16 ヤボ
なんやかんやで遅くなっちゃいましたが、
マリオネさんたちに、ヌシさんたちの詳しい事情を説明。
おふたりとも、姿を見せたヌシさんにもあまり驚いていない様子なのは、
これまで経験してきた冒険がいかに過酷だったのかを物語っている、かも。
爺ちゃんとヌシさんは、『転移』で精霊界へ。
残された僕たちは、撤収作業終了後、
森を抜けて街道を南下、ヴェルクリの街を目指します。
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「なんだかスゴい冒険でしたねっ」
はい、めったに味わえないような貴重な体験ができました。
臨死体験とか……
おふたりがいなかったら、今ごろカブトムシ王国の大樹の肥料になっていました。
本当にありがとうございます。
ヌシさんを発見したマリオネさんの固有スキルも凄かったですけど、
アニーニさんの回復魔法、本当に凄いですよね。
「いえ、あれって、スズナさんからプレゼントされた長槍の『回復魔法効果特大アップ』のおかげなんです」
「僕自身の固有スキルは『回復魔法(小)』なので、あれほどの重傷を完治させるなんて、とてもじゃないけど出来ませんから」
「あれ? あの時ニィニって、長槍使ってたっけ?」
「えーと、慌ててたんで良く覚えてないんだけど、そういえば、ずっとマジックバッグに入れっぱなし……」
「「……」」
どっちにしても、おふたりともスゴいってことです。
これからもおふたりで、冒険、がんばってくださいね。
「「はいっ」」
後は、ヴェルクリのバルモルトさんにリグラルトレイピアカブトムシを渡せば、おふたりの依頼は完了、
……おっと。
「あのカブトムシ……」
「リストさんの『収納』に……」
えーと、僕の『Gふなずし』にリスト爺ちゃんの連絡先が登録されてますから、ご心配なく。
「「よろしくお願いしますっ」」
本当に息ぴったりですよ。
まったくもう……
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連絡入れたら、爺ちゃんが慌てて『転移』してきました。
で、僕の愛用している小さなマジックバッグに、カブトムシを入れ替え。
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って、ちょっとお爺ちゃんっ、
いつの間にか僕のマジックバッグが"生き物生きたままオッケー"仕様になってるんですけどっ。
ってか、こんなデッカいカブトムシ、何でスポンって入っちゃうのっ!
「細かいのう、フォリスちゃん」
「あまり細かいこと言っとると、女の子から嫌われちゃうんじゃよ」
だからそういうのは間に合ってますって、
僕は生涯シュレディーケさんひと筋ですから。
おっと、マリオネさんが、みるみるうちにりんごほっぺさんに……
「じゃ、ヤボ用片付けてくるよ、わし」
……行っちゃったよ。
えーと、僕たちも行きますか。




