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京都学生格闘譚  作者: 真曽木トウル
第5話 武神の遺産と一族
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武神の遺産と一族(14)

   ◇ ◇ ◇



「…………くッそッ。

 なんだこの雨戸は!?」



 上泉邸、庭。


 チェーンが外れた上に雨戸から引き抜けなくなったチェーンソーをぐりぐりと引っ張りながら、雨戸を罵る男たちがいた。


「応援を呼べ!」


「もう通報されてるんじゃないのか!?

 さすがに、俺たちは、撤収を……」


「大丈夫だ。すぐには警察は来ない」


「へ?」


「手を回して、別のところでも騒ぎを起こしてある。

 それも、京都のけっこうなお偉いさんが噛んでるそうだ。

 今頃下鴨署は、人員をどっちに割くかで、てんやわんやしてるところさ」


「そうか。なら」


 顔を隠した男の一人が、その場でどこかに電話をし始めた。


 上泉邸の庭の上には、さきほど和希たちが庭にいた折にはなかった縄が南北に張られている。

 ほどなくして、その縄をつたい、南から北から、数人の男たちが這ってきた。


 地面から4メートル前後。

 かなりの高さに張られた縄だが、T字になるように1本結びつけられた縄が、地面へと垂れている。そこを順々につたって、彼らは庭に降りてきた。


 縄を伝ってなので、大きな武器は持ってはこれない。

 大体みな手ぶらか、或いは小さな刃物などぐらいであった。



「しかし、チェーンソーがかなわないとはな。

 どんな根性悪いやつが作ったんだよ、この雨戸……。

 どう壊す?」


「要は、この雨戸を外せばいいんだろ?

 なかに金属が入ってるんなら、それごと、曲げてやる」


「おいおい、待てよ、手でいく気かよ?」



 仲間の言葉を無視して、拳に、金属入りの手袋を着けた大柄な男が、雨戸の前に立った。

 その体は、190センチほどもあるだろうか。

 胸はぶ厚く、体重は和希と慶史2人ぶんほどもありそうだ。


 ふっ、と息を吐く。


 男の左ストレートが、長年歴史を重ね屋敷を守ってきた雨戸に、叩き込まれた。


「へっ!?」


 仲間たちから驚愕の声が上がる。

 男の拳は雨戸を貫通…はしなかったが、バキリと砕いたのだ。

 貫通しなかったのは、むしろ、中に仕込まれた金属の柔軟性ゆえであった。


 さらに2発目。

 その拳は鈍器のように、さらに雨戸を割り砕いた。



「こりゃいいや。人間凶器だなお前」


「ある程度金属が見えてきたらひっぺがすぞ!!」


 侵入者どもが歓声をあげた。そのとき。



 闇に、ブォン……と風を切る音がこもるように響いた。



 どこから何が来た、と、彼らが音のもとを把握する前に。



「………………!!???」



 雨戸を先ほど砕いたばかりの男が、あたまに木の棒を食らって倒れた。



「なん、だ、これ!?」



 大男は確かに倒れた。しかし、敵の姿は見えない。

 彼の頭を、上から直撃したはずの棒も。庭のどこにもない。

 一体、どこから、誰が!??


 疑問だらけの顔で、一同顔を見合わせる。



 次の瞬間。



「おわあ!??」



 2人めの男がやられた。

 全員の死角になっていた屋根から降ってきた、黒フードを目深に被った人物に、長い得物をあたまに振り下ろされたのである。


「な、なんじゃありゃ!?」



 六尺棒よりもさらに長い得物。

 そして先に光る金属の刃に、一同は怯えた。



「な、なんだ、それ……」



「ちょっと卑怯でごめんなさい。

 パワー的に私が厳しそうだったんで、先に倒させてもらいました、そこの人」



 黒パーカーのフードをかぶって、ファスナーを喉元どころか顎もとまであげた人物……すなわち和希だった。

 和希は、自分の背丈より遥かに長い得物をくるくるとまわした。


 知有が持たせた武器その1。

 亡き上泉綱三翁が、若手の刀鍛冶の支援のために、戦国時代のものを復元して作らせたという、持槍だ。長さは約2メートル30センチ。

 切れないように刃は引いてあるが、先端が金属というだけで強い。それに加え、長いぶん、遠心力と重力が加算する威力。


 初めてさわったが、持つ位置によって動きは変幻自在。殴る武器として、びっくりするほど優秀だ。


 庭にいる中で立っているのは残り7人。



「おい、待機班!!射て!!」



 南の屋敷に向けて叫んだやつがいた。

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