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ズッ神

作者: technologi[A]

この小説は武蔵と小次郎の決闘の巌流島をベースに書いています。少しアーサー王伝説要素も加えました。

-朝-

舟漕ぎの音が一つ軋むたび空が黒くなる。

いや、これは、心象風景か。

先頭の鼻先に照らされる陽射しはむしろ好天に恵まれる彼らを照らす。

「今日は潮の流れがいい。あんたぁ運がいいよぉ。」

先頭が愛想のいい顔で俺を見る。

小舟がギシギシ軋む。

返事は無い。

相手はとうとう「あの」小次郎だ。

あの「組織の」。

誰の目から見ても欠陥。負の財産。だが、大きすぎて潰せない。

その横柄さ、不道徳は屋根裏のネズミまで知っている。

なぜそうなったか。自らの失態で崩壊寸前まで陥ってもお上が救済の手を講じるからだ。

海面に反射する日差しが揺れる。

揺れるたびに交互に現れる不穏と戦意。

生か死か。

この決闘どちらに転ぶか。

少なくとも4時間後にはハッキリしている。

人の努力、想いなど完全に無視して。


-決闘-


「あんたぁ、運がいいよぉ」

さっきからほぼ同じことを話しかけてくる先頭。

それに一瞥もしない武蔵。

小舟が約束の島に着くころ小次郎は既に来ていた。

身なりが小ぎれいで均整の取れた体格。

「俺のような野良犬とは違う、か。」

ボソリとつぶやく。

「あんたぁ、運がいいよぉ。」

先頭の親しげな態度に変わりはない。


さっきまで小刻みに震えていた右手が戻った。

もう覚悟を決めたのだろう。白か黒か、その不確定の未来へ自らをゆだねる。全身全霊をもって。

時空にできた黒い口のトンネルに足を踏み入れる。もう後戻りはできまい。

視界の中の小次郎ははハッキリ見える。だが、目で見ていない。頭の奥の方で見ている。時間がぴったりしている。まずは己の気を高めることだ。相手を見ながら無になる。自分と大気が一体になると内側から気が湧いてくる。体をなるたけ脱力する。高まった気が相手へと跳びかかっていく。斬ったことすら実感はない。次の瞬間にはもう相手を後にしている。


どうやら小次郎も自分が斬られたことを覚らずに逝ったようだ。


‐聖杯-


「ああぁ~、やっちまった。」

逆光でよく見えないがその時先頭は大きく口をあけて笑っていたらしい。

「じゃあぁ、こうするしかねぇなぁ。」

突然モノクロの視界になる。

するとなにやら色のあるものが天から降りてきた。

3人の天使だ。

「おみゃあを迎えにきただよ。」

先頭が言う。

まさかこいつが運をつかさどる神だったとは。

体が宙刷り状態になる。

下にいる自分を見ている。もう一人の自分が自分を見ている。

そのもう一人の自分の意識も次第に遠ざかってゆく。


誰も予期しなかった番狂わせが誰も知らないところで起こる。

それに賭けた俺たちは。

137億光年の宇宙の果てで一瞬見え隠れする超新星爆発のように消えていく。


なにはともあれ、読んで下さった方に、感謝!

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