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「舞花ー!佑!おはよう!」
「明葉くん、優斗くん、おはよう。」
自然公園は広いため、前に来たばかりなのに楽しみだと感じる。
「あれ、舞花カメラ買ったの?」
明葉くんがそう聞いた。
「ううん、お母さんのお下がり。明葉くんのカメラ程良いものでは無いけど。」
明葉くんのカメラは一眼レフで私のカメラはコンパクトデジタルカメラ。所謂コンデジ。しかも10年以上前のもの。
「やっぱり、向日葵からだな!」
明葉くんを向日葵の咲いている所まで案内した。
「凄え〜、俺より高え!」
明葉くんは色々な角度から向日葵の写真を撮った。
「舞花、向日葵の下に立って。」
「分かった。」
「うん、良い感じ。」
明葉くんは何枚か撮り終えると別の場所へ移動した。
「明葉くんも写ればいいのに……」
「俺は撮るのが好きだから。それに、被写体が舞花の方が後で見る時楽しいから。」
「それってどういう意味?」
「そのまま。」
明葉くんは爽やかな表情でそう言った。
彼と出会ってからしばらく経ったがまだまだ知らない表情がある。私は無意識にシャッターを切っていた。
「ちょ、舞花。折角なら一番イケメンに見える角度で撮ってくれよ!」
明葉くんはブツブツと文句を言っているがどの角度から見ても彼の顔立ちの良さは変わらないと思う。
「大丈夫だよ。ちゃんとかっこよく撮れてるから。……多分。」
「今、多分って言ったな?聞こえたからな!確かに俺はイケメンだけど良い角度と悪い角度は存在するんだよ。それに……」
長々と語る明葉くん。
私は右から左へと聞き流しているとある事に気付いた。
「佑と優斗くんは……?」
いつの間にか2人と逸れていた。
「本当だ。居ないな。……探す?」
「ごめん、私体力無いから多分もう動けない。」
「……俺も。そろそろやばい。」
今何時だろう?と思いスマホを見ると明葉くんが指を指して「それだー!」と叫んだ。
「あ、……ちょっと佑に電話するね。」
気付かなかった自分が恥ずかしく、明葉くんから顔を逸らして佑に電話を掛けた。
***
「舞花〜、明葉〜!」
舞花と明葉と逸れ、瀬上と一緒に2人を探していた。
「明葉の野郎、後でちゃんと叱らないとな。」
心の中で(明葉、御愁傷様)と思いながら2人の姿がないか辺りを見た。2人して体力無いからそう遠くに行ってる事はないと思うけど……
「ちょっと舞花に電話掛けてみる。」
俺がそう言うと瀬上が
「何で最初からそうしなかったんだよ、」
と呆れたように言った。
いや、近くに居るかもと思ってたし、普通に面倒くさかったから。どうせ2人とも俺らの存在なんて気にせず楽しんでるだろうし……
心の中で言い訳してると丁度舞花から電話がかかって来た。
「舞花?今どこ?」
『ノウゼンカズラが咲いている所にあるベンチで明葉くんと休憩してる。佑達はどこ?』
「向日葵んとこ。取り敢えず今からそっち向かうからそこ離れるなよ?」
『はーい』
電話を切り、隣に居る瀬上に言った。
「2人、ノウゼンカズラ?っていう植物の近くのベンチに座ってるらしい。」
「ノウゼンカズラって何?」
「花じゃね?」
***
「佑、何て言ってた?」
隣に座る明葉くんにそう聞かれた。
「今からこっちに向かうからここで待ってて、だって。」
「そっか。……あのさ、」
「どうしたの?」
今日撮った写真を見返していると明葉くんが何かを言いかけた。
「あ、りがと。」
「何が?」
「色々!毎日写真見せに来てくれたり、俺の話とかいつも聞いてくれて。今日だって写真撮るのに付き合ってくれて。」
「明葉くん、照れてる?」
ありがとうを伝える為に照れ臭いような表情を浮かべた彼は年相応の男の子に見えた。
「照れてない!……なあ、舞花。舞花は何でこんなに色々してくれるんだ?」
突然明葉くんがそう聞いて来た。
「……強いて言えば、明葉くんといるのが楽しいから、かな?」
「俺も、舞花といるの楽しいよ。もちろん佑や燈葵と話すのも楽しいけどな!」
「それに、私も病院にいた頃は毎日同じ景色で飽き飽きしてたから。」
「そっか。」
そんな事を話していると、優斗くんと佑が来た。
「やっと見つかった。迷子の2人。」
「別に迷子じゃねえし!」
「はいはい、どうでも良いから。そう言えば天神は今日来れそうなのか?」
優斗くんにそう聞かれ、燈葵からのメッセージが来ていないか確認したが、何も無かった。
「どうなんだろう?休憩時間があるとすればそろそろだと思うんだけど……」
その時丁度、メッセージアプリの通知音が鳴った。
「……燈葵、来れるって!」
「そろそろお昼だし、皆んなで何か食うか?」
「うん!そうだね。」
「なんか、親睦会みたいだな。」
「今更必要?」
優斗くんの言葉に明葉くんがそう返した。
「まあ、更に仲良くなるには必要じゃね?俺、明葉の事は結構色々分かって来たけど、瀬上の事はあんまり知らねえし。」
「確かにそうだな。」
そして公園にあるキッチンカーでピザを買った。
「わっ!」
「うわぁ!びっくりした〜!普通に声かけてよ、燈葵。」
「ごめんね、つい。舞花の反応可愛くて面白いから。」
公園に着いたと燈葵から連絡があり、返信しようとしていると、後ろから驚かされた。
「燈葵、さっさと座れ〜、ピザが冷める。」
「分かってるよ。ねえ、舞花。午前にめちゃくちゃ集中して頑張ったおかげで今日は午後の練習が休みになったからお昼食べ終わったら一緒に回ろうね。」
「うん、"皆んなで一緒に"ね。」
「舞花って案外アプローチ躱すの慣れてるよね。まあ、そんな舞花も好きなんだけど。」
燈葵はそんな事を言うけれど、慣れているわけではない。燈葵と優斗くんは幼馴染だから接し方に慣れているだけであって、「可愛い」や「好き」という言葉にはむず痒くなってしまう。
「折角の親睦会だから質問タイム〜!俺から明葉と瀬上に質問していくから2人はそれに答えてくれ。10個くらい質問したらそっちが俺らに質問な。」
「はっ?親睦会?今初めて聞いたんだけど。」
「まあ、燈葵も2人に聞きたい事あるだろ?」
次回もお楽しみに!
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