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51.選定の魔眼 VS 石化の魔眼


「ソニアーッ、煙幕まだ使えるならありったけ撃ってくれ!」

「ひゃ……はひ!」


 よかった、無事だったらしい。

 暗がりでも魔眼レンズの影響で見えるのか追加で煙幕付きの矢が放たれる。周囲はもう一度スモークまみれだ。


「これじゃあ私達もネルが見えないよ。どうするんだいカンペー?」

「先生は暴走止まった後、すぐ診察できるよう待っといて」


 援護は十分。

 ただ歩くだけでいい。


「来ないで……来ないでよぉっ‼︎」


 絞り出される石化光線。

 直進する金の糸の道筋が、左斜め60°屈折する。俺はただ、その上を歩く。


「ピーちゃん、ネルちゃんまであと少し」

「ピィー!」


 こいつも暴走してる割になんも問題ねぇな……やっぱ魔物と人間で違うのかね。


「なんで来るの……! 邪魔なんだから、石にするんだよ⁉︎」

「なんでと言われても……」


 金色の軌跡は再び真っ直ぐ引き直され、ゆっくりと、ただゆっくりと歩く。体が揺れることすら計算しているように、石化攻撃を紙一重で避けていく。余計な回避行動をすれば、その時点で終わりだ。


「ひとりの女の子が苦しんでるから……なんて、クサい台詞は言わないけどさぁ」


 弾く必要も、ましてやネルを攻撃する必要もない。暴走させられて感情のままに力を振るってるだけだし。


「とりあえず、ネルがいなくなったら誰がピーの世話すんのって話」

「そ、それは……」

「お前のその眼だって、暴れたくて暴れてるわけでもないだろ? ピーの母ちゃんの姿見て、カッーとした……止め方もわからないし、止まったらピーの母ちゃんが持っていかれちまう。だから暴れてるだけだろ?」

「けど……だけどぉっ!!」


 変わらず道は真っ直ぐだと、魔眼レンズは示し続ける。逸れるな、躱すな、ただ前へと。


 不思議と恐怖はない。

 やっぱりおかしくなってるのかも。そりゃ目の前どころか俺もファンタジーになってるし。


「じゃなきゃ、今頃俺とピーは石になってんじゃねぇの? 多分」

「え…………」

「ほら、ご到着〜」


 石化の魔眼、その宿主のすぐ目の前。

 尚も選定の魔眼はレンズとネルを繋げ続ける。


「ほらピーちゃんいい加減降りて、首凝りそう」

「ピーピー!」


 人の面を踏みつけて、バジリスクの幼体は主人の元へ戻っていく。琥珀色の瞳は4つ。2つは赤く滲んでいる。


「俺は、いや……偉大かつ極めて優秀なお医者様であるアイナ先生はお前を助けるために魔眼を採ったんだ。ごめんな」

「わたし、を……?」

「あぁ、ちょっとだけゴロッとするぞ」


 抵抗する様子はない。

 俺の右手にある琥珀のレンズを構える。左手は石だが、支えるくらいはできる……というか、やる。


 医者の指示で、患者にレンズをつけることがある。要はウェイドのつけたレンズを外した時と逆だな。


 どっちにしても慣れた作業だ。

 それが魔眼の持ち主だとしても。


 大した緊張もなく石の左手でネルの瞼を下げ、

 

 いつもの動きのまま、右手で両目に魔眼レンズを装着させた。

 魔眼の力は、より強い魔眼の力によって抑制される。ネルの琥珀色の瞳は次第に輝きを弱めていき、ゆっくりと倒れていくのを、俺が受け止める。


「ぁ………………っ」

「うおぉとと⁉ ふぃ、終わったな…………アイナ~」

「本当にやりきったねカンペー、眼の方は大丈夫?」

「んぁ? なんともねーよ」

「よかった………………とにかく、お疲れさま」


 長いようで短かった石化の魔眼による波乱は、こうして幕を下ろした。




 ○魔蛇バジリスクの魔眼レンズ(暴走)

 石化の能力を持つバジリスクの眼を転写した魔眼レンズ。

 通常、適合者であれば石化能力を付与するが、適合しない場合は装用者を石に変えてしまう。石化の魔眼の宿主に装着した場合、石化能力を抑制する。



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