13 事情
爺ちゃんの目線の先に……
なにアレッ、
ハンパ無くデッカいカブトムシ!
って、あれ?
アレって、リグラルトレイピアカブトムシじゃないよね。
大きさが3mくらいだし、
何より色が……
極彩色っていうのかな、アレ。
「どうやら変異種じゃの」
へえ、すごいな、激レアカブトムシ。
って、なんで逃げないの?
「フォリスちゃんを心配しとるようじゃったのう」
「治療する様子を、さっきからずっとそこで見とったよ」
「姿は隠しとったがの」
なるほどそうか、自由自在に姿を消せるんだ。
さすがは変異種、大きさだけじゃなくて、特技も凄いんだね。
って、僕のこと心配してる?
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リスト爺ちゃんが、カブトムシさんとお話ししております。
さすがは"精霊王"様、何でもアリなのです。
で、詳しい事情が諸々判明。
あのデッカいカブトムシさんは、この森のヌシでした。
他のカブトムシとは違う変異種として生まれてから、
その特別なチカラで、この森を見守ってきたそうです。
『ナワバリ結界』:ナワバリと認識した範囲にいる同族を支配できる結界を張る能力。
支配とは言っても、かなりユルめだったようです。
結界の出入りは基本自由に、狩猟者が多い時だけ注意喚起、みたいな。
『視覚迷彩』:いわゆる透明化だけど、視覚だけでなく魔導探索すらあざむくことができる凄い能力。
でも、マリオネさんの『五感強化』の方が一枚上手だった、と。
もちろん、僕がやったみたいに、触るとバレちゃいます。
そして、結界内の存在に任意で『視覚迷彩』効果を及ぼすことも可能。
凄いよな、あんなデカい大樹も、近づくまで全然見えなかったし。
これらのスゴい能力で、森のカブトムシたちが穏やかに暮らせるように群れを守ってきたけれど、
最近ちょっとだけ、繁殖・繁栄させ過ぎて、成長しきっていた大物個体を狙う人間たちがわんさか集まってくるようになっちゃった、と。
まあ、全長2mですもんねぇ。
つまり、何ごともヤリ過ぎはいかんぞ、ってことですな。
"過ぎたるは及ばざるが如し"で、合ってたっけ。
事情は良く分かったけど、
うーん、どうしよう、リスト爺ちゃん。
この前、似たようなことがあったんだ。
その時のリグラルトとびねずみさんたちは、人と会話できるチュースさんが国との交渉役を務めることができたから、住んでた洞穴を村と認めさせて平穏に存続させられたんだけど、
カブトムシのヌシさんには、交渉ごとは無理そうだよね。
「ヌシに相談してみるよ、わし」
…………(相談中)
よくよく見ると凄い絵面だよね。
極彩色の超デッカいカブトムシと、
見た目は普通だけど"精霊王"のお爺ちゃんが、
森の平穏を守るために真剣に会談中、ですよ。
おっと、そういえば、
マリオネさんとアニーニさん、大丈夫かな。
さっきテントに入ってから、結構時間が経ってるんだけど……
えーと、もしかしておじゃま虫、禁止?
虫捕りだけに……




