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京都学生格闘譚  作者: 真曽木トウル
第7話 サークラ美少女を護衛せよ
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サークラ美少女を護衛せよ(2)



「和希さん、メール、ありがとうございました」


「どうしたの? 慶史。

 誕生日祝い、もう終わったの?」



 和希は見知らぬ美少女に会釈(えしゃく)を返してから、慶史に話しかける。

 慶史の笑顔はいつも通り変わらない。

 普段より高揚(こうよう)している、というようなこともない。

 先輩である和希に対して、普段通り背筋を伸ばして、礼儀正しく対峙する。



「テスト期間なので短めに切り上げようということになって、さっき終わりました。

 これから、同級生を家まで送ってから帰るところなんです」



 今井慶史は、和希が一番仲がいい後輩で、工学部情報学科の1回生男子である。

 172cmの和希よりも少し背が高く、シルバーフレイムの大きめのレンズの眼鏡とあたたかみのあるマホガニー材のような色合いの瞳、地毛の色そのままのダークブラウンの短髪が特徴の少年だ。

 そして本日、19歳になったばかり。



「ただ、今日、家から誕生日祝いの荷物が届いて、ふだん道場を貸してもらっているおうちへのお礼に渡しなさい、って、お菓子が入っていたので。今日のうちにこちらに届けとこうかと」


「……キミ、家族にここの話とかもしてるの?」


「ええ。和希さんの話もしてますよ。名前は伏せてますが」



 仲がいい家で育つと、そういう会話を、離れた家族とするものなのか。

 家族と呼べる存在がいないにひとしい和希には、想像できない世界である。


 慶史は、上泉邸の家主である知有に、手提げ袋を差し出した。



「えびせんべいと、ラングドシャ。

 よかったら食べてね」


「う、ん……」



 複雑な顔で受け取る知有。

 その横から、和希は、慶史への誕生日プレゼントの手提げ袋を差し出した。



「私のほうも。これ。プレゼント。

 無難に使えそうなものにしといたよ」


「あ、ありがとうございます。なんだろ」



 開封したそうに袋をちらっとのぞいたが、後ろで待つ少女のこともまた気にかかったか、慶史は手提げ袋を自分のバッグの中にしまった。



「ありがとうございました。夜分失礼しました。

 それじゃあ、また」



 微笑み、丁寧に頭を下げると、慶史は待っていた同級生を促し、玄関を出ていった。

 玄関口からしばらくは明るいし、外まで見送りにいかずとも良いだろう。さて。



「もどりますか、やぬしさ………ん?」



 知有に声をかけようとして、その、何とも言えない顔に和希はぎょっとした。

 ひとことで言うと、泣きそうであり、怒っていそうであり、またへこんでもいて、爆発寸前の何かを抱え込んだ顔でもある。一体、どうした?

 ……って、理由は、あれか?



「………………和希ぃ。

 あの女の人、知ってるか………?」


「私は見たことはないです。同級生って言ってましたね。

 あれじゃないですか、ほら、前に話していた、クラスで唯一の女子。

 頭のいい美人さん、っていう。

 たおやかな感じの、お人形みたいな綺麗な子でしたね。

 歩く姿は百合の花、って言葉が似あいそうな」


「とても、とてもとても、美人だった……」


「えーと。

 恋愛関係かどうかは、わからないんじゃないですか?

 女の子を家まで送ってあげるとか、私もしますけど。

 まぁ、そりゃ家主さんが慶史のことを気になるのはわかりますが……」


「うーん…………………………………………ん?。

 和希!? いまなんて!?」


「あ。いや、あの……」



 婉曲(えんきょく)な言葉を使ったつもりが、わりとダイレクトに核心を突いてしまった。

 後悔先に立たず。

 ぐいぐい知有に腕を引っ張られて、和希はやむなく、廊下にしゃがんで知有と目線を合わせる。



「…………あの、えーと、その。

 家主さん、慶史のこと、好きですよね?」


「なんで!?」


「わかりやすいので。

 慶史にいまのところばれてなさそうなのが、逆に奇跡です」


「…………慶史には、ばれてない……??」


「と思います。

 慶史と一番仲がいい私が言ってるので信じてください」



 それが安心するツボだったのか。

 はー……と、息をついて、知有もぺたんと廊下にしりもちをついた。

 女心、難しい。



「……慶史、ああいう女の人のこと、好きなんだろうか……」


「まぁ、本人に聞かないと、その辺は……」



 男と女の間には友情は成立しないとか、男と女ならば恋愛関係になるのが普通、という考え方を、和希は嫌悪している。


 だがさすがに、こどものかわいいやきもちまでそんな突っ込みを入れる気はない。



「和希」



 すっ、と、知有はいずまいをただすと、綺麗な正座で、指を揃えて、土下座した。

 さっきまでぐちゃぐちゃに泣きそうな顔だったのに。

 腹を決めたのか、顔まできれいに整えて。頭を下げる。

 それは、大人でもなかなかできないほどに、綺麗な土下座だった。



「家主さん?」



 なんだ、いったい、この小学生は何を頭を下げているのだ?



「この上泉知有、一生のお願いだ。

 どうか、あの女の人がどういう相手なのか、慶史に聞いてきてくれないだろうか?」


「…………………………はい?」



◇◇◇

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