菊の花に会いましょう。 前編
結局投稿するのに時間があいてしまいました…
長くなりそうだったので前編後編に分けます
学校につくとそこにはいつもの朝が訪れているように見えた。誰も暗い海の底に何が起こっているかなんて知らないのと同じ。人間は自分の日常などただの表の面でしかないのに気づかないで、自分のそのたった一つの日常の平和にいつだって浮かれる。誰も知らない。嵐の前はいつもと同じかいつも以上の晴天が広がっていることなんて。
「はよはよ~。今日もお前ら一緒かよ。仲いいなほんと。」
「おーはよー翔。なになに。僕と朔ちゃんが仲よすぎて嫉妬?嫉妬なのかな?翔ちゃん可愛いね。」
「ちげーよ。おい、朔こいつめんどくさいんだけど。」
「俺はパス。」
こういう時は関わるとめんどくさい。
「さくーパスとかいうなよーこいつめんどくさいんだって」
「翔、めんどくさいだなんてひどいなぁ。朔ちゃんもパスとか僕の扱いひどくない?」
「まきにはこれくらいでちょうどいい。」
「お前らほんと仲良いよな。」
翔がにこにこしながらこっちを見ている。
「お前らほんとは橤族かなんかだろ?」
少しからかうような調子で言ってくる翔。
「そんなんじゃないし。橤族なんかと一緒にすんなよ。」
一瞬、槙の周りの空気はまるで凍り付き真っ暗な海の底に沈んでいるような眼をしていた。しかし、翔はその変化に気づかないようだった。
「まあまあそんなこというなって。橤族の人たちはなんか繋がりあってていっつも一緒だからお前らもおんなじようなもんだなって言っただけだよ。しかもこの国の中心はいつだって橤族なんだから。それに、この学校にはあのお菊様がいるわけだし。まさかの同じ学校同じ学年だぞ。聞かれたらやばいって。しかも橤族と言ったらみんな成績優秀眉目秀麗性格良しの三拍子で好きじゃない人なんていないんだから。」
興奮気味に言う翔は何も間違ってはいない。橤族はこの国において特別な存在だ。花のあしらわれた家紋を持ちその花の精霊を加護に持っている。そして彼らの事実上のトップが菊の紋を持つ通称“お菊様”のお家柄だ。そんな家の人間が同じ学校のしかも同じ学年ね存在しているのだ。普通ならば翔のように興奮するだろう。普通ならばの話だが。
「はっ。どうだかな。僕は好きではないけどね。なんかお高く留まってそうだし。うちの“お菊様”まるでピンクの菊のようだよ。」
槙は少し憎々しげにそして自嘲気味に言い放った。
「ピンク、ね。お菊様にお似合いじゃないか。“甘い夢”ってさ。この学校にいることで俺たちに甘い夢見させてくれているし。ま、あれだろ?槙にはなんていったって菫の君がいるからそっちにしか興味がないんだろ?」
翔は甘い夢の本当の意味を知らない。いや、それでいい。それが幸せなはずだ。それにしても菫の君、ねぇ。
「ああ、日詰ね。うん、そうだな玲美はかわいいよ。でも、あいつは妹みたいなもんだよ。」
「ちっ。はいはい、かわいい妹がいてよかったな。あの日詰玲美を呼び捨てにできるのはお前くらいだよ
きっと。っておい、朔どこ行こうとしてんだよ。」
「いや、二人で盛り上がっているし。俺いらないだろ。俺はもう教室、行くから。」
そうして教室に向かおうとして踵を返すとすこし菊の薫りがした。
「はあ...遅かったか。おい、翔も槙も早く行こう」
「なんだよ、」
「朔ちゃんの仰せのままに。」
菊の薫りがするということはお菊様がやってきた証拠。その精霊だって来ているのもしかり、だ。




