500文字のWSS
私は後悔している。良かれと思って、彼に彼女――照山麻帆を紹介してしまったことを。
彼――青島匡宏と私――井東奈々子は、小学時代からの友人同士。付き合いで言えば、それよりもっと前からある。
幼少期、匡宏は保育園、私は幼稚園に通っていたのだけれど、家が近所だったので、その時から一緒に遊んでいた。
匡宏は、周り男子達と違って大人しかった。ただその分、理性的で他の男子にはない魅力があった。
いつからなのかは分からない。私はいつの間にか匡宏のことを好きになっていた。
ただ彼の喜ぶことをしてあげたい。その思いから、匡宏と気の合いそうな私の友人――麻帆を、彼に紹介してあげた。
それが間違いだった。私の知らないところで、匡宏と麻帆は私の想定以上にその仲を深めてしまったのだ。
「奈々子、僕、照山さんと付き合うことになったんだ」
麻帆を紹介したのは私、匡宏を責めることはできない。
「奈々子は最高の友達です。運命の人との出会いをくれました」
結婚式のスピーチで、麻帆のその言葉を聞いた時、もどかしさで身が焼かれそうだった。
だから私はこれからも悔やみ続ける。匡宏に麻帆を会わせてしまったことを。自分の想いを匡宏に伝えなかったことを。
最後まで読んでいただきありがとうごさいました。