表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
京都学生格闘譚  作者: 真曽木トウル
第7話 サークラ美少女を護衛せよ
99/145

サークラ美少女を護衛せよ(10)



 教室のなかにいた男がひとり、ふたり、血相を変えて、ついたてへむけてバタバタと走る。



『わかった。わかった。まさか初めてだと思わなかったからさ。

 俺が、責任とって付き合うから』


『てゆーかー。

 わかってなかったなんて、ぜったい嘘だろー。

 お前も、男と飲むってそういうことだってわかってたろ?』


『学校で教えなくたって、常識っていうかー』


『どこで習うか? バカじゃねぇの。みんな、知ってるって』



 そこの機械から鳴っているらしい音を、必死で止めようと、音響機械をいじる。

 だが、彼らが乱暴にコードを引き抜いても、音はずっと止まらない。



(………………これは………………)



 ふいに和希を、吐き気とめまいが襲った。

 つまり。和希が止めたことと、同様のことが起きてしまっていた。

 それも未遂じゃなく?

 天沼紗紅の身に?


 天沼紗紅はぴんと背筋を伸ばし、一点の恥じる思いもないとまっすぐに部長を見つめている。

 部長の顔からは血の気が引き、周囲の部員たちは、ざわざわと話している。



「なんで!?

 なんで止まらないんだよ!?」



『部長に言う?

 どうぞー。俺たちが正しいっていうから』


『えーもう、なに、仲間にそんなこというなんて傷つくわー。気持ちよくなかったから後からそんなこと言ってんだ?』


『後だしでレイプだのなんだの、女ってマジ卑怯だわ~』



 キィィィィィィィィ…………



 また響く、奇音。



『なんで、そんな、みんなに迷惑がかかるようなこと言うのよ、天沼さん?』



 音がつぶれているが、部長の声に近い。



『あなたが悪いんでしょう?

 あなたみたいに綺麗な子がそんな格好でいっしょにお酒をのめば、男子なんて発情するに決まってるでしょう』


『知ってるのが当たり前でしょ? 男は狼だって。

 知らないあなたのほうが非常識なのよ。自己責任よ』


『だから、いい加減そんなおおごとにして、みんなに迷惑かけないで。この、大事な時期に』



「これだ!」



 派手な音を立てて、男子たちが音響機械を倒す。

 そこには、大音量を発するスマートフォンが隠されていた。


 止め方がわからず、男子の1人がスマートフォンを壁に叩きつける。激しい破壊音を立てて、ようやく、録音された声は止まった。



「………………………これは、これはね…………」



 部長は、あわあわと、周囲の部員たちを見回し、なにか言葉を探しているようだ。

 部員たちは、それぞれさまざまな表情をしている。

 部長を冷ややかな眼で見ている者、紗紅のほうに引いているもの、いたたまれない表情の者……。



「そんなことで、みんな巻き込んで復讐なんて、サイテー」


 ポツリと、部員の女が誰か言った。

 その女の頬に、隣の女が強烈な平手打ちを食らわした。


「何がサイテー!?

 サイテーなのは、お酒で人を襲う鬼畜に決まってるじゃん!?

 ことなかれ主義で隠した部長も、サイッッテー!!!」


 その叫びを皮切りに、その場にいる者たちが、それぞれに思いの丈をぶつけあい始めた。


「だからって、みんな巻き込んで、サークラしていい理由になんかならないだろ」


「うーわ、よく言う。後輩リンチかけた人が!」


「なに、お前、天沼さんのことヤったの!? 死ねよ!!! マジ死ねよ!!!」


「っなんで? なんでわたし、何も知らなかったのに、巻き込まれなきゃいけないの? 巻き込まれて彼氏もいなくなって……」


「部長!!!

 なんで、隠したんですか!?」



 部長は数名の女子たちに掴みかかられる。

 加害者らしい男子たちは……おそらく、紗紅の信奉者たちなのだろうか、これまた数名の男子たちから殴る蹴るの暴行を受けている。


 ……その騒動を、紗紅はかわらぬ微笑みで、眺めていた。



「これが、キミの目的?

 こうやって、このサークルを潰すことが」



 和希は紗紅と同じ方を向いたまま、尋ねた。



「いいえ?」



 気がつくと、紗紅は、ポチポチと手元のスマートフォンで、なにか操作をしていた。

 SNSかなにかに投稿しているようだ。


 …………って!?



「拡散完了♪」


 微笑みながら言った紗紅のかわいい声を、この場にいる者は、和希以外、誰ひとり聞いていなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ