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京都学生格闘譚  作者: 真曽木トウル
第6話 祇園祭の夜の貴女は
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祇園祭の夜の貴女は(1)





 祇園祭の山鉾巡行の日も迫る、土曜日の午後。


 今井慶史は、1学年上のサークルの先輩女子である三条和希とともに、大学のすぐそばにある吉田神社にいた。


 神社の入り口には、ちょうどいい具合のそこそこの長さがある坂がある。

 そこで軽く、ダッシュの練習を重ねていたのだ。


 どちらかというと女子の中でも圧倒的に速いこの先輩は、今日は完全に付き合いで、慶史のフォームを直したり、タイムを計ったりなどしてくれている。



「……ど、どうでした……?」



 もう既に本数を覚えていないダッシュのあと、ゴールにいた和希の足元にへたりこみながら、慶史は尋ねた。



「うん。落ちてるな。

 休もうか」


「~~~!! ……はーい」



 和希は首にかけたストップウォッチを外した。

 計る担当とはいえ、この暑い中立っていれば、汗もかくだろう。



「とりあえず、5分休憩ね」



 うなずき、座り込んだまま、慶史は先輩の全身を仰ぎ見た。


 足が、長い。


 三条和希は、学生兼、格闘家。

 ITFテコンドー出身の女子ファイターだ。

 目立つのは、格闘家と呼ぶにはやや細すぎる体と、かなりの手足の長さ。

 Tシャツはやや体に沿った形のものだが、はいているジャージはおそらく男物で、足首までをしっかり隠している。



 ―――――時々、何とも言えない気持ちになるのは、慶史が、三条和希がスカートをはけない理由を知っているからだ。

 スカートをはくのが女の必須条件であるわけはないし、それこそ好きな服装をすればいい。だけど、和希の場合は、すこし、事情が違う。



「……あ、そうだ、慶史」


「はい?」



 和希が、慶史のとなりに腰を下ろした。

 ふだん、男との接触接近を極力避けないといけない和希が、慶史だけは、近い距離にいても平気のようで、その事実はほんのり慶史の胸をくすぐったくさせる。



「祇園祭、誰かと行く?」


「あ、はい。クラスの面々と行くことになりました。

 和希さんは、あれですよね。

 鈴鹿と神宮寺と行くことになるんです、よね?」


「うーん。

 まぁ……誰かに譲りたいことこの上ないんだけど……。

 正直、人混みが、不安」



 慶史は笑わず、うなずく。


 漫画のような話ではあるが、三条和希という女性は、多くの男(時々、女)からその身を狙われている。

 恋愛とか性的にという意味合いではない。……いや、その場合もあるにはあるけれど。

 倒すべき強者として、彼女を倒そうと狙っている男たちが数知れずいるのだ。

 そもそもは高校時代、最強女子高生などと勝手にネットニュースに書かれたことなどが原因らしい。



 そんな彼女は、この間のサークル内イベントの大文字山登り競争で1位になった。

 詳細は省くが、その結果、うちのサークルが誇る神宮寺と鈴鹿というイケメン2人と、祇園祭に出かけることになってしまった。



 現在のサークル内の女子の圧倒的多数は、この2名のイケメン目当てに入部したようなものである。

 色恋沙汰のトラブルを嫌う和希は、即日、辞退します、と、競争の主催者に言っていたのだが、結局辞退はみとめられないことになってしまったようだ。



 確かに、人ごみは、和希の身からすれば不安はあるだろう。

 一緒に出かける2人のうち鈴鹿は伝統派空手の出身で、和希も認めるかなりの手練れなのであるが……。



 慶史は剣道出身で、多少得物も使える。

 今は、和希にもらった四尺杖で杖術の練習中ではあるが。




「もし、クラスのと日が重ならないようなら、俺も行きましょうか?」



と、慶史は申し出た。


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