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なにか

昨日のことなど何もなかったかのように当たり前の朝が来る。

「朔ちゃん、昨日は一人にしちゃってごめんね」

槙が少しわざとらしくすり寄ってくる。

「はあ。だから毎回毎回朝からそんな大声出すなって言ってるだろう。」

ったく、昨日の今日なのに。

「朔ちゃんがなんか意味ありげに桜を見つめてるから昨日寂しかったのかと思って。」

槙は口調や声色はふざけているが真剣そうな顔をして、こちらを見ている。

「寂しかった、かもな。」

「さくちゃん…朔ちゃんがでれたー可愛い」

ああ、もう、こんなこと言うんじゃなかった。そんな後悔もむなしく翔がやってきてしまった。

「ねえ、翔!聞いて!朔ちゃんがでれた!昨日僕がいて寂しかったんだって」

「朔、ついにおまえ、、」

はあ、今日も朝から面倒な。

「翔、その先なんか言ったら軽く殺すよ。」

とびっきりの笑顔を付け足してみた。

「その顔はやめろって、、悪かったよ。」

「わかってくれてよかったよ。」

そんないつもの風景に誰にも気づかれないように目を細めていたらいつの間にか教室までついていた。ああ、こんな日々が続けばいいのにという願いはむなしく俺の、一つのこころに溶けて消えていった。

「さくちゃん、朔ちゃん、さく、さく?どうした。」

おれはそんな思いにふけっていたか槙が俺のことを心配そうにのぞきこんでいることに気づかなかった。

「朔、昨日なんかあった?」

「なんも。いつの通り帰ったよ。」

そう、いつも通り。いつもどおり。窪田とのことなんて言うべきじゃない。まだ、だから。

「朔、俺が何も気づいてないとでも思ったか。」

分かってる。槙に気づかれないわけがない。

「思わないよ。」

「っなら。」

「槙。いっただろう。まだ、だ。それにこれはお前らの問題じゃないんだよ。俺たちの問題だ。」

そう、でも、確かに破笠家には言っておいたほうが良いか。

「槙、おれ、今日お前の親父さんに会いに行くわ。」

槙はそれを聞くと何かを察したようで口を真一文字に結んだまま静かにうなずいた。


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