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京都学生格闘譚  作者: 真曽木トウル
第7話 サークラ美少女を護衛せよ
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サークラ美少女を護衛せよ(6)

◇◇◇


 和希は「ふつうの女の子」の感覚がわからない。


 不文律になっているという女同士のルールやらマナーが見えない。

 スカートを着れない。高校時代は男子の制服で通学した。今も、体の露出はかなり制限している。

 外に出る時は常に、敵が自分を狙っている前提で行動してしまう。

 下手に注目を集めないように、男に目を付けられないように。


 大学に入り、慶史と出会い、その存在が近くにあることで、和希自身の状態もだいぶ安定はしてきた。

 しかし、今も、かつての被害から自由にはなれない。


 継続的な治療、服薬が欠かせない。



 男に気を持たせるような態度をとるな。



 かつて被害にあった和希自身が、この言葉の理不尽さを、一番よくわかっている。

 

 わかっていながら、天沼紗紅に対してこの理不尽な言葉を口にしてしまったのは、どこか、彼女の態度に、危うさを感じたからだ。


 スリルを、手のひらの上で転がして遊んでいるような。

 一歩間違えば、和希のような目に遭いかねない怖さがあった。

 だから、自分でも吐くほど嫌いな言葉を、思わず口にしてしまったのだ。


 和希が最終的に承諾したのは、別の理由ゆえではあったが。

 天沼紗紅が、何かの被害に遭ってほしくはない、という思いは、確かに、あった。



◇◇◇



 しかし。そうはいっても。だ。



「ねぇ、ちょっと、多すぎないかな?」



 和希は言いながら、後ろにいる男子学生の首を上段後ろ回し蹴りノブンデパンデトルリョチャギで蹴り刈った。


 さすがに大学構内なので、力は20%程度に加減しKOを避けたが、蹴られなれていないらしい男子学生はそれでも倒れこんで、地面で痛い痛いとなきわめく。


 左右からくる敵をジグザグに突破すると、まず1人、足先を走らせるローキック。


「ッ!!あ、ガっ……」


 腰を入れたフルコン空手の真骨頂ともいうべき重いローキックとは、重さはくらべものにならないが、動きを止めるのにじゅうぶんだったらしい。


 その肩を、ぽおんと力を入れて和希は押す。


 もう1人の敵は、自分の側に倒れてきた味方の身体に面食らい、気をとられている間に斜めに回って身を沈めた和希に、腹に肘うちを食らう。


 本来の和希のパワーからはだいぶ手加減した打撃ばかりだったが、3人、戦意を喪失して地面に転がった。


 ちなみに今、大学の昼休みだ。

 周囲に人だかりができている。

 目立ちすぎる。

 っていうか絶対誰か通報している。



「良かったぁ。助かりました。

 ありがとうございます」



 我に返り、花のように微笑む紗紅の手を掴むと、和希は早足で一番近い食堂を目指した。



「私、大学の構内ではあんまりこれをやりたくないんですけど?」


「大丈夫ですよ。

 正当防衛の範疇はんちゅうに入ります」


「嘘だよね? または刑法の知識なしに言ってるよね!?」



 敵は女子だけかと思いきや、結構な頻度で男子もやってくる。

 この子は一体、何者なんだ?



「いい加減教えてよ。

 キミが本当は、一体何をしようとしてるのか」


「前にお話しした通りですよ?

 男の恨みってコワイですよね」



 嘘とは思わない。

 確かに、襲ってくる男たちは、しばしば振られた恨みを口にしている。

 紗紅に裏切られたとか、気があるようなそぶりをされたとか、紗紅を責める。しかし。


 和希の後輩には、鈴鹿尋斗すずかひろとという男がいる。

 彼もまた、顔がよすぎて、本人はなにも悪くないのに、いるだけで女たちが戦い、ストーカーにもなり、それらのトラブルから前の大学を辞めざるをえなかったような男だ。


 鈴鹿は、紗紅のように笑ってはいない。



「とりあえず、食堂で早めにごはんを……」


「すみません、足……」



 和希は紗紅を振り向く。

 華奢なハイヒールの靴。細い足が、ちょっとよたっている。

 速く歩くのはつらいらしい。

 こういうところでも女心のわかっていない自分を痛感する和希。


 たとりついた南の食堂は、こみあっていた。

 多くは1回生らしく、やはりどこか高校生っぽさが残るというか、あどけない。

 2回生の和希でさえ、そう感じる。

 若さ、というのは、たった1年の差でも伝わるものなのらしい。


 人ごみの中、どうにか紗紅と列に並びながら、久しぶりにここで食べるな、とそんなことを考えていた和希。



「天沼さん?」



 聞き覚えのある声。

 声がしたほうに、和希は目を向ける。



「…………え? 和希さんもですか!?」



 びっくりした顔をこちらに向けていたのは、慶史だった。



◇◇◇

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