表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆるツー  作者: 秋山如雪
2章 奥多摩
12/82

11. 日原鍾乳洞

 早速、この観光名所の「日原鍾乳洞」に入ってみることになった3人。


 駐車場を降りると、ここが「東京都」とは思えないほどの、手つかずの大自然が広がっている。

 少し下ったところに、その入口がぽっかりと口を開けている。


 思いの他小さな入口に「東京都天然記念物 日原鍾乳洞」と書かれてあった。


 中に入ると、真姫の体に、想像を絶する冷気が襲ってきた。

(寒い!)


 ここは年間を通じて、気温が10度前後。夏に来れば涼しいが、今の時期はむしろ寒いほどだ。

 いくらライダースジャケットを着ていたとはいえ、まるで真冬のような寒さに体が縮こまる。


「めっちゃ寒い~」

 と言いながらも、どこか楽しそうにしている京香と違い、真姫は心底寒がって、震えるくらいに感じていた。


「大丈夫、真姫ちゃん?」

 そんな彼女に声をかけたのは、蛍だった。


「大丈夫」

 元気に先頭を歩く京香とは違い、蛍の他人を気遣う、優しさが何だか嬉しくも感じてしまう真姫は、精一杯の笑顔で返していた。


 石段を下り、天井につらら(正確には鍾乳石と言う)のような物がぶら下がる様子を見て、歩き続ける。


 中は、無風なので、慣れてくると、意外と寒さを感じなくなる。

 少なくとも真冬のツーリングよりは、幾分か暖かい。


 そして、そんな道を歩き続けること、約15分。


 突如、目の前に幻想的な風景が広がる。

 天井が高く、開けた空間に出たと思ったら、その岩の天井が赤、緑、青などの光にライトアップされており、不思議な空間を作り出していた。


 これはLEDを使った照明なのだが、ある意味では、この日原鍾乳洞のメインとも言える場所だ。


「なに、これ! めっちゃ綺麗!」

 一番テンションが上がっていたのは、京香だった。


 この辺りには詳しいような口ぶりだったが、実際に来たのは初めてのようだった。


「素敵だね」

 蛍もまた、言いながら写真を撮っている。この辺りは写真撮影もOKなようだった。


 そして、真姫は、

(不思議で幻想的な空間。こういう落ち着く空間は好き)

 普段、どちらかというと、物静かで、仲間と大騒ぎするのが好きではない彼女には、ここは打ってつけの場所であった。


 ただ、土曜日ということで、観光客の数がそれなりに多いことを除けば。


 その後、さらに進むと。

「見て見て、縁結び観音だって!」

 女子高生らしく、大袈裟に感情を発露させ、いくつもの石が積み上げられ、小さな観音像が祀られている場所を発見した京香が大きな声を上げていたが。


「でも、来る途中、三途さんずの川ってのがあったような」

さいの河原もあったねー。ここ、あの世に続いてるのかな」


 真姫と蛍がそんなことを口にするため、

「もう二人とも、ロマンがないなあ」

 京香は微笑みながらも、呆れたような表情をしていた。


 正味1時間近く、この洞窟を探検するように歩き、ようやく外に出ると。


 真姫は、何だか不思議な感覚がするように感じた。

(空気が淀んでいる)

 それは、洞窟の中の空気が非常に澄んでいるために錯覚することなのだが、内と外で空気感がまるで違うので、こういうことを感じる人が多いという。


「さあ、お昼だよ。二人とも、おなか空いたでしょ?」

 洞窟から出た途端に、勇んで京香が口にして、


「この辺、何か食うもんあるの?」

 ぶっきらぼうに真姫が問う。


「あるよー。せっかくだから、お風呂入って、さっぱりしてから、魚料理を食べよう!」

 いつにも増してテンションが高い、京香が、


「私に着いてきてー!」

 と元気な声を上げて、スクーターへと向かっており、真姫と蛍は、そんな様子を微笑ましく思いながら、顔を見合わせて続いた。


 向かった先は、そこから20分ほど先。

 再びあの細長い、狭い山道を戻って行き、奥多摩駅付近から国道411号に出て、すぐのところにあった。


 日帰り温泉施設だった。

 京香が言うには、ここの日帰り温泉施設は、オススメとのことで、川魚の料理が食べられるという。


 そして、この奥多摩の名物とも言えるのが、ある意味、「川魚」だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ