なんて世の中になってしまうかもしれない。
例えば新しいリボン付きTバックをデザインし、このTバックを『鈴木』と命名して商標登録したとすると。
鈴木=リボン付きTバックという概念が広まるかもしれない。
「今日は気合い入れて勝負下着に鈴木を履いてきた」
という世の中になってしまうかもしれない。そうなったら全国の鈴木さんは怒っていいと思う。
だが、これは文化の盗用というよりは命名や商標登録の問題で少し違う気がする。
■ドレッドヘア
髪型で言うとドレッドヘア。ドレッドロックスという単語自体は1930年代のジャマイカのラスタファリ運動から発祥した。
なので、ジャマイカ人のソウルヘアスタイルがドレッドであり、ジャマイカ人以外がドレッドにすることは文化の盗用になる。ということになる。
2021年にはジャスティン・ビーバー氏がドレッドヘアを披露した際に、『文化の盗用なのではないか』という批判の声が上がった。
これに関してはとあるジャマイカ人が、
「なんでみんな俺に『白人がドレッドヘアにするのは文化の盗用ではないのか?』なんて聞くんだ? みんな髪が生えてるなら自分の好きな髪型にすればいいだろ」
と、言ってるのがおもしろい。
■姫カットは文化の盗用か?
姫カットが文化の盗用にあたるのかどうか。
先ずこの話そのものがバカバカしい。
日本人は外国人が姫カットをしていても怒ったりしない。むしろ、千年以上昔の平安時代の日本の髪型が、アレンジされて世界で流行するなんておもしろい、とか。
愛国心のある人は、日本の文化から生まれた姫カットが世界でリスペクトされていることが誇らしい、とか思うだろう。
逆に『姫カットを日本人以外がすることは日本文化の盗用だ』と、喚いて怒り狂う人がいたとしたら、そいつは日本人じゃ無い。
日本人はアメリカ人が姫カットしてても、ブラジル人が着物を着てても、イタリア人が鬼滅の刃のキャラクターの髪型をしていても、ドイツ人が葬送のフリーレンのコスプレをしていても、イギリス人がかめはめ波を撃っても気にしない。
むしろ喜んで楽しむ。
小説家になろう、で小説を書いている人も、キャラクターの髪型ひとつ考えるのにいちいち文化の盗用とか気にするのは面倒だろう。
どうにも文化の盗用という概念が理解しにくい。魔改造大好きな日本人には理解しがたい概念だ。
■カレーライス
カレーとはインドの料理。
タミル語のカリまたはカリルが語源とされ、その意味はスパイスで味付けされた野菜や肉の炒め物、となる。
多種類の香辛料を併用して食材に味付けをするインド料理のことがカレーと呼ばれる。
18世紀、インドを植民地としていたイギリスにインド料理が伝わる。
このときイギリス支配下にあったのがベンガル地方。
インドカレーと言えばナンのイメージがあるが、ベンガル地方では主食が米。そのため、イギリスに伝わったカレーもナンでは無く米にスパイスのスープをかけるカレーライスだったという。
明治時代にイギリスから日本にカレーが伝わる。カレーは栄養価が高く、調理が簡単で集団食に向いていたことから軍用食として広まることに。
戦後、昭和時代には学校の給食にもカレーライスが導入され人気メニューとなる。
2022年に『Taste Atlas』が『Best Traditional Food in the World(世界最高の伝統料理)』のトップ100を発表。
この1位が日本のカレーライス。
『TasteAtlas』はアメリカに拠点を置く旅行メディアであり、記事では世界中の伝統的な料理や地元の食材、本格的なレストランなどを掲載している。
なんで日本のカレーライスが? 明治からのもので歴史は浅そうなんだけど? それにもともとはインドの料理。それがなんで日本の伝統料理?
と、日本人の方が、なんでこうなった? と困惑するような世界ランキングになった。
■バウムクーヘン
バウムクーヘンとはドイツのお菓子。木の年輪をイメージさせるようなケーキ。
ところがこのバウムクーヘン、本物を日本で手に入れるのは難しいものになる。
バウムクーヘンとは国立ドイツ菓子協会により厳格に規定されている。
〇ベーキングパウダーを使用しない
〇油脂はバターのみ使用可能
〇材料の割合はバター・小麦粉・砂糖1に対して、卵を2とする
〇添加物を一切使用しない
これらの規定を守り、ドイツの製菓ゲゼレ、製菓マイスターといった国家資格を取得した職人が丁寧に手作りしたものがバウムクーヘン。
今回調べてみて初めて知った。本物のバウムクーヘンとは量産できないものらしい。
材料が限定され、しっとりとして食べ応えのあるものが真バウムクーヘン。知らずに日本で魔改造されたふんわりとした食感のものとか、チョコ味とか抹茶味の偽バウムクーヘンを美味しいと食べていたような。
自国の文化、と主張するにはこういった国家資格や規定が必要になるのかもしれない。
■アーサー王
「おい、日本人」
あ、なんでしょう? イギリス人さん?
「我らがアーサー王になにをしてくれているんだ? これはイギリスへの侮辱か?」
えっと、なんのことでしょう?
「とぼけるな! アーサー王とはブリトン人の伝説に語られる英雄、それを日本で勝手に女の子にするとはどういう了見だ!」
あー、やってましたね。でもほら、アホ毛もついて腹ペコ属性もついて可愛くなってるでしょ? エクスカリバーってビームも放ってメッチャ強くて。
「なんでもcawaiiにすれば許されると思うなよ! 日本人だって日本の歴史的な英雄、織田信長が他国で勝手に女体化されたらムカつくだろう!」
あ、それもうやってます。
「なに?」
『織田信奈の野望』著者:春日みかげ
織田信長が可愛くなりました。ラノベから始まってマンガになりアニメになり大人気でした。あとスロットにもなりました。
「これだから日本人は!」
えーと、シャルルマーニュ十二勇士のアストルフォは、ちゃんと男ですよ?
「男の娘じゃねえか! なんでだよ!? やっぱり日本人はイカれてやがる!!」
うーむ、他国から伝来したものを和魂洋才と魔改造してしまう日本人。私には文化の盗用という概念は、どうにもピンと来ない。著作権や商標権というなら少しは理解できそうだが。
■時代劇に黒人を出せ
「坂上田村麻呂は黒人でした」
(;  ̄〇 ̄) はあ?
「ドラマ『SHOGUN 将軍』の中で、黒人はどこにいるのでしょうか?
私がこの質問をしたのは、歴史的に正確ではなかったときの表現を見たいからではありません。私が尋ねたのは、1600年以前にも日本に黒人がいたからです」
( ; ̄ー ̄) なに言ってんのこの人?
「歴史家のジョン・G・ラッセルは、『排除された存在:将軍、吟遊詩人、用心棒、そして日本の黒人他者との遭遇』という論文を書きました 。
彼は、さまざまな立場で黒人が日本に到着したこと、そして一部の黒人が日本人の使用人を所有したり奴隷にしたりしたことを記録しました。
ショーグンが描いた時代の日本に黒人が存在したことには疑いの余地はありません。オランダ、スペイン、ポルトガル、フランスの船には黒人奴隷と乗組員が同行しました。
ドラマでは日本の船とヨーロッパの船を戦わせる海軍のシーンがいくつかあるため、黒人船員が歴史の正確さを反映するためにショーグンに登場することが期待されています」
こういう記事を書いた外国人記者がいた。過去の日本の征夷大将軍が黒人である、と。あのなあ。
珍説奇説トンデモ説を信じるのも、公表するのも自由で好きにすればいいが。あー、ノマの叔父も未だに、
「日本政府は宇宙人に操られているんだ」
とか言ってたりするし、本気で信じているが。
「異次元の少子化対策は異次元から来た宇宙人が考案したから、異次元の少子化対策と言うんだ。異次元の少子化対策ということ自体が、政府が宇宙人の言いなりだという証明なんだ」
まあ、宇宙人陰謀論でも地球平面説でも日本人は実は火星人説も、信じたい人は信じていればいい。
だが自身の思い込みを押し付ける為に他国の歴史を塗り替えよう、というのはどういうことだ?
戦国時代の日本に黒人の侍がいたとしたなら、その子孫は今どこで何をしている?
黒人の侍が活躍している、という物語が見たいなら『アフロサムライ』のような作品を作ればいい。
創作であるなら日本人は、『ニンジャスレイヤー』も『メカ・サムライ・エンパイア』も楽しんで見ることができる。
だが、エビデンスの不確かなトンデモ説をもとに、1600年代の日本を舞台にしたドラマに黒人を出せ、と言うのはこれこそ文化の盗用というものだろう。
こんな思い込みの押し付け会いを続けたなら、最後は殴り合って勝った方が正しいということにもなりかねない。
この記事を書いた記者は日本と戦争がしたいのだろうか? 戦勝国となれば敗戦国の歴史を塗り替えられるかもしれないから。
思想の自由とは、思い込みを押し付けて他人の邪魔をする自由のことでは無い筈だ。
まったく、人の家に乗り込んでインテリアに文句をつけるような真似は見苦しい。
日本人とは和魂洋才と他国のものを取り入れるのが好きな民族だ。
1543年に伝わった二丁の火縄銃をもとに、五年で国内で量産できるようにした、魔改造大好きなHENTAI民族だ。
だが、カレーはインドから伝わったものだと知っている。天ぷらはポルトガルから伝来したもので、ラーメンと餃子は中国発祥だと知っている。
発祥を書き換えたり、他国の歴史を塗り替えたりなどは、無知な恥知らずな行いだろう。
■まとめ
文化の盗用というのはいったいなんなのか。
どうやら少数民族の味方をしてインテリ振りたい人が使っている言葉のようだが。
民族の歴史も知らずに声高に言うのは、
『私は人の気持ちの分からない人間です』
と言っているようなもの。
「姫カットは日本の文化の盗用だ」
などと、言っている人は日本人の気持ちを代弁しているつもりで、日本人の気性も心意気も何も分かっていない。
勝手な『日本人はこう思っている筈だ』というイメージを投影されても困る。
ここで真田広之氏のインタビューから引用しよう。
「これまで、ハリウッド作品が描きがちな『変な日本』描写に対して、違和感や悔しさを覚えるご経験はありましたか?」
「はい、多々ありますね。悔しさ、それにもどかしさも感じていましたし、そんな経験がバネになって、『間違いを払拭したい』『いずれは正したい』という思いが、今回は自分のエネルギー源となり、全てを注ぎ込むことができたと自負しています」
ドラマ『SHOGUN 将軍』の大ヒットは、真田広之氏が長年溜め込んでいた、ハリウッドの変な日本のイメージを正したい、という情熱が要因だろう。
その結果に、
「衣装をはじめ日本文化のディテールが徹底しているところがすばらしい」
「このドラマを見て日本の歴史をもっと知りたいと思うようになった」
といったコメントがつくようになった。
これは文化の起源や発祥をいい加減に塗り替えたり、歴史を調べずに思い込みででっち上げていてはできないことだ。
そして見る目のある人にはいずれ本物が理解される。ドラマ『SHOGUN 将軍』の人気が、その証明ではないだろうか。
それにカワイイから真似してみたいとか、カッコいいからデザインに取り入れたいとか。こういったものを文化の盗用と言ってしまうことは、文化交流そのものの否定だろう。
そこに悪意も侮蔑も無いのであれば、やかましく目くじらを立てることでも無い。
文化の起源から根こそぎ奪おうという歴史修正主義者で無ければ、ちょっと真似するくらいたいしたことでは無い。
そこに敬意があれば、むしろ歓迎する。
他の文化圏の人からカッコいいと真似されるなら、カッコいいだろうと自慢になるのだから。
■おまけ 日本のトルコ風呂
(o;_ _)o ……えーと、その、トルコ風呂については、その、トルコの皆さん、ごめんなさい、としか言えません。
1984年、旧厚生省生活衛生局指導課の指導により、ソープランドに改名されました。
BGM
『みかんのうた』
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