とりかぶと 2
見てくださっているかたいらっしゃるのかな… ついつい放置してしまいましたこの小説…ちゃんとやりたいのに…頑張ります
少し昔のことを思い出す。なにかがない。俺の中の何かが明らかに抜けている。そんな風にぼーっとしていたのがいけなかったのだろう。帰ろうとした俺の後ろに、窪田登里が不敵な笑みを浮かべながら立っていた。
「こんにちは。今日はもうお帰りですか。」
「そう、ですね。今日は授業も終わったので帰ろうと思っています。」
俺は戸惑いながらも何ともないふりをして答えた。
「そうですか。少しお話をしたいのですが時間はありませんか。」
「特に予定があるわけでは無いので大丈夫ですが。」
俺は知りたいと思ってしまった。この男は何なのか。どうしてここにいきなり現れたのか。
「それは良かったです。こんな廊下でお話しするのもなんですから移動しましょうか。」
窪田はそういうとすたすたと歩き始め、俺はただ無言で着いていった。窪田登里はしばらく行ったところで立ち止まり振り返った。
「ここらへんでいいでしょうか。」
「どこでもいいですよ。」
あたりはとくに何もなく、ただ枝垂桜が咲いていた。
「ここはあなたにちょうどいい場所じゃないですかね。」
窪田は俺が枝垂桜を見ていたのに気づいて含みを持たせた笑顔で言った。
「枝垂桜は確かに好きですがお似合いといわれるとは。俺も男なので少し気恥しいです。」
なぜそんなことを言うのか。こいつもともと何かあるやつに違いないとは思っていたがこいつ何を知っている。警戒する俺をさしおいてまた居心地の悪くなるような笑みを張り付けたまま窪田は言葉を紡ぐ。
「そういうところですよ。そうやってごまかすところがあなたにお似合いだと言っているんですよ。」
「ごまかしてなどいませんよ。本当のことを言っているだけですよ。」
「本当のこと、ですか。」
窪田は俺に向かって疑うような笑みを向けている。こいつはどっちだ。
「なにか言いたいことでもあるんですか、窪田さん。」
「朔、と呼ばれていましたね。」
「ええ、俺の名前は後にも先にも朔だけですよ。」
「今のあなたは。ですよね。」
「さっきから遠回りなことばかり。何を仰りたいのかわかりません。はっきり言ってくださいませんか。」
こいつが何かを探ろうとしているのは分かるがこちらだってそう簡単に教えられはしない。まだ時じゃない。俺には今のこの一瞬が愛しい。俺は弱いからまだ手放したくないと願ってしまう。
「随分と察しが悪くなったものですね。平和ボケですか。」
「今日あったばかりの平民の生徒に随分な言い草ですね、窪田さん。」
本当にこいつは嫌な笑みを浮かべる。こいつはとりかぶとなのかそれとも、トリカブト、か。
「菊花から聞いてはいましたが本当に人間のようですね。本当は人間などではないくせに。」
「なにをおっしゃるんですか。人間ですよ。」
俺は、人間だ。今は人間、なんだ。槙とも話した。
「憐れな方ですね。自分のこともまともにわからないだなんて。そんなことでは時間の問題ですね。」
何のことだ。こいつは何を言っている。
「時間の問題、とは。」
少し威嚇するような声色をまぜて言う。それを見た窪田は嫌ににおう笑みを浮かべていた。




