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京都学生格闘譚  作者: 真曽木トウル
第6話 祇園祭の夜の貴女は
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祇園祭の夜の貴女は(8)

◇◇◇



「…………なん、なんだよ、お前……」



 テレビ画面のむこうからでも出てきたのではないか、と思うような度肝を抜かれるほどのイケメンに、言葉巧みに、路地に誘い込まれた10人近い男。彼らは、さらなる驚異を体感することとなった。



「ちょっと遊んでやってるだけだが?」



 路上、とうとう息切れし、また1人脱落して地面にへたり込む男に、涼やかな顔を崩さない鈴鹿は、平気か?と声をかける。

 少々のけがはともかく、10人ほどの男たちに、大きなけがを負っている者は1人もいない。

 しかしそれでいて、元気で立っている者も1人もいない。

 ようやく、かろうじて立てているのが、4人。いや、3人に減った。



「お前、ふざけてんのか?

 さっきから、避けたり受けたり、足かけて倒したり、ばっかりじゃねぇか!」



 かろうじて残った男が、声を荒げる。


 その通り。

 鈴鹿尋斗は、突きと蹴りを使っていない。

 しかし突きと蹴り以外のすべての格闘技術を駆使している。

 かわし、避け、攻撃をさばき、受け流し、転倒させ、あるいは引き倒したりして。


 鈴鹿に対して攻撃をどれひとつ届かせることができず、かつ、持久力のない彼らは、鈴鹿を追い回しながら無駄に体力を使い切り、どんどん息が上がり、つぶれていっているのだ。


 圧倒的なまでの移動速度、持久力、そして体捌きの巧みさを誇る鈴鹿だからこそできる芸当である。


 そしてこうすることを選んだのは、鈴鹿にとって大事な理由があった。



「せっかくの祭りだからな。

 怪我人を出して水を差したくない」


「こい、つ……!」


「なんやねん、お前。なんで邪魔、するん……」


「おまえたちこそ、三条さんに何の用だ?」


「はぁ? 三条?」


(………?)


「誰やそれ。

 俺らが追っとったんは、あの優男やさおとこじゃ。

 あいつが、ひとの顔にこの傷残しやがったんじゃ、俺の男前の顔に……」



 リーダー格らしい男が、額から眉にかけて残る傷を指さし、乱暴に答える。

 鈴鹿は、彼の言葉をかみくだき、しばし思案して、結論を口にした。



「人違いだ」


「はぁ? 何ゆうてんねん、お前……」


「つまり、お前が言う『優男やさおとこ』と、さっき俺といた人の顔が瓜二つだというんだろう?

 あの人は女性で、お前が言っている『優男やさおとこ』とは別人だ。俺はその『優男やさおとこ』が誰かの心あたりもある」


「ほぉ? あれが女?

 女みたいな顔しとるけど、確実に男やないけ。

 人違いゆうんやったら、本人がどこにおるか教えてもらおうやないか!!」


 ぶうん、と、男が拳をふるう。

 鈴鹿は、今度はうごかない。

 やっと一発当てられるという達成感と、綺麗な顔をぐちゃぐちゃにできるというサディスティックな欲望にまみれた拳は、止まらぬ勢いで突き進み。


 ギリギリで、ちょい、と避けた鈴鹿の顔の横を通って、ビルの壁にぶち当たり、そのまま己の骨自体を砕くのであった。

 声なき悲鳴を上げながら、男は崩れ落ちた。



◇◇◇



「すみません、遅くなりました」


「おー!! よもぎのお団子!! ありがとう。

 遅かったから心配してたぞ」



 鈴鹿がお団子を買いに行ってから、だいぶ時間がたっていた。

 その分、山鉾や他の屋台を見るために、一行はだいぶ移動してしまっていたので、鈴鹿がお団子を手に無事合流してきたのを見て、安心と喜びで知有が歓声を上げる。

 慶史も、内心、ほっとした。

 なかなかお祭りは、非日常で人が浮き立つだけに、罠が多いと言えそうだ。


「あれ、大丈夫鈴鹿? なんか服が、土かぶってない?」


「問題ない、今井」



 和希に手を引かれた知有に、お団子を無事手渡した鈴鹿は、慶史と神宮寺の腕をそれぞれ引っ張る。

 そして、こそっと、話しかけた。


「狙われる理由は、三条さんと家主さんだけじゃなさそうだ」


「……え?」


「京都のどこかに、三条さんに瓜二つの人間がいる。

 そいつを狙ってきたらしい奴が、さっきいた」






(………………はい?)

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