09 夜営
やはり、超大物なんて簡単には見つからず、
日も暮れまして、つまりは、夜営。
設営したテントは、ふたつ。
僕と爺ちゃんが使うのは、昔から僕が愛用している年季の入った小テント。
特に便利な機能とかは無いけれど、使い慣れている物がイチバン。
おっとそういえば、マリオネさんたちも、テントはひとつなのね。
まあ、ずっといっしょに過ごしてきた幼なじみだそうだし、
仲間たちみんなが応援している公認カップルだし、
そもそも、これまでたくさんの夜営依頼もこなしてきた冒険者だし、
僕が変に気を遣ったりしないほうが良いよね。
マリオネさんは、夕食の支度中。
ひとりでも大丈夫って言ってたけど、なかなかに手慣れた様子、
これは期待できそう、かな。
アニーニさんは、爺ちゃんと何やら相談中。
ずいぶん真剣だけど、なに話してるんだろ。
まあ、ああいうのはほっとくのがイチバン。
触らぬ"創造神"に祟りなし、ってね。
そういえば、爺ちゃんの二つ名、
"精霊王"の方なら何となく分かるけど、
"創造神"って呼ばれる理由、イマイチ分かんないな。
今度、ローガンフージュさんにでも聞きに行こうかな。
……おっといけねえ、
やることやらなきゃ。
僕の役割りは、明日の準備。
今回の冒険は、いつもの、僕単独での狩りじゃない。
だから、魔導弓も『Gふなずし』も全力で使う、本気モード。
もちろん、爺ちゃんからの依頼もきちんと達成したいけど、
何よりもマリオネさんとアニーニさんの安全が第一、だよね。
おふたりとも冒険者だから、冒険での危険は覚悟の上かもしれないけど、
森ならではのトラブルで仲間にケガさせるなんて、森の狩人のプライドが許さない。
つまりは、手加減なしの全力全開本気モード。
『Gふなずし』の地図から、明日の行き先候補の目星をつけて、
周辺警戒『探索』と魔物避け『結界』もがっつり効かせる。
後は、僕自身の狩人能力を研ぎ澄ますのみ。
さてと、こんなもんかな。
「はーい、夕飯出来ましたよー」
待ってました、では早速。
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うめぇ。
マリオネさん、かなりの料理上手ですね。
即席野営料理というよりも、手抜き一切無しの家庭料理と称賛されるべき美味さ。
「ええお嫁さんになれるのう、マリオネちゃん」
「やだもう、おじいちゃんったら」
うらやましいです、アニーニさん
「そうですね、野営では毎回助かってます」
おっとなるほど、マリオネさんのご苦労が偲ばれるリアクションですね。
幼なじみボーイがこんなに鈍感さんだと、積極性のカタマリのマリオネさんといえども大苦戦間違い無し。
って、あれ?
アニーニさんのリアクションに、めっちゃうれしそうですよ、マリオネさん。
なんだよもう、完璧に仕上がってるカップルですよ、コレ。
初々しいだけじゃなく、
長年連れ添った熟年夫婦感をも併せ持った状態、
つまりコレこそが、僕では絶対に味わうことができない、アレ。
"幼なじみ最強伝説"
はいはい、ごちそうさまでしたっと。