サークラ美少女を護衛せよ(3)
◇◇◇
-翌朝、1限講義前ー
「あーもしもし、慶史?」
大学構内に入ったところで、和希は自転車を下りて、慶史に電話をかけていた。
『おはようございます。
昨日はありがとうございました!』
慶史は元気よく電話に出た。
「いや全然。こっちこそわざわざ寄ってもらってありがとね。
えーと。それでさ」
昼ごはんに誘って、同級生についての話を聞く。そのつもりで電話をかけたのだ。
そもそも和希は慶史と仲がいい。
1対1での食事もそれこそ文字通りの日常茶飯事。
とはいえそれだけに、別の目的ゆえに食事に誘うのは、若干の後ろめたさがつきまとう。
「……今日、昼ごはん一緒にどう?」
『あ、はい。和希さんが朝からそういうお電話、珍しいですね?』
「え、そ、そうかな…?」
和希は慶史の講義の場所を聞き出し、構内にあるカフェテリアを提案した。
「じゃあ、昼休みに、入り口で待ち合わせで」
『はい! ん、え?
あ、すみません、ちょっと』
急に、慶史が電話口から離れた。
近くにいた人間に何か話しかけられたらしい。
なんだろう?
『あ、あの、えと。
すみません、1人追加でもいいですか?』
「へ? えーと。うん。大丈夫だけど。誰」
『ええと、その、同じクラスの……』
ふと、何だか嫌な予感がした。
けれどとりあえず、続く言葉を和希は待つ。
『昨日、連れていってた、女の子です』
「………………………………」
なんだと。
◇◇◇
「………………………………………………」
カフェテリアのテーブルに料理が運ばれてくる。
見た目にもこじゃれたランチ。普段の学食の予算よりやや高め。
それを見ながら、なんだろう、この状態は、と和希は内心つぶやいた。
同じテーブルに、いつもの後輩、今井慶史がいる。
それに加えてもう1人。
昨日会ったばかりの美少女が、柔らかに微笑んでいる。
「いただきます」
きれいな指の両手を合わせて、彼女はソプラノフルートの音のような声で言った。
美しい仕草で、ナイフとフォークを扱う。
和希も、あまり見入りすぎないよう気をつけて、食事に手をつける。
確かに、知有には、この美人のことを探るように頼まれた。
とはいえ、和希としては慶史とご飯を食べながら聞き出そうと思っていたのであって、まさか当人が同席するとは想定外だ。
慶史とは同じクラスなのだから、同じ講義を取っていて、同じ教室の中にいるのは、まぁおかしくない。
しかしなぜ、その教室の中でも、電話の会話が漏れ聞こえるほどの近くに当たり前のように彼女がいたのか?
「天沼さん、っていったっけ」
美少女は、姓を呼ばれてうなずく。
真珠のような、きめの細かい肌。美しいけれど、目が大きくて稚さがのこる顔立ちは、どこか庇護欲をかきたてる。
昼の光のもとで見ると、瞳が、豊かな水をたたえた湖みたい。きれい。
「天沼紗紅です。
ちょっと変わった名前でしょ?」
そう言って、笑む。
優しい色の茶髪は、完璧に計算された曲線を描いて胸元と背に垂れ。
膝丈より少し長い、コンサバでちょい甘めのテイストのワンピース。そこにファッション誌のような絶妙なバランス感覚で合わせられたカーディガン。
華奢な手足、少なからず大きな胸とキュッと締まったウエストのスタイル、それを引き立てるピンヒールの靴。
生まれもった容姿が飛びぬけている上に、おしゃれがさらに完璧という、女子戦闘力高い美人。これは女の和希でも緊張する。
よく慶史は、彼女と普通に話して、普段通り食事をバクバク楽しんでいられるな、と、和希はちょっと慶史を尊敬した。




