とりかぶと3
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「おまえ、何を知っている。」
窪田に向かって言葉を投げかけるとさっきの楽しそうな笑みが嫌に耳に響く笑い声へと変わった。
「ああ、楽しい。ついにメッキが剥がれましたね、桜。」
桜。さくら。サクラ。咲良。ああ、その名前で、しかも桜の木の近くで呼ばないでくれ。頭が痛い。割れそうだ。どうかしてしまいそうだ。
「メッ…キ…」
「すみません。私は人間嫌いでして、人間のふりをしているあなたを見ているとどうにもイライラしてしまいました。」
人間嫌い、ね。
「お…まえ…、ど…ちら…だ。」
「そこまでのダメージを受けられるとは思いませんでした。これでは、少し話しづらいですね。」
窪田は何かを思案したようなかおをして指をならした。
「おまえ、何をした。」
「何をした、とはひどいですね。楽になるようにして差し上げただけですよ。」
確かに、先ほどまでの割れそうなまでの頭の痛さはまるで嘘だったかのように消え去っていた。
「少しいじめてしまいましたが僕は今日のところは普通にお話をしに来ただけなので。」
今日のところは、か。
「ああ、さっきの質問に答えなければいけませんね。どちらかと聞きましたよね。答えはどちらでもないです。いや、どちらでもある、というのが一番正解に近いのかもしれませんが。」
どちらでもなく、どちらでもある。どういうことだ。そんなことはあり得ない。二つは似ているが全く異なるものであってどちらにもなりえることなどないはず。
「腑に落ちない顔をしていますね。これならわかりやすいですかね。“あなたは私に死をあたえた。”」
それは、その言葉は確かにトリカブトしか知らないもの。やはりとりかぶとではなくトリカブト、なのか。
「大変でしたよ。貴方は貴方特有の力があるからわからないかもしれませんがそんな特権僕なんかにはなかったですし。まあ、スミレが橤の家として残れたことが功を奏したというところですね。」
スミレが残れたことが功を奏した…。どういうことだ。
「どういうことかと聞きたそうですね。」
うふふ、とくすりとほほ笑んで言う窪田。
「俺は確かにあの時お前に死を与えた。」
「覚えていらっしゃったんですか。菊花から聞いた話だとあまり前のことは覚えていないようでしたが。」
「さあ、どうだかな。」
覚えている。いや、思い出した。さっきの言葉で。俺は確かに殺った。
「そうですね。殺られましたよ。確かにね。でも僕たちは“菫”です。コインの裏と表はどちらかだけが死ぬことなんてありえないんですよ。表裏一体というところです。僕は、僕たちは片方に命がある限り死ぬことはない。そして、スミレが殺されることはない。まあ、さすがにあなたにやられたので完璧に元通りというわけにはいきませんでしたが。」
にやにやとしている窪田のその表情からは何を考えているかは読み取れなかった。
じゃあ、今目の前にいるこいつは何だ。完全ではないが人間でもないこいつは。
「僕はまあ、幽霊みたいなものですかね。今の橤族は橤族とはいっても所詮人間ですから。ちょっとばかし体を借りているんです。」
人間の体を借りる…そんな力聞いたことがない。
「誰にも言ってなかったんですけどね。特別な力を持つのが自分だけとは思わないでください。」
トリカブトの力など知らない。
「僕の毒は全身に回ると僕が借りるのに気持ちの良い環境になるんですよ。つまり、そういうことです。」
何をしに来た。なぜ今日。そんな力をどうやって長年隠せた。こいつの目的は。いくら頭の中で考えを巡らせようとも答えは出なかった。
「お前。何しに来た。」
「挨拶。というところですかね。あなたに僕のことを知ってほしかったみたいな。今日はこれで以上です。また、明日、学校で会いましょうね、朔さん。」
窪田は今日の朝教室であいさつをした時のような混じりけのない笑みを浮かべると去っていった。俺に少しの疑問と違和感を残して。




