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京都学生格闘譚  作者: 真曽木トウル
第5話 武神の遺産と一族
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武神の遺産と一族(13)



「行くな、和希!」



 自分の部屋から六尺棒をとりだし、座敷の方に向かう和希に、タブレットを抱えた知有が声をかけて止めた。


 廊下の先の方に、庭園に面した縁側を覆った雨戸が見えている。

 おそらくは北側か南側の家の2階から塀を越えて侵入したか、あるいは南北の家にロープか何かを渡して、庭まで侵入したのだろう。


 雨戸がキュリリリリリリと音をたてて、しかもあろうことか、刃先まで既に見えているのだ。



「家主さん、さすがに、チェーンソーを雨戸が防げるとは言いませんよね?」


「さすがに防げないとは思う。

 でも」



 知有が続けようとしたとき、


グリュリュリュリュリュ!!!


という怪音が鳴ったかと思うと、音が止まった。


 否、チェーンソーが止まったのだ。



「あの雨戸には金属も多少仕込まれているから、チェーンソーなんかで切ろうとしたら確実に壊れると思う」


「……なるほど?」


 ざわざわと、雨戸の向こうで話す気配がある。

 と、思ったら、ドォン…ッ、と、雨戸を重たいハンマーのようなもので殴りつける音がした。



「大丈夫。警察が来るまでに、雨戸を壊すことなんて、出来はしない」


「しかし……」


「相手はどんな武器を持っているかわからない。

 みんな怪我なく籠城に持ち込めただけでも、よしとしよう?」



 本当に警察はすぐ来るのか、という、漠然とした不安が和希の中に浮かんだ。

 以前の、鈴鹿のストーカーの時は、確かにすぐに来てくれた。

 しかし今回の黒幕は、どうやら影響力のある人間だ。

 もし、下鴨署の中に、息がかかったものがいたとしたら。そして、この間のように速やかに来てくれなかったとしたら。



 それ以上に。

 目の前、無惨にも、チェーンソーが突き刺さったままの雨戸を、和希は悔しく思う。


 あの、甘言を弄した、屋敷を売って欲しいという手紙たちを思い出す。

 本当にこの屋敷の価値を知って、それを欲しがる人間であれば、屋敷の雨戸をチェーンソーで壊すなんてことをするわけがない。


 つくづく。

 愛がない。


「……屋敷を、これ以上壊されたくないんです」


「和希?」


「ちょっと出てきてもいいですか?」


「和希」


 知有はぷるぷる首を振り、思い切り大きなバツ印を手でつくってみせる。


「お願いします。家主さん」


 和希が頼むと、知有はちょっと困った顔をした。


 あとひとおしかと思った。そのとき。



「そのこんじゃなくて…………べつの武器を持ってくれるのなら、出てくれてもいい」



 知有から、耳を疑う申し出があった。



   ◇ ◇ ◇

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