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京都学生格闘譚  作者: 真曽木トウル
第5話 武神の遺産と一族
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武神の遺産と一族(12)




「おとなりさんが主犯、ってことは、さすがにあってほしくないけどなー。

 …………いったん、リーダーのとこに戻るか」



 そうトオルが言い終わるか終わらないかのうちに、また、キン!!と鋭い金属音がした。


 トオルの足元から、だいたい身長ぶんぐらい離れたところに、クロスボウの矢が跳ねて転がる。



「やばい。

 角度的に、塀からこれ以上離れると狙える範囲に入るみたい」


「塀に沿って南側に移動しよう」



 和希が促し、慶史もうなずく。

 慶史は和希を受け止めるときに放り出したらしい四尺杖を拾った。普段大事にしてるのに珍しい。



「和希ッ!!」



 壁に沿って慎重に屋敷に戻ろうとする和希たちに、上から知有の声がふってきた。

 見ると知有は、警護担当者に付き添われて屋敷の屋根に登っている。



「和希、慶史! 早く戻れ!!」


「家主さん! 上は危ないです!!」


「わかってる。隠れながら早く中へ!!

 警察は呼んだけど、ちょっとマズイことがある!!」



 こちらを呼び戻すためだけに屋根に登ったのかこの子、危ないことするとか人のことを言いながら家主も大概なんですが、と、若干心中で呆れながら、しかし走る。



 キィン、キィン……!!


 キィン、、キィン、キィン……!!



 プレッシャーをかけるように、クロスボウの矢がたえず飛んでくる中走る。

 いったい何本飛んできただろうか。

 もうわからなくなるぐらい。


 道場の陰を通り、木や巨石の位置を確認しながら、縫うように走り、3人は靴を抱えたまま、屋敷の裏口からかろうじて室内に滑り込んだ。



 バタン


と、頑丈な裏口の扉を閉めて鍵を回した瞬間、どっと全身の力が抜けて、座り込んだ。


 そこは警護担当者の詰め所になっている場所で、既に今日の当番の警護担当者がそこに集まっていた。



「怪我はなかったか!?」



 たたっ、と知有がかけよってくる。


 和希が座り込んだのを案じたのか、真っ先に和希のもとに来た。

 もみじの葉のような小さな手で、和希の両頬を挟んで、大きな目をきょろきょろと走らせ、どこも怪我をしていないか確かめようとする。



「私たちは大丈夫です。

 そちらや、ハウスキーパーさんたちの避難は大丈夫でしたか?」


「ああ。

 近くにある秘密の別宅の方に無事移動できた。

 場所は和希にも内緒だけど」



 頷いた。

 知有が以前言っていたが、上泉綱三氏がこの家で武道家を保護していたときは、その武道家との因縁から、襲撃してくる輩がしばしばいたという。

 だからだろうか、この家にはまだまだ秘密がある。

 こういう非常時には、それが頼もしい。



「さっき家主さんが言っていた、マズイことというのは?」


「どうやら、この屋敷の周囲2軒の家が、最近持ち主が変わったらしい。南に1軒、北に1軒」


 南だけじゃなかったのか。「挟まれてるってことですね?」


「そうだ。

 さっき、和希たちは南側の家から攻撃を受けていたな?

 多分、屋根の上辺りの高さだと思うけど」


「ご明察です。

 ということは敵が危ないので、警察が来るまでしばらく籠城ということですね」


「うん。さすがに。

 敷地内全部守りきるのは難しい」



 うなずく。

 それは和希も知有と同意見だ。



「建物にさえ入れなければ、人を守ることができるだろう?

 だから、もし塀を越えて来られても、庭で誰かが騒ぎを起こしても、じっと中で我慢だ。

 この屋敷が意外と火に強いのは、わかってるだろう?

 防犯カメラもあるから、外のようすもわかる。

 だから、多少物音なんかがあっても、動いたりは……」





 ……………………ドドドドガガガガガガッッッッ




 知有の言葉を遮るように。

 凶悪な連続する爆音が屋敷の中に響き渡った。


 多少、の物音ではない。




「これは……座敷のほう?ですか?」



 慶史が言葉を漏らすなか、和希は、ばっと身を翻して駆け出す。

 思わず舌打ちしていた。

 なんてことを、奴らは考えたのだ。


 あの破壊音には聞き覚えがある。

 そして、この屋敷の大半の戸締まりをにない、屋敷をガッチリと守っているのは、アレなのだ。

 火矢にもたえてくれた。

 しかし、それでもアレは、木なのだ。

 それを。




「……あいつら、雨戸を、チェーンソーで壊しに来やがった!!!」





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