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「まあ、無い事は無いけど。」


「じゃあ燈葵から質問して良いぞ。」


佑がそう言うと、燈葵は優斗くんに質問した。


「瀬上、舞花のどこを好きになったの?」


「全部だけど、強いて言えばいつも笑顔で誰かを楽しませてくれるところかな。」


「へえ。思ったよりちゃんと舞花の事知ってるんだ。」


燈葵は優斗くんの質問に対してそう返した。


「じゃあ、次は俺から。明葉と瀬上って時々関西弁喋ってるけど、関西出身なのか?」


「ああ。奈良から来た。」


「へえ〜、奈良か。来年には修学旅行で行けるな。案内してくれよ。」


「任せろ!」


他にも色々質問して行き、明葉くんと優斗くん側からの質問に変わった。


「舞花と天神と成宮っていつからの幼馴染なんだ?」


そう聞いてきたのは優斗くんだ。


「皆んな生まれた時から一緒だよ。家が三軒並んで隣だから。」


「3人の誕生日は?」


「俺は4月2日。だから今はもう16だ。」


「僕は11月4日。」


「私は6月5日。」


私達がそう答えると明葉くんが言った。


「えっ、舞花もう直ぐじゃん。何かお祝いしないとだな。」


「うーん、特別なお祝いとかはいらないから普通にいつもみたいに一緒に喋ったりしたいな。」


「じゃあ美味いお菓子用意しとく。舞花って何のお菓子が好き?」


「チョコレート。」


「分かった。楽しみにしといて。美味しいチョコ探すから。」


そしてピザも食べ終わり、自然公園の休憩所に移動した。休憩所の前にはアスレチックがあり佑と優斗くんが行きたそうにソワソワとしていた。


「私、ここで待ってるから行ってきたら?」


佑にそう言うと嬉しそうに頷いた。

佑は基本的に身体を動かすのが大好きだからアスレチックを目の前に行きたくなるのは分かっていた。


「優斗、燈葵、行くぞ〜!」


佑は優斗くんと燈葵を引っ張って行った。


「おう!」


「何で僕も……」


と言いながらも燈葵は優斗くんと一緒について行った。


「はあ〜、凄え楽しい。」


一緒に休憩所の影にあるベンチに座っている明葉くんは背もたれにもたれ掛かりながらそう言った。


「確かにこうして皆んなで公園に来るのって楽しいね。それにね、明葉くん。私、明葉くんと出会ってから毎日本当に楽しいよ。ありがとう。」


「それ、さっきも同じような事聞いた。」


「ふふっ、明葉くんって案外照れ屋?自分の事をイケメンっていうのは躊躇いないのに。」


「別に照れ屋じゃねーし。俺がイケメンなのは事実だし?」


普段は大人っぽい明葉くんもこういう所は子供だ。


「やっぱり明葉くんは二つ下なんだね。」


「年下扱いすんなよ。」


「えーっ、でも明葉くん、偶に可愛いよね。」


「可愛くねーよ、かっこいいんだよ!」


そして日が暮れる前に明葉くんは病院へ戻った。


***

「学級委員、今日居残りな。生徒総会の会議があるそうだ。」


今日は佑と燈葵も一緒に明葉くんのお見舞いに行く約束をしていた日。


「燈葵、明葉くんに遅れるって伝えといて。」


「分かった。仕方がないから僕は瀬上と一緒に行くよ。良いよね、瀬上?」


「ああ。仕方がないからは余計だけどな。」


燈葵と優斗くんには先に明葉くんの病院に行って貰った。


「自分で立候補したんだから、学級委員の仕事も頑張らないと。」


「そんなに気張らなくても大丈夫だ。舞花の場合、気張ると無理するんだから肩の力抜けって。」


本当に、佑が一緒の委員会に入ってくれて良かった。


「舞花にとっては委員会活動も憧れだったんだろ?」


「うん!」


そして委員会が終わり、急いで明葉くんの病院に向かった。


「明葉くん、待たせてごめんね!」


「走って来たのか?別にそんなに急がなくても面会時間はまだあるよ。」


「少しでも早く会いたくて。」


私がそう言うと明葉くんだけで無く先に居た優斗くんと燈葵も驚いたような顔をした。


「俺も早く明葉に会いたくて舞花と一緒にダッシュして来た。」


佑も続いてそう言うと、明葉くんは嬉しそうに微笑んだ。


「舞花、佑。優斗と燈葵から聞いた。学級委員何だよな?凄え!かっけえ!」


「ありがとう。」


「本当は僕と舞花で学級委員になる予定だったんだけどね。」


燈葵は佑を見ながらそう言った。


「燈葵ってつくづくじゃんけん弱いよな。」


「知っててじゃんけんで決めるのはおかしいと思う。」


2人の様子を見た明葉くんは首を傾げながら聞いてきた。


「舞花と燈葵って付き合ってるのか?」


「いや、僕は舞花に振られ続けてるから。明葉は応援してくれる?」


燈葵はそう答えた。


「え〜、どうしよっかな〜、てか優斗も舞花の事好きなんだろ?ライバルじゃん。」


「そうだよ。出来ればこれ以上ライバルが増えて欲しく無いんだけどな。」


「どういう意味?」


「明葉、そのまま(気付かない)で居てね。」


燈葵はにっこりと笑いながらそう言った。


 翌日、燈葵はピアノのレッスン、佑は祈ちゃんの買い出しに付き合わされて居て、私1人で明葉くんの病院に向かった。


「おはよう、明葉くん。」


「おはよう、舞花。今日は1人なんだ。」


「うん。燈葵と佑は用事があって。私1人じゃいつもよりは静かかもしれないけど。」


「いや、丁度佐藤の爺ちゃんから花壇の花が綺麗に咲いたって聞いたから舞花に見せたかったんだ。それに明日は舞花の誕生日だよな?これ、渡したくて。」


明葉くんが渡してくれたのはコンビニに売っている少し高いチョコレート。


「これ、数少ないから燈葵とか佑とか優斗が居たら舞花分けようとするだろ?」


「ありがとう!明葉くん。折角なんだから2人で食べようよ。」


「言うと思った〜。良いけど先に花壇行こうぜ。」


明葉くんが案内してくれた花壇にはリナリアの花が咲いていた。


「あ!佐藤の爺ちゃん、前に話した舞花連れて来たよ!」


「ああ、明葉くんのガールフレンドかぁ。」


「違うって!」


明葉くんの反論をスルーして佐藤さんは挨拶してくれた。


「初めまして。花壇の世話を任されている佐藤です。明葉くんの事よろしく頼みます。」


「初めまして。七原舞花です。綺麗なリナリアですね。」


「舞花ちゃん、明葉くんから聞いているよ。舞う花で舞花なんだってねぇ。良い名前だ。」


「ありがとうございます。」


「明葉くん、可愛らしいガールフレンドだねぇ。」


「だから違うって!」


明葉くんは必死に否定していた。


「あっちにはバラも咲いているよ。良かったら何本かあげるよ。さっき木を整えた時に数本切ってしまったからね。」


佐藤さんはバラの枝のトゲを取りながら私と明葉くんに聞いてきた。


「2人とも、バラには本数によって違う意味の花言葉があるのを知っているかい?」


「いや、俺は初めて聞いた。」


「私は聞いた事はありますが、意味までは……」


「明葉くんは3本、舞花ちゃんは7本かなぁ。」


佐藤さんは明葉くんに3本の薔薇を、私には7本の薔薇を渡してくれた。


「意味は自分で調べてみると良い。」


「わかりました。ありがとうございます。」


そして一度明葉くんの病室に戻った。


「花瓶が確かあった筈……あ、ほら!」


「私、水入れてくるね。」


「うん。ありがとう。」


私は病室の外にある水道まで行き、花瓶に水を入れて病室へと戻った。


「舞花、前にも言ったけど、毎日来てくれてありがとう。でも、舞花も予定とかあるよな?別に無理して来なくても……」


「無理なんかしてないよ。私が来たくて来てるだけだから。」


そして私はひたすら学校であった事や、最近見つけた植物など、色々な事を明葉くんに話していた。


***

舞花は話し疲れたようで、ベッドに顔を埋めて寝てしまった。寝顔は意外に大人っぽくて年上なんだという事を改めて自覚させられた。


舞花と居ると気持ちが和やかになって心地良い。とても居心地が良い。そう自覚したのはここ最近の事だ。

病気に対する不安や恐怖を舞花と居る時は忘れる事ができる。


毎日会いに来てくれてるのは嬉しいけど、舞花にとって負担になっていないか気になって仕方がない。でも、嬉しそうな顔で毎日の事を教えてくれるあの時間が消えるのは嫌だ。そんな矛盾した考えを持っていた。


「舞花と居ると病気なんて無くなりそう。」


気付けばポツリとそう漏らしていた。

2つ上のこの人は俺を強くしてくれる。


あ、そうだ。舞花が寝てる間にさっき佐藤の爺ちゃんが言ってた薔薇の花言葉を調べてみよう。


そう思い立って植物図鑑を開いた。

俺はスマホを持っていないから暇つぶしとして色々な本を優斗に待って来て貰っている。

最近は植物に関しての本が多く、この図鑑も一昨日に持ってきてもらったばかりだ。


「バ……ラ、あった。えーと、」


《薔薇は本数や色によって異なる花言葉を持ちます。》


図鑑には佐藤の爺ちゃんが言っていたような事が書かれていた。


《1本:「ひとめぼれ」「あなたしかいない」

 2本:「この世界にはあなたと私2人だけ」

 3本:「愛しています」「告白」》


「3本:『愛しています』『告白』……佐藤の爺ちゃん、恋愛マスターとか言ってたっけ。」


俺はうっすらとしか見えなかったものに輪郭が見えるようになった。俺、舞花の事、好きなのか。


「ん?あれ、私もしかして寝てた?ごめんね。」


「いや、別に……良いよ。」


「どうしたの?明葉くん。」


物凄くタイミング悪く、舞花が目を覚ました。俺は急いで図鑑を閉じて枕の下に隠した。


「何でもない。舞花、昼はどうするんだ?」


「一階にあるコンビニでおにぎり買ってくるよ。ちょっと待ってて。」


「分かった。」


舞花が病室を出て行った後、俺は大きな溜息をついた。

舞花にはまだバレてねえよな?そう思いながら窓の外を見つめた。


***

おにぎりを買い、ついでに飲み物も買って明葉くんの待つ病室に向かう途中、近くのフラワーショップのポスターが貼ってあった。ポスターには黄色い薔薇の写真が写っていた。


「そう言えば、佐藤さんから貰った薔薇にも花言葉があったんだっけ。」


そのポスターを見て、佐藤さんから貰った薔薇の花を思い出した。


本数によって色が違うと言っていたけれど……


スマホを出して《薔薇 本数 花言葉》と検索してみた。


《1本:「ひとめぼれ」「あなたしかいない」

 2本:「この世界にはあなたと私2人だけ」

 ……

 7本:「ひそやかな愛」》


「ひそやかな……愛!?」


思わず大きな声を出してしまい、近くに居る人達を驚かせてしまった。


「いきなり大声出してすみません。」


そう謝りながら場所を移動した。


愛って、どういう意味?誰に対して?

そんな疑問を並べながらも心の中では気付いていた。


「佐藤さん、凄いな」


自分でもまともに自覚していなかったこの感情を、あんな少しの時間で見抜く事が出来るなんて。


そう言えば、明葉くんは3本貰ってたな。


3本の意味は……『愛しています』『告白』


「明葉くんも、好きな人居たんだ。」


そして何事も無かったように、勘付かれないように病室の扉を開けた。

次回もお楽しみに!

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