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僕と僕のBest Friend

作者: 吸血鬼の娘ー小泉ゆき

もしも俺に望む権利があるのなら、もう一度、あの頃の、あの日々に戻りたい。たとえかなわないと知っていても。

「あれがその女か...」

俺の名はアラト。天使だ。今俺が見ているのは今回俺が苦しみから助ける少女、16歳。名前は確か、宮之原めい、だよな。ったく、こういう仕事を任されるたびに思うんだよな。なんで天界で一番優秀な俺が、こんな娘の助けにならなくちゃいけないのか、ってな。にしても重いな、生身の体って。普段は羽があるから飛んでるし。移動しにくい。

「あなた、新入生?」

彼女を見ているうちに彼女が俺に気がついて話しかけてきた。

「あ、ああ。」

まあ嘘ではない。だって神に頼んで、転校生、ということにしてもらったからだ。でも、人間世界の勉強なんて、やったことないに決まってるし、わかるわけない。どうしよう。こいつに事情を話して手伝ってもらう、いや、手伝ってもらえるわけ無いか。むしろ避けられる方が面倒くさい。これは頭が悪いふりをするか。ちょっと待てよ。人間世界にはどうゆう科目があるのか。天界だったら魔法の使い方とか、人の助け方とか、そんな感じなんだよなー。神にやってもらったから、生徒証?とかゆうものもねーし、一体次がなんの科目で、そもそも授業がいつから始まるのかさえもわからない。しかも家もねーし。神のせいで当分元の体には戻れない。羽は出し入れできるものの、生身の体だからいつもよりスムーズには飛べないだろう。

「あなた、今日何するかわかってるの?」

「し、知らない。」

「じゃあ私が教えてあげる。そういえばどのクラスなの?」

「二年の三組。」

これは事前に神に聞いてきた。

「じゃあ同じクラスだ。家は何処なの?」

「...」

どうしよう。人間界の地名なんて一つも知らないから、嘘をつきたくてもつけない。

「もうしかして、家ないの?」

「...」

まじでどうしよう。あるっちゃあるんだけどな。

「隠さなくてもいいのよ。この学校には私立だけど、そんな子、けっこういるの。」

「そいつらはどうしてるんだ?」

「うーん。ホテルぐらしとかじゃない?」

「人間界の金なんて持ってな...」

「え?どうゆうこと、人間界って?」

「え、ああ、まあ、最近そうゆうの見てるんだ。見すぎかな。あはははは...」

「ふーん。」

名は俺をじっと見てきた。その時、俺は彼女に少し違和感を感じた。まるで、ここにはないはずのようなもののような...そしてそれになんかどこかであったような...まあ、そんなわけねーか。

「でも、お金ないんだったら、少し困るんじゃない?あれ?でも親は?」

「いない。」

事実だ。天使に親なんていない。まあ、それに当たるものが神、なのか?

「じゃあ私の家に泊まっていきなさいよ。私も親、去年いなくなっちゃってさ。知り合いのオーナーにもともと寮になるはずだったアパートを普通の半額で貸してもらってるの。まあ、将来返すつもりなんだけどね。アルバイトも学校の先生と相談して、できる範囲のをやってるわ。まあとにかく、もともと寮になるはずだったからさ、隣、開いてるの。そこに住まない?」

「あ、ああ。もしよければ。」

「もちろんいいに決まってるじゃない。むしろ今まで寂しかったんだ。これからよろしくね。あ、私の名前は宮之原めい。めいってよんで。あなたの名前は?」

「アラト。宮本アラト。」

「ふーん。おなじ宮かぁ。出席番号も近いかもね。そういえば、何をするかわかってないんだっけ。まあ、私も知らない。ごめん。でも、一緒に校長先生のところ行くよ。」

「あ、ありがとう。」

「あら、あなたもうしかして、転校生の宮本アラトくん?」

突然、20代後半だろうか、女の人が話しかけてきた。

「は、はい。そうです。」

「あ、今泉先生。」

「あら、宮之原さんじゃない。知り合いなの?」

「はい、同居人です。」

え、まあ、間違ってはいないけど、出会って数分だよな...

「へえぇ。宮本くん、私は今泉。あなたの担任です。よろしくね。」

「よ、よろしくおねがいします。」

「宮本くん、この学校のルールなどをお伝えするわ。あと、生徒証とかの書類も渡したいから、ちょっと一緒に来てくださるかしら。」

「は、はい。」

「じゃあ、宮之原さんは待ってくださいね。」

そうして俺は今泉先生につれられて、職員室?に連れて行かれ、まじで長いつまんない話を聞いた。いや、聞いていた、というよりあくびをしないようにしていたから、全く話の内容覚えてない。気がついたら日が暮れてた。

「今泉先生の話、長かったでしょ。」

「あ、ああ。」

「いい先生なんだけど、ちょっと話が長いのよ。そこが唯一の欠点、てことね。」

「おまえ、ずっとこの学校なのか?」

「うん。もちろん高校から。中学の時は公立に通って、ためたお金は貯金するか、参考書を買うか、食べ物を買うかしてたわ。」

「あれ、親いなくなったの去年じゃねえのか?」

「うん、そうだけど、いわゆる毒親ってやつでさ、いてもいない感じだったかな。」

そんな話をする彼女の顔は、さっきまでの明るい顔ではなく、曇っていた。

「悪いな、嫌なこと思い出させて。」

「ううん。大丈夫。はら、ついたよ。ここが私の家。まあ、今日からあなたの家でもあるんだけどね。好きに使って。あ、でも私の部屋に入ったら殺すから。」

「え、追い出す、とかじゃなくて?」

「もちろん。あんまり柔道全国大会優勝者なめんじゃないわよ。」

「ひえー。」

まじで本当だったんだ。怒らせないように気をつけなきゃな。


それから俺とめいとの日常が始まった。最初は少し違和感があったけど、めいは優しかった。勉強とかも教えてくれた。俺はだんだんと人間界になれてきて、最近は一人で外出することも多くなった。友達もできた。今泉先生もおこると怖いけど、普段は優しかった。まあ、話が長いのが玉にキズだけどな...そんな充実していた日々を俺は送っていた。気がつけば、ここに来てから、一年が経っていた。最初のうちは、めいには本当に助けがいるのか、なんて思ってた。そのわかりにくい苦しみとは親のことだった。俺はなんとかそれを解決した。一回彼女の部屋に入りそうになって殺されかけたけどな...


俺はその苦しみが解決したと同時に、もとの姿に戻れるようになったことに気がついた。この任務は完了したんだ、そう思うとホッとしたが、それよりも、どことなく寂しい気がした。最後にめいになにか言っておかなくちゃな、そう思って俺はめいに話しかけた。

「めい、俺、引っ越すことになったんだ。」

「え?どういうこと?親、いないんじゃなかったの?」

「そうなんだけど、俺、もうちょっと人間か...」

久しぶりにこの言葉が出てきてしまった。「え?」とか「へ?」とか、そんなふうに言われる。そう思っていた。でも、彼女の反応は、俺をびっくりさせるものだった。

「ふーん。」

疑うような目つきだった。

「え、あ、これは、その...」

「あんたやっぱり人間じゃないでしょ。」

「へ?あ、どういうこと?人間じゃなかったらなんなだっていうのか?それにやっぱりってどういう意味だ?」

「嘘つかなくていいから。私、見ちゃったんだ。あなたの部屋。掃除しよと思って。」

「え?」

嘘だろ?俺の部屋には入るなと言っていたはずなのに。てか、魔法の本とかおいたままだったよな。

「あんなミステリアスな本、ここじゃ手に入らないでしょうが。」

どうしよう。これを漏らされたら厄介なことになる。まあ、こいつを信用してもいいかな。そう思って俺は本来の姿をあらわにした。

「え、あなた、それ...」

「ああ。俺は天使だ。お前を苦しみから救うために天界からやってきた正真正銘の天使だ。今まで黙っててごめん。」

「天使って本当にいたんだ...いや、知ってたけど。あんたと会う何百年も前からね...あんたが展開で一番優秀な天使、ってことも、最初っから知ってた。」

「え、どういうことだ。」

今度は俺が驚く番だった。

「実は、私も黙ってたことがあって...実は私...」

そこまでだった。俺は強制的に天界に戻されてしまった。なぜだろう。


「久しぶりだなぁ。」

「ああ、戻ってきたか。君しては珍しいね。いつも任務が終わり次第すぐに帰ってくるのに。人間界はつまらない、とか文句ばっかりなのに。」

「神じゃねえか。相変わらずうるせぇんだよ。」

「悪いね。突然呼び戻してしまって。でも、とあることが発覚してしまったんだ。」

「とあること?」

「実は、君が面倒を見てもらって、今回の対象だった宮本めいは、魔界で一番優秀な悪魔だったんだ。」

「え?っていうことは?」

「君と同等な力を持つか、もしくはそれ以上の力を持っている、ということになるね。君でも気づかなかったほど気配を隠していて、君の気配に気づいていたとすれば、君より上の力を持っている可能性が高いね。」

「う...うそ。」

嘘だ。だったらなんで俺を攻撃しない?なんで俺を助けた?なんで俺に招待を伝えようとしてきた?考えれば考えるほど、謎が深まるばかりだった。でも、これで最初の方に感じた違和感の正体がわかった。

「それでも、確かその悪魔の第一人称は”僕”だったはずだが...」

ドッカーン。

「一体何が?」

突然、大きな爆発音が聞こえた。

「やっと見つけたぞ。神め。結界を張っていたようだが、彼女の力には劣っていたようだな。」

「この声は、もうしかして?!」

どうりで神が驚くはずだ。そう、そこには魔王がいた。

「どうしてだ。天界で最上級の結界を張っていたはずなのに...」

俺は怒鳴りつけた。

「まあ、わしの娘の力には勝てなかったからじゃろうな。」

そう言われてみて初めて俺は気がついた。彼の隣に立っている悪魔の存在に。それまで憎しみと煙で見えなかった彼女の姿は今は俺にははっきりと見えた。彼女こそ彼の娘であり、魔界で一番優秀な悪魔、カレンだった。でも彼女の姿は、めいそのままだった。違うところといえば、羽と服、そして髪型だった。

「え?うそだ。」

「そうだ。彼女はお前がめいと読んでいた悪魔だ。どうやら最後に気づかれてしまったようだが。」

「ごめんね。」

「なぜ謝る必要がある。お前のおかげで天界が滅びそうなんだ。喜べ。」

カレンは彼が言っている間、拳を強く握りしめていた。

「あのさ、私の苦しみ、解決されたと思ってるでしょ。でも、解決されてないよ。このバカ父のせいでね。」

そうして憎しみの言葉を吐いたあと、みるみるうちに彼女は戦闘形態になった。

「うおおおお!!!!!」

カレンが怒っている。俺はギュッと目を閉じた。攻撃されるに決まってる。

「な、何をする。」

俺は目を開けた。気がつけば、魔王がカレンに倒されていた。

「やめろおおおおおおおおおおお。」

断末魔が響く。気づけば眼の前に血まみれのカレンがいた。

「大丈夫?」

カレンが俺に訪ねる。

「なぜ、俺たちを助けた?」

俺はカレンに訪ね返す。

「だってあなたは私の一番の友達だから。でも、私が犯した罪は許されない。だったら、私、カレンはこの身を持って償います。」

「そ、それってどういう...」

「この下って奈落よね?」

カレンはそう言いながら後ずさりをし始めた。

「も、もちろん。そりゃ、世界が違うからな...って、お前まさか...」

俺が気付いたときにはもう彼女は天界の端まで来ていた。

「君にあえてよかったよ。」

そして彼女はゆったりと空気にに身を任せた。

「さようなら。僕と僕のBest Friend。」

もしも俺に望む権利があるのなら、もう一度、あの頃の、あの日々に戻りたい。たとえかなわないと知っていても。


読んでい叩きありがとうございました。初投稿なので、あまり自身はありませんでした。プロットを考え始めたときから、作画崩壊が止まりませんでした。他の方が書いているものには到底及ばないですし、なんか最初の出会いだけ長ったらしく、最後のクライマックスが少し短くなってしまいました。しかも、台詞も多いですし...申し訳ございません。気に入っていただけたら幸いです。もしお気にめさらないようでしたら、中学一年が気まぐれに書いた文章だと思って見逃して下さい。これからも投稿して、上手くなっていきますので、どうぞよろしくおねがいします。


吸血鬼の娘、小泉ゆき。

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― 新着の感想 ―
[一言] 素晴らしい作品ですね! ☆5個つけさせて頂きました。 これからも頑張って下さい! 応援してます。
2021/11/09 21:09 退会済み
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