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第二回小説家になろうラジオ大賞 投稿作品

忍者 対 ブラック企業

作者: 衣谷強

なろうラジオ大賞2第十五弾。テーマはブラック企業! 忍者とまとめてお相手しよう。ナムサン!

私は幸か不幸かブラック企業に勤めた事も忍者になった事もないので、伝聞や想像を更に誇張して書いております。間違いなどありましたらご指摘ください。特に忍者の方。

どうぞフィクションと割り切ってお楽しみください。

 忍者とは、闇に生まれ、闇に死す者。

 主命の為なら命をも厭わない陰の者。

 彼らはこの現代にも時代の裏に暗躍していた……。




(今回の命はこの企業の弱点を探れ、か)


 忍者は音も無くビルに忍び込む。闇に紛れ、廊下を進む。


(こんな深夜では警備の者さえ眠って……、何!?)


 忍者の目の前には煌々と灯りの点いた部屋。その中では一心不乱に画面に向かう人影。


(何故これ程の人間が!? これでは情報を探るのは無理か……)


 忍者は歯噛みをして立ち去った。




 数日後。忍者は再び目的のビルに足を踏み入れた。


「新人の草野です。よろしくお願い致します」


 契約社員として。


(中に入りさえすればこちらのものだ。怪しまれないよう仕事をこなして、空き時間に情報を盗み出そう)


 忍者は心の内でほくそ笑んだ。




(馬鹿な……。こんな筈では……)


 忍者は愕然としていた。事前に業態は調べていた。必要な知識や技術も十分に習得していた。それなのに。


(仕事が、終わらない!)


 割り当てられた仕事の完了を報告すると、間を置かず次の仕事が振られる。急ぎ片付けるとまた次。

 それだけならまだ良かった。有能と認識された忍者には、困難な仕事がどんどん回されるようになった。


(まだ先程の仕事も終わってないのに!)


 退社時間はとうに過ぎている。皆が帰ってから本来の仕事をと思っても誰も帰らない。誰もがタイムカードを切って、残業代の出ない仕事に向かう。


(私は不休でも報酬が無くても耐えられるが、一般人である筈の彼らが何故……?)


 そこに飛び込むクライアントからの仕様変更の知らせ。今までの仕事の大半が無駄になったにも関わらず、大きな溜息の合唱の後、また仕事が再開する。


(不平すら言わないのか! 主命ならばどんな難題でもこなす、我らと同じではないか!)


 深夜を回り、立ち上がろうとした男がそのまま倒れる。しかし誰も助けない。男も少しして起き上がり、トイレを済ませてまた席に戻った。


(死して屍拾う者無し、か。見事……)


 奇妙な連帯感を抱きながら、忍者は仕事をこなし続けた。




「お館様」

「戻ったか。して弱点の情報は」


 忍者は静かに頭を振る。


「無理でございました。我らと同等の覚悟の者が、四六時中目を光らせておりました故」

「何と。お前がそう言うなら相当なのであろう。策を練り直さねばな」

「申し訳ございません」


(これが私の出来る精一杯だ。生き延びろよ同志……)




 三ヶ月後、件の企業は大量の病気退職によってこの世から消えた。

読了ありがとうございました。

ブラック企業と忍者の親和性の高さに驚きを隠せません。当初は女性社員の仕事ぶりに共感した忍者が彼女を引き抜き、核になる社員を失ったブラック企業が瓦解するシナリオだったのに、恋愛もの書きすぎじゃない?という天の声に導かれこうなりました。僕は悪くない。

未投稿テーマは後七つ! 次回作にも是非お越しください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 社畜さんと忍者にここまで親和性があること。 会社の床に転がる社畜さん達はまるでツキジのように見えるのでしょう。 [気になる点] 現代に生きる忍者さんはブラック企業というものを知らなかった…
[一言] 相変わらず、スゴい!! 面白い、巧い! その会社、音に聴くIT土方の社畜さま方でわ?
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