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「な……なんだこの強力な魔法ハ……」

「いいぞ、そのままあいつを吹きとばせ」ベカが命令するとアーモは強靭な尻尾で固まっているパルパを弾きとばした。


 地上に降りたベカは、そっとソラの前でしゃがむと、「よく頑張った」とそっと頭を撫でた。

 ソラには彼が不思議なオーラを纏っているように見えた。明るく、暖かく頼もしい。安心できる。ソラは目を潤ませて、「ありがとう」というと、気を失った。


 アーモが喉をゴロゴロと鳴らし、牙をむき出して警戒しはじめた。直後、洞窟の奥から足音が聞こえてきた。ベカはすぐにソラとロカを安全な所へ運んだ。足音だけでわかる。奴は強敵だ。失くした長い経験が、不思議と蘇っている気がした。


「落ち着け。やつ強いぞ」と興奮するアーモを宥める。これは、アーモがいない方がいい。いくらドラゴンといえど、実践の経験が無いに等しいのだ。自分一人の方が、まだ戦える。そう判断したベカはアーモに下がるよう指示をだした。しかし、アーモは一歩も引かず、まるでベカに乗れと合図を出すように、背中を地面に近づけて喉を唸らせた。


「お前も戦いたいのはわかる。でも、下がっていてくれ」


 上に向かって吠えるアーモをよそに、ベカはゆっくりと敵との距離を詰めた。アーモは命令を守り、しっかりとその場で留まっている。敵であるコリバンは笑みを浮かべた。それをベカは見逃さなかった。何かある。全神経をつかって警戒した。


 洞窟内が暗くなった。周りをみた。暗くなっているのは、自分周辺だけで、アーモ周辺には光が若干さしている。ベカは上を見た。岩が落ちてくる。


 地響きと、土煙が同時に発生した。


 土煙は時間をかけて少しずつ晴れていき、やがて洞窟に薄く白い光が入り込んでくる。辺りには岩の破片が散っている。

 ベカは起き上がった。周囲に落とされた岩はない。攻撃が外れたのか? それは誤りだった。


「アーモ!」


 碧い鱗に包まれたドラゴンが、下敷きになっている。アーモだった。完全に気を失っている。アーモがベカを庇ったのだった。思い返すと、アーモは上を警戒しろと、忠告してくれていたのだろう。ああ、またやってしまった。だが、後悔している場合ではない。

 コリバンとベカは睨み合った。


「お前は、なんと矛盾した人間なんだ?」と口火を切ったのはコリバンだった。

「なんのことだ?」

「お前の動き、その震えている手。一体何人殺してきた? だがお前の瞳は殺しをしたことがない人間のものだ。とても無垢なものだ。俺が言うのもなんだが、お前は狂っているのか?」


 暗闇のせいで無意識に震えている右手をベカは横目でみた。


「さあな。覚えてねよ。それにお前の方が狂ってると思うぞ。こんなことしてな。大人しく仲間を連れて帰ってくれないか?」

「それはできない。俺はそこらにいるちんけな賊とは違う。使命でやっているんだ。帝国は憎まれ過ぎたのだ。いずれ滅ぶだろう。お前らのようにな」

「お前がお前なりの正義を貫いているのはよくわかった。でも、させないぜ」


 ベカは、地面に刺さっている、剣を手に取った。


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