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「明葉くん、花火楽しみだね。」


「ああ。花火なんてしばらく見てないから凄え楽しみ!」


「そうなんだ。明葉くん、写真撮るでしょ?もし良かったら今度撮った写真見せてくれない?」


「良いよ!舞花の事もいっぱい撮ってやる!」


「ありがとう。」


***

「明葉!そろそろ屋上行くぞ!あれ、舞花は?」


「あ、佑。舞花なら下にジュース買いに行ってるよ。そのまま屋上行くって言ってたし、先に向かっとこ。」


「ああ!そうだな。」


道中、明葉は何度かこちらを見ていた。

何か言いたい事があるのだろうか?

そう思い、明葉に聞いた。


「明葉、何か言いたいことあるのか?」


「俺、……舞花の事が好き。」


突然の告白に少し驚いたが、何となくしっくりと来た。


「そっか。で、告白したのか?」


「うん。したよ。」


「舞花は何て?」


「舞花も好きだって言ってくれた。」


「両想いじゃねえか!おめでとう!」


そっか、舞花と明葉が……

瀬上と燈葵の気持ちを知っているが、舞花自身が好きになったのは明葉だから、俺は2人を応援する。


「明葉」


「何?」


「舞花の事、よろしくな!」


「ああ!」


明葉はぎこちなくそう笑った。


「明葉なら、舞花の事も任せられるしな!」


俺が笑ってみせると、明葉は少し顔を背けた。

照れているのだろうか?舞花も時々言っているが、やはり明葉は年下なんだという事を実感した。


屋上に着くと、意外にも子供が多く居た。

明葉くらいの年齢の子もいれば、まだ小学校に上がっていないような小さい子も居た。


「明葉!成宮!遅えよ。」


「優斗、舞花と燈葵は?」


「あっちで射的してる。舞花めっちゃくちゃ射的上手いんだけど!燈葵と勝負してるらしい。」


「それ、毎回してんぞ。舞花は縁日のゲームだけは凄え強いから。」


俺の言葉に瀬上も明葉も意外そうに舞花達の方を見た。


「明葉もやって来たら?」


「俺、射的とかした事ない。」


「まあ、明葉は祭り自体あんまり参加してなかったもんな?」


「じゃあいい機会なんだし、舞花と勝負して来たらいいじゃん。舞花喜ぶと思うぞ?」


「うん。行ってくる!」


明葉はそう言って舞花達のいる方は向かった。


「成宮、明葉何か言ってたか?」


瀬上が俺の隣に立って聞いた。

さっき明葉が言っていた事についてか、と思い頷いた。


「言ったのか!?舞花には……?」


告った(いった)って。」


「前と同じで舞花には隠すつもりなんだと思ってた。」


「前って、いつの事?」


「出会ったばっかの頃、明葉が病気の事隠してただろ?それと同じ感じで今回も……」


次第に瀬上との会話が噛み合わなくなってきている気がする。


「瀬上が話してるのって、明葉が舞花に告った事だよな?」


念の為に確認してみると、瀬上は驚いた表情をした。


「明葉、告白したんか!?」


最近分かった。

瀬上は焦ったり、気持ちが昂ると関西弁が出る。


「知らなかったのか?」


「ああ。明葉が言うとは思わんかったから。だって明葉……」


瀬上はそこで言葉を詰まらせた。

明葉に口止めされているのかもしれない。

それでも、俺は聞きたいと思った。何だか少し、嫌な予感がする。こういう時の俺の勘はよく当たってしまう。


「明葉が、どうしたんだよ。」


「明葉、見た目やったら元気そうに見えるやろ?」


「ああ、普通に元気そうだな。」


「でも、ここ数ヶ月で急激に症状が悪化して来てんねん。前に、明葉の病気について簡単には話したやろ?」


「ああ。脳に腫瘍があるんだったよな?」


「そう。でもその腫瘍が大きくなってるらしい。幸い、まだ命には関わってないけど。それで、腫瘍を取り除けたら完治できる可能性が高いって先生(主治医)に言われて、海外の病院への転院を勧められてんねん。その病院、凄腕の脳外科医が居るらしくて。」


ひと通り瀬上の話を聞き終わると、長い沈黙が訪れた。


「転院、するよな?完治出来るんだろ?」


「それが、明葉のやつ渋ってるっぽくて。自分が治療に耐えられたのは周りの環境あってこそやからって。」


「瀬上、舞花は多分この事知らないと思う。言った方が良いか?」


瀬上は首を横に振った。


「俺達が言うより、明葉から言うのを待った方が舞花にとっても良いと思う。第一、本人が海外に行きたくないって言ってるから。」


瀬上は呆れたようにそう言った。


「俺らは見守ることしか出来ねえのか。」


「成宮って、つくづく舞花の兄っぽいよな。」


「いや俺、舞花のお兄ちゃんだから。」


***


「舞花上手すぎ!意外すぎるんだけど!」


「そうかな?逆に明葉くんは下手だね。」


「初めてやったんだから仕方ないじゃん!でも、燈葵になら勝てる気がする。」


「じゃあ僕と勝負する?」


明葉くんは私との勝負に負けて、燈葵と勝負することにしたらしい。


「絶対負けないから!」


そんな宣言の5分後……


「だーっ!めっちゃ悔しいーー!あれ絶対当たってたやん!!」


一番小さい景品しか取れなかった明葉くんは文句を垂れている。


「射的は倒さないといけないからね。」


勝ち誇ったように明葉くんにそう言った燈葵も、明葉くんと同じくらいの景品を3個取っただけだった。


「燈葵、特賞を取った私の前でそんな勝ち誇った顔してもね〜」


「いつか舞花にも勝つから。」


そんな事を話しているうちに、辺りは暗くなっていた。


「瀬上さん、椅子ご用意しましたので座って下さいね。皆さんもどうぞ。」


看護師さんが人数分の椅子を用意して下さった為、ありがたく使わせてもらった。


「ねえ瀬上、なんでサラッと舞花の隣に座ろうとしてるの?」


「天神こそ、さりげなく舞花の隣を取ろうとしてねえか?」


燈葵と優斗くんの言い合いを他所に、私は明葉くんと佑の間に座った。


花火が始まると、明葉くんはカメラを構えた。


「俺も撮ろー」


と言いながら、佑もスマホを出して花火の写真を撮り始めた。私もスマホを取り出した。

今、この瞬間にしか見られない景色を撮る為に。


***

「花火、綺麗だったね〜」


「うん!めっちゃ綺麗だった!」


「明葉くん、どんな写真撮ったの?見せて〜!」


「えっ、ちょっと待って、」


明葉くんは少し焦ったように私からカメラを遠ざけた。


「どうしたの?」


「え、何が?」


明葉くんがこんなにも分かりやすく動揺するのは珍しい。


「佑!明葉くんの写真見た?」


「いや、撮った写真は見てないけど舞花の方にカメラを向けてるのは見たぞ。」


「何でバラすんだよ!」


明葉くんは焦ったように佑に言った。


「逆に何で隠そうとしてんだよ。」


「だって、花火よりも舞花の方撮ってるなんて、舞花のこと好きすぎるみたいじゃん!」


「違うのか?」


「違わないけど!舞花にバレるんはなんか嫌や!」


「違わない」と即答する明葉くんの言葉を聞いて、少し照れくさくなった。


「最近の明葉ってなんか年相応って感じで安心するな。」


「それ、褒めてんの?」


「褒めては、ないかな?で、花火の写真は撮ったのか?」


「……2、3枚くらいは撮ったよ。」


「少なっ!今日のメイン、花火じゃなくて舞花の撮影会だろ!」


「佑、あんまりからかわないで。明葉くん、私の写真たくさん撮ってくれるって言ってくれてたんだよ。明葉くん、花火の写真は私が撮ったのあげるね。」


しばらく屋上で話していると看護師さんにそろそろ屋上を閉めると言われ、急いで室内に戻った。


「じゃあ、また明日、明葉くん。」


「うん。あ!明日の朝は母さん達が来るから、」


「分かった。お昼から来るね。」


「うん、ありがとう。また明日、舞花。燈葵と佑もまたな!優斗は明日母さん達と朝から来るんやっけ?」


「ああ。」


「じゃあ漫画の続き持ってきて。」


「へいへい。」


病院を後にして、私達は帰路についた。


「あ、俺ちょっと100均寄っても良い?シャー芯買いたくて。」


「あ、俺もルーズリーフ無くなりかけてるんだった。舞花と燈葵、先に帰っといて。」


優斗くんと佑が100円ショップに向かい、燈葵と2人きりになった。やっと伝えることが出来る。


「燈葵!私、明葉くんの事好きなの。だから燈葵の気持ちには答えられない。」


「そっか。まあ、知ってたけどね。明葉からも聞いてるし。それで、瀬上には?もう話したの?」


「まだ。」


燈葵は立ち止まって私の顔を数秒見つめた。


「舞花が誰のことを好きでも僕は舞花が好き。この先、舞花への"好き"の種類が変わるかもしれないけど舞花のことはこれから先も絶対に大好きだから。何かあったらいつでも頼ってね。」


「うん!ありがとう、燈葵。」


「あ、もし明葉に泣かされたらすぐに僕のところに来てね。僕が笑顔にさせてあげるから。」


「優しいね、燈葵は。」


「今更気付いたの?」


「ううん。ずっと昔から知ってるよ。」


私の言葉に、燈葵は少年のような少し幼さの残る笑顔を浮かべた。

お待たせしました!久しぶりの投稿です!


次回もお楽しみに!

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