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ゆるツー  作者: 秋山如雪
8章 栃木
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44. もう一つのバイク神社

 栃木県の安住神社で、無事に参拝を終えた4人は、次に杏の先導で南を目指すことになった。


 そこからは、のどかな田園風景が広がる、いかにも「田舎」の光景が横たわっていた。

 そんな中、県道を30分ほども走ると。


 真岡もおか市に入った。


()()()、じゃなくて()()()、なんだ)


 初めて来る土地、初めて知る地名。真姫にとっては興味深いものだったが、何故「もおか」と読むかはわからなかった。


 そののどかな、というよりも寂れた地方都市に近い、真岡市の五行川という川沿いに、その神社はあった。


 大前おおさき神社。


 見た目は、普通の神社だが、そこの駐車場にバイクを停めて、うきうきとした、軽い足取りで向かう杏によれば、


「ここはバイク神社発祥の地なんよ。全国の二輪車守護発祥の『足尾山神社』が祀られてあって、さらにバイクの絵馬まである! そんだけでバイブスアゲアゲっしょ!」


(へえ)

 杏にしては、やけに詳しく調べていて、妙に感心した真姫であった。


 着いて行くと、境内には巨大な恵比寿様が祀られてあったり、杏が言ったように、「足尾山神社」と書かれた幟に、「二輪車守護」と書いてあり、小さな社があった。


 そこでお参りした後、社務所に行くと、これも杏が言ったように、バイクが描かれた絵馬が売っていた。


 絵馬は4種類あるが、何故かどれもネイキッドのバイクが描かれてあった。

(まあ、バイクっぽいっちゃ、っぽいか)

 真姫はその4種類の中に、自分が乗るようなカウルつきのバイクがないのが不満だったが、渋々ながらも、周りの3人に従い、絵馬を購入。


 さらに、同じように交通安全ステッカーやお守りを購入していた。


 時間が余ったため、しばらくその神社の境内で休むことにした4人。


 ベンチに座っていると。

「バイク神社かあ。思ったより面白かったね」

 と、まずは京香が口を開き、


「そだねー。バイク乗りって、なんかこういう『縁起をかつぐ』部分があるからね」

 蛍が応じ、


「それなー。大体、事故ったら、あっという間にあの世行きっしょ。ぴえんどころの話じゃないし」

 さらに返す杏に、真姫は苦笑いを浮かべて、


「お前がそれを言ったら、シャレにならん。発進、スピード出しすぎだぞ。あんな運転してると、そのうちまた事故る」

 と鋭く突っ込む。


「蛍ー。真姫がいじめるー。つらたん」

「よしよし。大丈夫だよ、杏ちゃん」

 途端に、蛍に子供のように泣きつく杏であり、それを見て、


「いじめてないって。蛍ちゃんも甘やかしすぎ」

 突っ込むものの。


「真姫ちゃんって、男っぽい割には、随分慎重な運転するからねー。だから事故とは無縁なのかも。でも、そういう真姫ちゃんも気をつけてね。油断してると、事故ったり、立ちゴケしたりするから」

 今度は京香に突っ込まれていた。


 だが、

「あ、そういえば私、まだ立ちゴケしたことない」

 思い出したように呟く真姫に対し、


「え、マジで!」

 3人が一様に驚いていた。


 曰く。

「一度もしてないなんて、信じられない」

「ありえねー」

「すごい強運の持ち主なのかもね」


 それぞれ、京香、杏、蛍に言われていた真姫だったが。


「そんなこと言われてもね」

 真姫には、特に思い当たるような対策もなかった。


 だが、不思議とこれまでのバイク人生の中で、真姫は一度も立ちゴケを経験せず、もちろん走行中の転倒も経験していなかった。


 元々が慎重な性格だったし、スピードも出さない。

 おまけに、父が現役のバイク乗りということも影響しているのかもしれない。



 その後は、ここでダベった後、少し早い時間ながらも、帰りの渋滞を警戒し、早めに高速道路に乗り、途中のSAで夕食を取って、無事に帰宅した4人であった。


 季節は、4月から5月へ。

 バイクを乗る人間にとって、この辺りの季節が一番走りやすい。


 地球温暖化の影響で、6月頃から10月頃までひたすら暑い日が続くからだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 地名の読みって、地元の人以外だとよく分からないものありますよね。 「もおか」勉強になりました。
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