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 雲のさらに上を浮遊する島々の上空を、アーモは全速力で飛んでいた。行先をある程度任せながらも、手綱を強く掴んでいるベカは振り向いて後方を確認した。追っ手との距離が少しずつ縮んでしまっている。


「アーモッ! 追いつかれるぞ!」


 アーモは翼を広げて急降下し、さらに加速した。追っ手のドラゴンたちもそれに合わせて急降下しているのを横目で見た。

 突き出した滝の裏をくぐり抜けたとき、ベカは霧状の水しぶきを顔に受けた。

 追っ手はみるみる肉薄してきている。アーモはさらに高度を落とし、川に沿って翔けた。川はやがて浮遊島から地上へと放出される。アーモは川の水にまじって島から鉛直方向に落下した。


 雲の隙間から、大海が見える。そこまで降下すると、視界が良いためより逃げ切るのが困難になってしまう。

 雲を抜けた瞬間、すぐにベカはアーモを上昇させた。体にとてつもない力を持つ不可視な重さがのしかかる。アーモにはかなりの負担をかけてしまうが、奴らから逃げ切るにはこれくらいは致し方がない。なにせ、大陸最強の帝国軍と、ダラットたち職員から逃げているのだから。


 ベカとアーモの作戦通り、雲の隙間を上昇中に何体ものドラゴンとすれ違った。


「よし、うまくいった!」


 このまま相手をまいて、しばらく浮遊島のどこかに身を潜めればなんとかなりそうだ。幸いここの島々は広大で自然に恵まれている。水も食糧もここで確保することができるだろう。

 だが、雲の上でダラット率いる討伐隊が待ち受けていた。あっという間に包囲されてしまったのだ。


「ベカくん、諦めなさい」


 古龍に乗るダラットの手には、大きな斧が握られている。下からは、先ほど振り切った帝国軍のドラゴン編隊も迫ってきた。より逃げるのは困難となってしまった。


「ダラットさん、すいません。いやです。なぜ人間の勝手でドラゴンが殺されないといけないんですか? 俺はアーモと離れたくありません」

「安心しなよ。特例でアーモを戦争に行かせることはしないよ」

「本当ですか?」

「ああ、アーモは処刑だ。このままだと、きみの罰も重くなるよ? さあ、観念しなさい」


 だめだ逃げるしかない。とベカは思った。敵に囲まれているが、アーモのスピードと機動力なら逃げ切れるはずだ。ベカは辺りを見回した。ダラットの古龍と他のドラゴンの間に隙間ができている。アーモだったら抜けられそうだ。


「行くぞッ!」


 ベカは手綱でアーモの行先を示した。だが、アーモを動かなかった。その場でとどまっているだけだった。


「どうした?」


 アーモの返事がない。


「アーモ?」


 敵は近づいてきている。それなのに、アーモは逃げようとしない。


「逃げるぞッ! アーモッ!」


 空気が震えはじめた。徐々に大きくなっている。肌を伝って体の内部まで響いてくる。浮遊島が徐々に崩れはじめたのだ。山が、島が割れ、川や湖の水が水しぶきとなって宙に消える。あまりにも落下する物体が巨大なため、動きがとてもゆっくりに見える。

 島は雲へと沈み始めると、空が歪み始めた。


「アーモ、逃げるぞ!」


 このままだと落下する島に飲まれてしまう。

 だが、アーモは動かなかった。


「どうしてだ? アーモ! アーモッ!」


 飲み込まれるまで、崩壊する世界の中でずっとベカは叫び続けたのだった。 


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