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「佑も燈葵もさっきはありがとう。学級委員なんて初めてだから知ってる人が相手の方がやりやすいから。」


「僕、舞花と同じ委員になりたかったんだけど。」


「そんなの俺だって。舞花が別の委員になってたら心配で倒れそう。」


「本当に佑はお兄ちゃんだよね。」


と私達が話していると、燈葵のファンらしき女の子達が話しかけて来た。


「あの、天神くんと七原さんと成宮くんってどんな関係なんですか?」


「幼馴染」

「妹と弟」

「……特別」


皆んなでバラバラのことを答えたせいで質問してきた子達は???と言う顔をしていた。


「どうして2人ともややこしい言い方するの?普通に幼馴染で良いよ。」


「どうしてって言われても、俺にとって舞花は妹だし、燈葵は弟だから。」


「ただの幼馴染なんて言葉で片付けられないけど?だってもっと特別な存在だから。」


燈葵の言葉に質問して来た子達は、


「やっぱり付き合ってるんですね。」

「さっきも、2人で七原さんを取り合ってましたし。」


と言った。


「ち、違います。私彼氏どころか好きな人も居ません!」


私の告白に質問しに来た2人だけでなく、佑と燈葵もポカンとしていた。


「第一、2人の事は好きだけどそれは友達としての感情だから。」


「そ、そうだったんですね。なんかすみません。」


2人はそそくさと離れて行った。


(絶対変な人って思われた……)


「舞花、好きな人居ないって本当?」


「え、うん。本当だよ。今までも居た事ないし。」


私がそう言うと、心なしか燈葵が嬉しそうに顔を綻ばした。


「そうだよな、俺でさえ初恋はまだなのに舞花に先越されてたら何か負けた気分になる。」


「「「えっ!?」」」


佑の言葉に反応したのは私と燈葵だけじゃなく、瀬上くんもだった。


「何だよみんな揃って、」


「いや、成宮って意外とピュアなんだな。デートとかもした事ないのか?手繋いだりとか。」


「ああ。あ、でも舞花とは何度もあるけど。舞花となら2人で買い物行った事もある。」


「何それ、僕聞いてないんだけど?」


「そりゃ言ってねえからな。舞花が燈葵の誕生日にプレゼント買いに行くからって態々俺を連れてったんだよ。」


「そうなの?」


燈葵は佑の言葉を信じてないのか私に聞いて来た。


「うん。燈葵に服を買ってあげた時あったでしょ?佑と燈葵の体格が同じくらいだったから試着して貰ってたの。」


「そっか。今度からは佑じゃなくて直接僕を連れて行ってね?」


「うん!次からはそうするね!」


―――――


『なあ、成宮。』


『何だ?瀬上。』


『天神って七原の事好き、なのか?』


『?当たり前だろ。俺も舞花の事は好きだぞ。』


俺の質問の意図が分かっていないのだろう、成宮は不思議そうな顔をして言ってくる。初恋もまだなピュア過ぎるこいつに聞いた俺が悪い。


『そういう意味じゃないけど、まあそれで良いよ。』


『何なんだ?』


―――――


私と燈葵が話している間、佑と瀬上くんは内緒話をしていたみたい。


(いつの間にそんなに仲良くなったのかな?)

***


通常授業も終わり、放課後。


「七原、部活見学って行くのか?」


「ううん。部活には入るつもりはないよ。」


「じゃあ今から始まる部活見学に行かないんだよな?」


「?うん。」


「じゃあこの街を案内してくれないか?」


「良いよ!」


「じゃあ、仕方ないから僕も案内してあげるよ。」


「燈葵!」


いつの間にか燈葵達が後ろに立っていた。


「俺もそうしよっと。部活とかもうこりごりだから。」


佑は中学の時、部活内で結構大きな揉め事が起こったらしく部活に嫌悪感を持っている。


「先ずはいつもの場所から。」


私のお気に入りの場所であるあの小高い丘に向かった。


「あ、明葉くん!」


おーい、と遠くから手を振ってくれているのは明葉くんだった。相変わらずカメラは一緒で太陽みたいに笑っている。


「舞花〜!燈葵!佑!……優斗」


瀬上くんの姿を捉えた明葉くんの目は分かりやすく泳いでいた。


「待て優斗、これは気分転換だ。」


「俺まだ何も言ってないけど?」


「いや、だから、その、」


明葉くんは弁明しようと必死に言葉を探していた。


「言い訳なんか要らんわ、何してんの?」


「優斗、口調が戻ってるぞ。」


「そんなん今はどうでもええわ。昨日散々言ったやろ?早よ帰らんと母さん達にこないな事しとるってバラすぞ?」


「はあ!?それは昨日言わんって約束したやろ!?」


「それは自分が勝手に病院抜け出さん言うたからやろ!」


「勝手にじゃねえよ、花壇の世話してる佐藤の爺ちゃんに言って来たし。」


「そんなん意味ないに決まっとるやろが!」


「別に優斗、誰に言えなんか言ってなかったんやろ!んぐっ!」


中々収まらない兄弟喧嘩に燈葵は明葉くんの口を塞いだ。

佑も瀬上くんの肩をポンと叩いた。


「瀬上、落ち着け。」


「ねえ、瀬上。もしかして明葉って何かの病気なの?」


「ああ、脳の病気だ。中学2年からは殆ど入院生活だ。元々体が弱くて入退院を繰り返してはいたが、今程長期間ではなかったんだ。」


「おい優斗!何で勝手に言うねん!やめろや、」


「明葉!お前次会ったら直ぐに言うからって言ったから隠しといたったら、何や?全く言う気配ない所か俺に何も言わずに勝手に抜け出して来とる。」


「何で俺が病気のこと隠したら優斗に怒られなあかんの?」


明葉くんの目からは涙が溢れていた。

瀬上くんはそんな明葉くんの両肩を掴んだ言った。


「明葉、もし病気のせいで倒れたらどうするんや?俺はまだ多少の対応分かっとるけど、七原達は病気ってことすら知らんかったら迷惑かけるだけやろ?お前1人で責任取れる問題やないねん。周りに迷惑かけることになるんや。」


「……」


瀬上くんの言うことは尤もで明葉くんは何も言い返せそうになかった。


「入院生活で暇してるのも、ずっと病院に篭りっぱなしなのが嫌なのも分かる。だから、せめて外出許可は貰ってからにしろ。勝手に抜け出して来んな。」


「……外出許可なんか貰えるわけないやろ。」


「ねえ、明葉くん。私毎日お見舞いに行くよ。」


「え?」


「私も昔入退院繰り返してたから分かるよ。あ、でも私にはよく遊んでくれる仲良しの子が居たの。ね、優斗くん?」


「今、思い出したのか?」


「うん。優斗くんは関西弁のイメージが強かったから、標準語を喋ってると雰囲気違ってて。」


瀬上優斗くん。

私が入退院を繰り返していた頃、よく病院で会っていた。優斗くんは入院していなかったけど家族が入院していたからとかで。


「あの時言っていた家族って明葉くんの事だったんだね。」


「ああ。舞花と明葉は昔何度か一緒に遊んだ事がある筈だけど、覚えてないか?」


私と明葉くんは顔を見つめ合って目をぱちくりとした。


「ちょっと分からない。」


「俺も。舞花と会ったのは今年が初めてだと思ってたし。」


優斗くんと会っていた頃は小学校の低学年くらいだ。高学年になる頃には優斗くんと顔を合わせる事は無くなっていた。


「あの時はお別れも言えなかったけど、舞花と再会できて良かったよ。舞花が隣の席で挨拶してくれた時、初恋の子と再会とかドラマみてえ!って内心凄え嬉しかったんだ。」


「ハツコイ?誰が誰の?」


「舞花が俺のに決まってるだろ。」


さも当たり前のようにそう言う優斗くんと対照的に、私の顔はポーッと茹蛸のように真っ赤になってしまった。


「なあ、瀬上。うちの(舞花)困らせないで貰えますかねえ?」


「半端な気持ちで舞花に手出したら知らないよ?」


「いや待て、これは俺の一方的な片想いだ。それに半端な気持ちでこんな事言うわけねえだろ。8年間想ってきたんだ。まさかすぐに気付かれないとは思わなかったがな。」


「き、気付かなかったのはごめんね。関西弁じゃないしあの頃みたいに中性的な見た目じゃなくなって凄くかっこよくなってたから。」


「それは嬉しいな。俺別に舞花に告白する気なんかさらさら無かったんだけどさ、恋敵ライバルがいるみたいだったから早めに言っておこうと思って。舞花、好きだ。」


「ライバル?」


優斗くんは笑顔で頷いた。


「もしライバルが自分から名乗り出なかったら舞花に振り向いて貰えるまで俺は諦めない。まあ、名乗り出ても諦めるとは、」


「舞花、好きだよ。」


「うええーーー!?」


「どうして佑が一番驚いてるの?鈍感だから?」


「燈葵、その好きって言うのは……」


佑が私の気持ちを代弁するように燈葵に聞いた。


「もちろん女の子としてだよ。世界中の誰よりも舞花の事が好き。」


「いつから?」


「小学校に上がった頃には、もう好きだって自覚してた。」


燈葵は澄ました顔でそう言った。

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