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京都学生格闘譚  作者: 真曽木トウル
第6話 祇園祭の夜の貴女は
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祇園祭の夜の貴女は(4)




 祇園祭を楽しむ場合、出店などがある四条通りから攻めるのが定石だろうが、今回は和希の希望により、ひとごみを極力避けて、三条通りを西に向かっていた。

 山鉾があるのは烏丸通り付近。


 京阪三条駅からだと、結構な距離だが、浴衣組の足元は大丈夫だろうか?



「9世紀の貞観年間、疫病の流行に加えて富士山の噴火や地震が続いたりして、それを鎮めるために御霊会ごりょうえを行ったのが祇園祭の最初と言われてて。

 7月1日からは、祭礼の打ち合わせが各山鉾町でやってたり、くじで山鉾の順番を決めたりする。そのへんは非公開やけど、お稚児さんが八坂神社にお参りするイベントとか、舞の披露なんかはあるみたい」



「へぇ。そんなことをやってたんだな!」



 水上の説明に、元気に頷く知有と、


「1か月かけるって、そういうことなんですね」


対照的に、完璧に棒読みセリフで頷く和希。



「もう、三条ちゃんまったく興味なさそう」


「建築と庭と武器と合戦以外の和ものは全く興味ないですね」


「むしろ興味ないものがピンポイントやな。

 文学部の2人は、どっちか日本史興味ある?」


「一応俺は日本史志望ですが」鈴鹿が口を開く。「城と武具と戦術以外興味ありません」


「大体三条ちゃんと一緒やん」


「いや私よりだいぶ狭いですが」



 大学生たちがなかなか意識低い系の会話を始めている一方で、


「山鉾は、いつ頃から組み立て始めるんだ?」


夜のまちと、増え始めた人を、好奇心旺盛な目でみつめる知有の質問が、的確に飛んでくる。


 水上が知有の問いに答える。



「7月10日頃からかな。順々に組み立てるみたい。

 14日から、山鉾巡行の前夜祭にあたる宵々々山、宵々山、宵山と続くから、その間じっくり見れるわけね。あ、でも今井君は一昨日も来たんやっけ?」


「あ、はい。

 でもまぁ、クラスでの飲みがメインで一昨日はそんなにじっくり見られなかったので、ちょうどよかったです」


「慶史。この間も来たのか?」



 きゅ、と知有が慶史の手を引っ張って、こちらの顔を見上げる。



「うん。クラスのみんなとね」


「大学もクラスがあるのか。

 慶史のクラスのみんなって、どんな子たちなんだ?」


「……うーーーーん。。。男?」


「ん? 男?」


「女の子が1人しかいないから、まぁ、男子校っぽい感じのノリなのかなぁ、

 男子校行ったことないからわからないけど。

 高校も女子はそこそこいたから……」


「そうかぁ。

 その、1人だけの女の子は、どんな子なんだ?」



(ん?)



 いきなり変な角度から飛んできた知有の質問に、慶史は一瞬戸惑う。



「えっと、どんな子? うーん。

 頭のいい美人さん……?」



 予想していなかった問いに、慶史は、思い付くまま、語彙力のない返事をする。

 知有は笑顔のままだが、なんだかちょっとさっきまでと違って、顔の筋肉で笑ってみせている感じがする。



「その子は、この間も来てたのか?」



 急に、握った慶史の手を、ぶんぶん、と強く振り始める。



「えーと、あの……」



「はいストーップ」



 ふに、と、知有のやわらかいほっぺたを和希が摘まんだ。



「慶史が困ってるのでストップです。家主さん」



 慶史がいる側と反対側のほっぺたを和希に摘ままれ、ぐぬぬ、と和希をにらむ知有。



「そんな顔してもダメです。

 つい一昨日も祭りに来てたのに、時間つくって今日も来てくれたんですよ。慶史に感謝してますか?」


「…………むー…………」



 しょぼん、とうなだれた知有に、和希はほっぺを摘まんだ指をはなす。なんだか無性にかわいくて、つい慶史は笑った。


 そうこうしているうちに、烏丸通りまで到達し、視界に山鉾が入ってくると、知有は先ほどまでのことなど忘れたように歓声をあげた。

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