表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔眼フィッターはじめました〜あなたに合う魔眼レンズ、お選びします〜  作者: ムタムッタ
第3章 幼馴染み副騎士団長と結膜炎

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/80

36.選び定めて呪い尽くす



「うっ……うわぁっぁ──⁉︎」


 突如片目を押さえて叫ぶウェイド。

 薄暗い部屋の中で青年の目が、文字通り《《燃えている》》。


「クソ、クソッ! なんだ、熱い、痛いィッ‼︎」

「あーぁ、言わんこっちゃない」


 しかも他人が使ったレンズ付けやがって……いま見えた黒色の糸は選択するべきではないモノ、なのか?


「ぐあああぁぁぁぁ────」


 よほどの痛みなのか、ウェイドは跪いてのたうち回る。逃げるタイミングではあるんだが、どうやら『選定の魔眼』は逃走を選ばない。両目から走る金色の糸は、狐顔の青年の片目へ伸びている。


「しゃあねぇなぁ」


 幸い足は動くし、両手は前で縛られているだけだ。ゆっくりと立ち上がり、青年に歩み寄る。


「ちょっと失礼~」

「た、助けて……痛い……!」

「だぁからやめろって言ったのにぃ」


 片手をどけて火のついた右眼に手を伸ばす。痛みで強く瞼を閉じる片目を可動域の少ない両手でこじ開ける。オレンジ色の虹彩が激しく輝き、角膜を燃やす。


「こんなもん目につける方がどうかしてるわ……」

  

 自分で取れもしないのにつけるなっての。

 右手の親指と人差し指を合わせ、高熱の眼表面へ伸ばし、反射で手を引いてしまうより早く、レンズをつかみ取る。


「あつッ、いけど〜っと」

 

 眼球から取り出した瞬間、レンズがさらに熱を上げ指を焼く。火に包まれるより早く、レンズを投げ捨てた。

 

「うぅ……ぐぅッ…………なぜお前みたいな奴が、平然と……⁉︎」

「仕事なんでね」


 ホントは医者の役目だけど。

 こんなの同じ仕事してりゃ誰でも出来る。俺はスライムも倒せないし、兵士にも……ましてや騎士達にも勝つことはできない一般人だが、これくらいはできる。

 患者の前では平然としているのが普通なのだ。


「カンペーッ⁉︎」

「遅いぞせんせ。こいつ、魔眼の呪いで燃えちまった」

「すぐに治療する!」


 あとはお医者様の仕事だ。

 ったく、なんでレンズに振り回されなきゃならんのだ。


「これは……こうッ!」


 足元のレンズを踏みつけ、無理矢理引き裂いた。


「あーっ! 私の作品がぁー⁉︎」

「悪用防止だ、ほらほら治療治療。がんばれせんせ」


 処置が早かったおかげで、痛みにのたうち回る声も次第に小さくなっていった。後から駆けつけたイヴに真実を伝えると、目を丸くしていた。


「な、なんだと⁉︎ それじゃウェイドはわたしを狙っていたのか!」

「雑にまとめるとそうなる」

「まさか……この優秀な男が……?」


 治療を受けるウェイドの姿を見ながら狼狽える副団長。アイナ一直線過ぎて他のことに鈍感すぎねぇかなこの人……


「んで、どうすんだ? 『はやり目』の原因菌ウィルスもウェイドが持って来たらしいけど」

「む、むぅ……と、ともかく交流戦は終わったから一旦表に戻ろう」


 イヴがウェイドに肩を貸しつつ、部屋を後にする。試合後のリング周辺に戻ると、ローレンス姉妹が出迎えた。


「なにかトラブルでもあったのかしら?」

「あ、あぁ……少し、な」


 片目に包帯を巻いたウェイドを見るなり、姉妹は口角を上げた。それはまるで、見下すような視線。


「なになに、内輪揉めぇ〜?」

「《《元同僚》》が迷惑をかけたようですわね」

「い、いや別に……問題はないが」

「魔眼もないのに目ケガしたのぉ?」

「情けないですわねぇ、魔眼がなくて騎士団で成り上がれず、こちらでも大した結果も出せず……ぷっ。あら、失礼」


 ローレンス姉妹の嘲笑に、帝国の面々がいやーな笑みを浮かべていた。どうやら最初からウェイドを見下していたようだ。


「この地方で一番大きい国ってだけなんだけどね、やっぱりやだなぁこの態度」

「なーんかムカつくなこいつら」


 アイナと考えは同じ。

 しかし腕っぷし十分な騎士団をさすがに殴るわけにはいかないし、口撃しても効かなさそうだしなぁ。

 傍らのウェイドは諦めたように俯いた。


「ハハ、ここでも結局何者にもなれないか……」

「魔眼がなきゃ何かになれないって考えがおかしいんだよ……ぉ?」


 ウェイドの懐、銀製の魔眼レンズの容器へ金の糸が伸びる。黒くないってことは、正解ってことなんだろうが。


「しつれ〜い」

「な、なんですか⁈」

「取ったもん返せっつうの」


 静かに容器を開け、残った片目分の『炎猩々の魔眼レンズ』を取り出す。選定の魔眼の示す糸は、レンズと俺の左目を繋げる。


 え……レンズの上にレンズつけろってか? しかも他人の使ってた奴を⁉︎


「カンペー?」

「えぇい、魔眼を信じるぜ!」


 ブラインドで左目へオレンジ色のレンズを装着する。


 右目で捉えるはローレンス姉妹、

 そして左目で2人を見ると、


 2人の髪に火がついた。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ