21 勝敗
ついに統一された、精霊界。
いや、統一じゃなく、解放。
なぜならみんな、リストさんの言う通り、自由に生きたから。
良い事を成せば、もっと良い方向へ。
悪い事に手を染めれば、罰は必ず訪れる。
みんなは、自由に生きた。
リストさんとフェルマーシュさん、
幸せな結婚生活を送る。
人族の一生はあまりに短かったけど、
本当に幸せだった。
娘さんが、ひとり。
リストさんからは、自由を愛する気質と高い霊格、長命種としての身体。
フェルマーシュさんからは、優しい心と並外れた知性、並ぶ者無き美貌。
母を亡くしてから、自分にべったりの父。
精霊界の頂点の家に生まれたわずらわしさ。
息苦しくてどうしようもなくなったのは、父譲りの自由人の精神ゆえ。
自由を得るための全てを真剣に学び、
するりと、雲隠れ。
妻を亡くして半身を失った心持ちだったリストさん、
それを埋めようと娘さんに構い過ぎた事に気づいたのは、
娘さんが雲隠れしてから。
半身を二度も失ったこと、
もう、疲れた。
隠遁状態だったスレイルータさんに後を託そうとしたが、
トップである事の全てでは無く、半分だけなら請け負うと。
精霊界に、ふたりの王。
それぞれの王が、それぞれの信念を曲げず、それぞれの成すべき事を、成す。
王の進む道、ふたつに分かれたら、国も割れた。
当たり前だったけど、みんなはどうすれば良いのか分からない。
どんなに歳月が経っても、
このふたりよりも王たる者は現れなかったから。
だったら、争いが起きぬよう、
今のうちに国を分けよう。
リストさんの精霊王国は、自由。
何を成しても良いけれど、
結果は全て自己責任。
必要があればどんな種族とでも交流、
もちろん、もうひとつの精霊王国とも。
スレイルータさんの精霊王国は、平和。
平和のためなら、争い事も辞さず。
極力、秩序無き多種族とは交流しない。
平和は、平和を望んで努力した者だけが手にすれば良い。
もうひとつの精霊王国とは、それなりに交流。
繋がりを切らさぬように。
スレイルータさんは、交流という名の勝負を挑んでくる。
勝負に勝ち続けることが、
自身の王国の正しさの証し。
いずれは、王国をひとつにするために。
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「恥ずかしいから、みんなには内緒じゃよ……」
爺ちゃんの、つぶやき。
全てを語り終えたリスト爺ちゃんを、
我が家の優しき乙女たちが、
優しくハグしている。
僕は、
足が痺れちゃってて、
混ざりたくても混ざれない……




