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京都学生格闘譚  作者: 真曽木トウル
第5話 武神の遺産と一族
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武神の遺産と一族(15)




「ほら、待機班!!

 あれをうてよ!!!」



 男たちが叫ぶ。

 しかし慌てたように飛んできた矢は、不規則に動く的に翻弄されたか、あわや仲間の足を貫通しそうになる。



「お、おい!!何すんだ!?」



 侵入者らが怒声をあげている間に、和希は槍を低くぶん回す。

 次々に足をやられた侵入者たちが転倒する。


 殺傷能力の高いクロスボウ。

 だが、それだけに、敵が味方から明らかに離れているか、仲間もろとも殺していいという局面でもないと撃てないはずだ。和希を狙って撃ってきた射手は、なかなかいい根性している。


 とはいえ。

 次の矢はなかなか飛んでこない。



(……クロスボウは連射ができない、って慶史が言ってたな)


 

 おそらく、先ほど和希たちが連続で矢を浴びせられたのは、複数の射手が撃ってきていたからだろう。

 待機班はいいとこ2人ぐらいか?

 


 そんなことを考えながら縦横に槍を振り回しているうち、敵が半減する。和希は、槍術はまったく素人なのでほとんど棒術の動きしかしていないのだが、槍、強い。


 残りは3人。

 残りの矢の数はわからないが、味方に当たりにくくなれば、狙撃手も遠慮なく撃ってくるはず。

 攻撃力より機動力。和希は槍を敵の1人めがけて投げつけるとそのまま、徒手攻撃に切り替えた。



「かはっ……」みぞおちを踏みつけるように蹴りつければ、そのまま相手は息も出来ずうごけなくなる。


 すかさず他の者が和希の後頭部を狙いに来たのを、気配で察知。

 ひゅっ、と、下から急角度の上段後ろ回し蹴り(パンデトルリョチャギ)を食らわせ相手がひるんだところを、軸足をはねあげ空中で回転しながら頭を刈る。サッカーボールが飛ぶかのごとく相手は和希の足に蹴り飛ばされ、そのまま気を失う。


 あと1人。



 グォンッ



 鈍い衝撃が和希の後頭部で響いた。


 当たったものは、ぽとりと落ち、玉砂利に当たってキィンと音をたてる。

 紛れもない、クロスボウの矢だ。



 目的から鑑みるに、人死にを出すと明らかにまずいはずなのだが。ほんとうに、なかなか、いい根性している狙撃手だ。

 当たったのが後頭部でよかった。真正面から来たら、頭蓋骨など貫通していたかもしれない。



「…………な。なんだよ、それ……」



 残りの1人が、和希が目深にかぶったフードを指差し、うろたえる。



「ああ、これ?」



 和希はペシペシとフードを叩く。

 これこそが、知有が持たせた武器その2なのだが。



「あなたは知らなくていいことですよ?」



 1人残された男が、自棄になって和希に突っ込んでくるのに対して、ちょいと避けた和希はそのまま加減して横蹴りを脇腹に入れた。



◇◇◇



「くッそ…………見えない………………」

 


 一方、上泉邸の南にある某民家の屋根の上。

 待機班、とは名ばかり。

 そこに残された射手は1人きりであった。


 他の男たち同様、顔をネックウォーマーのようなもので隠し。

 この暑いのにニット帽のようなものをかぶり。


 縦横無尽に動き回る黒い服の人物を、狙い続ける。

 あまりに速いうえに格好が黒いせいで、しばしば、見失ってしまう。



「あいつ……

 絶対当ててやる……」



 ぶつぶつ、射手は微かな声で呟く。

 味方に当たろうが構わない。

 死んだって、それぐらい覚悟でここに来ているはずだろう?



 庭を狙い続ける射手に、千載一遇の機会が訪れた。

 黒い服の人物を、2人の味方が挟むかたちになったのだ。

 数瞬、間違いなく攻撃に注意が向くだろう。

 そう判断した瞬間、矢を放っていた。


 矢の当たる位置は、もっとも理想通り。

 間違いなく首を貫通する軌道に、射手は高ぶり震えた。人を殺してしまえばもう後戻りはできないという事実に高揚していたのだ。



 …………が。



「……なん、だ?」



 間違いなく当たったはずなのに、矢はぽとりと地面に落ち、黒い服の人物は……よく見えないが、庭に立っている、ようだ。



「どういうことだよ、それ……」



 大きな独り言を言った射手は、次の瞬間、猛烈な怒りに襲われた。弦を強く引くとパチリと固定。次なる矢を……



 射手が傍らのホルダーに手を伸ばしたそのとき。

 後ろから延びてきた木の棒が、それをひっかけてひょいとかすめとった。


 あ、と思った次の瞬間。

 誰かの力の強い腕が、愛用のクロスボウを奪い取る



「よぉ不審者」



 気づけば射手は、自分より背の高い男2人に挟まれていた。



◇◇◇ 

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